「縁側」と聞くと日本家屋の板張りを思い浮かべるかもしれませんが、魚好きにとっての縁側はまったく別の存在です。回転寿司でもおなじみのあのコリコリした白い部位――あれが「縁側魚」と呼ばれるネタの正体です。
じつは縁側が取れる魚はヒラメだけではありません。カレイ、オヒョウ、カラスガレイ、アブラガレイなど複数の魚種があり、どの魚の縁側を食べるかで味も食感も値段もまるで変わります。この記事では、縁側が取れる魚の種類から部位の場所、自宅での取り方、おいしい食べ方、回転寿司と高級寿司店の違いまで、縁側にまつわる知識をまとめてお伝えします。
・縁側とはどこの部位か?担鰭骨まわりの筋肉の仕組み
・ヒラメ・カレイ・オヒョウ・カラスガレイの縁側の違い
・自宅で縁側を取り出す五枚おろしの手順
・回転寿司の縁側に使われている魚の正体と選び方
縁側とは魚のどこにある部位なのか|ヒレの付け根に隠れた筋肉の正体

担鰭骨(たんきこつ)まわりの筋肉が「縁側」になる
縁側はヒラメやカレイなど扁平な魚の、背びれと尻びれの付け根にある筋肉です。ヒレを支える小さな骨「担鰭骨」の周りに付着しており、ヒレを上下に動かすときに使われます。普段からよく動く筋肉のため、結合組織(コラーゲン)が発達していて、あのコリコリした独特の食感が生まれます。
名前の由来は日本家屋の「縁側」です。魚の体の端にある細長い筋肉の形が、家の縁側の板張りに似ていることからこう呼ばれるようになりました。つまり縁側は特定の魚の名前ではなく、扁平な魚に共通する「部位の名前」です。
注意したいのは、縁側はすべての魚に存在するわけではないという点です。体が左右に平たいカレイ目の魚に発達した部位で、アジやサバのような体が左右に高い魚では縁側に相当する部分はごくわずかしかなく、食材として取り出すことはありません。
ヒラメ1匹から取れる縁側はわずか4切れ
ヒラメの縁側は背びれ側に2本、尻びれ側に2本の計4本しかありません。1本あたりの幅は1〜2cm程度と細く、寿司ネタにすると1匹からたった4貫分しか取れない計算です。ヒラメの体長は40〜80cmほどありますが、そこから取れる縁側の量は全体重の数%にすぎません。
だからこそヒラメの縁側は高級品とされ、寿司店では1貫500〜1,000円以上の値段がつくこともあります。白身本体の刺身よりも高値で取引されるケースも珍しくありません。
スーパーの鮮魚コーナーで「えんがわ」として安く並んでいる場合、それはヒラメではなくカレイ科の魚であることがほとんどです。この点は後ほど詳しく解説します。
縁側は背びれ側と尻びれ側で食感が違う
同じ1匹のヒラメから取った縁側でも、背びれ側と尻びれ側では食感に差があります。背びれ側の縁側はやや薄くて繊維が細かく、上品なコリコリ感が楽しめます。一方、尻びれ側は背びれ側より厚みがあり、脂の乗りも良い傾向です。
高級寿司店ではこの違いを使い分けることもあり、背びれ側は刺身や薄造り、尻びれ側は炙り寿司に向くとされています。家庭で五枚おろしにするときも、この違いを意識して部位ごとに調理法を変えると、1匹で2通りの楽しみ方ができます。
ただし、カレイやオヒョウなど大型魚の縁側ではこの差が小さくなります。魚体が大きいぶん縁側も厚く、どちらの面でも十分な脂を感じられるためです。

ヒラメの縁側が高級品とされるのは量だけが理由ではない
1匹4切れの希少性が値段を押し上げる
前述のとおり、ヒラメ1匹から取れる縁側は4切れが限度です。ヒラメ自体が養殖を含めても年間漁獲量が限られる高級魚で、そこからさらに数%しか取れない部位となれば、値段が高くなるのは当然のことです。
築地や豊洲の市場では、ヒラメの縁側だけを指名買いする寿司職人もいます。身質のよいヒラメは1匹1万円を超えることもあり、そこから取れるわずか4切れの縁側には、1切れあたり数百円のコストがかかっている計算です。
ちなみに、天然ヒラメと養殖ヒラメでは縁側の質にも差が出ます。天然ものは海底で砂に潜ったり泳いだりする運動量が多いため、縁側の筋肉がしっかり発達してコリコリ感が強くなります。養殖ものは脂が乗りやすいぶん、やわらかめの食感になる傾向です。
コリコリ感と脂の甘みが同居する唯一の部位
縁側の魅力は、コリコリした食感と脂の甘みが1つの部位で同時に味わえるところです。魚の部位で「歯ごたえがある」と「脂が乗っている」は通常両立しにくく、脂が多い部位はやわらかく、コリコリした部位は脂が少ないのが一般的です。
ところが縁側は、結合組織のコラーゲンがコリコリ感を生み出しながら、筋肉自体には適度な脂質が含まれています。噛み始めはコリッとした歯ざわりで、噛むほどに脂の甘みとうま味がじわっと広がる。この独特の味わいが、寿司通をうならせる理由です。
とくに冬場(11月〜2月)の「寒ビラメ」は本体の白身も脂が乗りますが、縁側の脂乗りもピークを迎えます。この時期に天然ヒラメの縁側が食べられる寿司店を見つけたら、ぜひ試してみてください。
白身の刺身との食べ比べで違いがはっきりわかる
ヒラメの白身と縁側を並べて食べると、同じ魚とは思えないほどの違いに気づきます。白身は透き通るような上品な甘みで、舌の上でほどけるようなやわらかさがあります。対して縁側は、最初の一噛みでコリッとした抵抗があり、そこから脂がじゅわっと広がる力強い味わいです。
醤油をつけるときも違いが出ます。白身は淡白なので少量の醤油でバランスが取れますが、縁側は脂がある分、醤油がやや弾かれます。縁側を刺身で食べるなら、ポン酢やすだちを搾るとさっぱりして脂のくどさが消えます。
やりがちな失敗として、縁側を厚く切りすぎることがあります。コリコリ感を活かすには薄造りにするのがコツで、厚さ2〜3mm程度に切ると食感と脂のバランスがちょうどよくなります。厚く切ると噛み切りにくくなり、食感が「コリコリ」ではなく「ゴリゴリ」になってしまいます。
回転寿司の縁側に使われている魚は何なのか

カラスガレイとアブラガレイが回転寿司のツートップ
回転寿司で1皿100〜200円台で提供される「えんがわ」は、ほぼカラスガレイかアブラガレイの縁側です。ヒラメの縁側ではありません。これは「偽物」というわけではなく、カレイ科の魚にも縁側は存在するため、部位名としては正しい表記です。
カラスガレイは北大西洋・北太平洋の水深200〜1,600mに生息する深海魚で、体長70cm前後まで成長します。適度な脂があり上品な味わいで、縁側の食感もしっかりしています。アブラガレイはカラスガレイよりやや脂が少なく、あっさりした味わいが特徴です。
どちらも大型の魚のため、ヒラメとは比べものにならない量の縁側が取れます。これが安価に提供できる理由です。味の好みは分かれますが、「回転寿司の縁側はまずい」というのは誤解で、鮮度管理がしっかりしていれば十分においしい食材です。
かつてはオヒョウが主流だったが資源が減少した
回転寿司の縁側として最初に広まったのは、じつはオヒョウ(大鮃)でした。オヒョウはカレイ目カレイ科の大型魚で、体長2mを超え、体重200kg以上になる個体もいます。北太平洋に生息し、その巨体から取れる縁側は厚みがあり、脂の乗りもよい食材です。
しかし乱獲により資源量が減少し、現在では安定供給が難しくなりました。そこで代わりに台頭したのがカラスガレイとアブラガレイです。とくにカラスガレイはオヒョウに近い味わいが評価され、現在の回転寿司では最も多く使われる縁側用の魚種になっています。
豆知識として、オヒョウの名前「大鮃」の「鮃」はヒラメを意味しますが、分類上はカレイ科です。見た目も味もヒラメに近い部分があるため、この名前がついたとされています。
回転寿司のメニューに「えんがわ」とだけ書かれている場合、使われている魚種はカラスガレイ・アブラガレイ・オヒョウのいずれかであることがほとんどです。「ヒラメのえんがわ」と魚種名が明記されていない限り、ヒラメではないと考えてよいでしょう。気になる場合は店舗に魚種を確認するのが確実です。
回転寿司チェーンごとの縁側の違いはあるのか
大手回転寿司チェーンでは、使用する魚種を公式サイトやアレルギー表で公開しているところもあります。多くのチェーンではカラスガレイを「えんがわ」として提供しており、一部のチェーンではアブラガレイを使用しています。
味の違いとして、カラスガレイの縁側は適度な脂と弾力があり、噛むと甘みが広がります。アブラガレイの縁側は脂が控えめであっさりしており、軽い食感です。どちらが好みかは人によりますが、しっかりした食感と脂を求めるならカラスガレイ、さっぱり食べたいならアブラガレイが向いています。
ちなみに、回転寿司の縁側は冷凍輸入品がほとんどです。北大西洋やベーリング海で漁獲された魚が船上で冷凍処理され、日本の加工工場で縁側部分だけを切り出して寿司ネタに加工されます。冷凍技術の進歩により、解凍後も食感が保たれるようになっています。
縁側魚の種類を一覧で比較|ヒラメ・カレイ・オヒョウ・カラスガレイの味と価格
| 比較項目 | ヒラメ | カラスガレイ | アブラガレイ | オヒョウ |
|---|---|---|---|---|
| 体長 | 40〜80cm | 約70cm | 60〜70cm | 1〜2m超 |
| 縁側の脂乗り | 中〜高(冬場に最高) | 中程度(上品) | 控えめ(あっさり) | 高い(厚みがある) |
| 食感 | 繊細なコリコリ感 | しっかりした弾力 | やわらかめ | 厚く噛みごたえあり |
| 主な用途 | 高級寿司・刺身 | 回転寿司の主力 | 回転寿司・加工品 | 以前は回転寿司(現在は減少) |
| 価格帯(寿司1貫) | 500〜1,000円以上 | 100〜200円台 | 100〜150円台 | 流通量が少なく不安定 |
| 主な産地・生息域 | 日本沿岸(天然・養殖) | 北大西洋・北太平洋 水深200〜1,600m | 北太平洋 | 北太平洋(ベーリング海など) |
ヒラメの縁側は冬の「寒ビラメ」が頂点
ヒラメの縁側をもっともおいしく食べられるのは、11月〜2月にかけての「寒ビラメ」の時期です。水温が下がると脂肪を蓄えるため、白身全体の脂乗りが増すと同時に、縁側にもしっかり脂が入ります。この時期の天然ヒラメの縁側は、噛んだ瞬間に甘みが広がる格別の味わいです。
反対に、夏場のヒラメは産卵後で身が痩せており、「猫またぎ」(猫ですらまたいで通る=おいしくない)と呼ばれることもあります。夏場に縁側を楽しむなら、養殖ヒラメのほうが安定した脂乗りを期待できます。
スーパーで「天然ヒラメ」の表示がある刺身用フィレを冬場に見かけたら、五枚おろしの状態で縁側がついているかチェックしてみてください。ついていれば大当たりです。
カレイ類の縁側は「安いけど別物」ではない
「回転寿司の縁側はヒラメじゃないから偽物だ」という声をときどき聞きますが、これは正確ではありません。カラスガレイもアブラガレイもカレイ目の魚であり、背びれ・尻びれの付け根に縁側を持っています。部位としては同じ「縁側」で、味の方向性も似ています。
意外と知られていませんが、カラスガレイの縁側はヒラメの縁側と比べて厚みがあり、1切れで十分な満足感があります。脂の質はヒラメのほうが上品ですが、カラスガレイの縁側も適度な脂と弾力があり、コストパフォーマンスを考えれば十分においしい食材です。
どちらが「上」かではなく、ヒラメの縁側は繊細で上品な味わい、カレイ類の縁側はボリューム感のある満足感と、それぞれの持ち味を楽しむのがおすすめです。
マツカワガレイやホシガレイの縁側は隠れた高級品
カレイ類の中でも、マツカワガレイ(タカノハガレイ)やホシガレイの縁側は別格です。どちらも体長50〜70cmに達する大型のカレイで、味わいはヒラメに匹敵すると評価されています。とくにマツカワガレイは「カレイの王様」とも呼ばれ、北海道を中心に高級魚として扱われます。
これらの魚の縁側はヒラメと同様に市場で高値がつき、回転寿司に出回ることはまずありません。産地の鮮魚店や高級寿司店でしか食べられない、知る人ぞ知る逸品です。
北海道旅行の際に地元の寿司店で「マツカワ」の名前を見つけたら、ぜひ縁側があるか聞いてみてください。運がよければ、ヒラメとも一般的なカレイとも異なる第三の縁側に出会えます。

自宅で縁側を取り出すには五枚おろしがカギになる

ヒラメ・カレイは三枚おろしではなく五枚おろしにする
一般的な魚は三枚おろし(上身・下身・中骨)にしますが、ヒラメやカレイは体が扁平なため「五枚おろし」にします。上身2枚(表側の背身・腹身)、下身2枚(裏側の背身・腹身)、中骨1枚の計5枚です。縁側は上身と下身それぞれの端、つまりヒレの付け根にくっついています。
三枚おろしにしてしまうと、縁側が中骨側に残ったり、身と一緒に切ってしまったりして、きれいに取り出せません。五枚おろしの技術を覚えれば、縁側を無駄なく取り出すことができます。
ちなみに、スーパーで売られているヒラメの切り身やフィレは、すでに五枚おろしの状態で販売されていることが多いです。その場合、フィレの端に細長い縁側がくっついているので、包丁で切り分けるだけで取り出せます。
縁側を取るときにありがちな失敗と対策
五枚おろしで縁側を取り出すときに最も多い失敗が、包丁を中骨に沿わせるときに角度が立ちすぎて、縁側の筋肉を途中で切ってしまうことです。縁側は担鰭骨に付着しているため、骨に沿って刃を滑らせる感覚で切り進める必要があります。
対策としては、包丁の角度を10〜15度くらいに寝かせて、骨の感触を刃先で感じながらゆっくり進めることです。急いで一気に切ろうとすると、縁側がボロボロになってしまいます。
もう一つの失敗は、縁側を身から切り離すときに身のほうに余計な切れ目を入れてしまうことです。縁側と本体の身の境目は見た目でわかりにくいので、指で触って筋肉の繊維の方向が変わる境界を探してから包丁を入れると、きれいに分離できます。
丸ごと1匹が手に入らないときはフィレから取り出す
スーパーではヒラメやカレイが丸ごと1匹で売られることは少なく、フィレ(おろした身)の状態で売られていることが多いです。この場合でも、フィレの端に縁側がついていれば自分で切り分けられます。
フィレを見るとき、ヒレ側の端に色がやや異なる細長い筋肉がくっついていないか確認してください。これが縁側です。包丁で筋肉の境目に沿って切り離すだけで、簡単に取り出せます。
ただし、スーパーによっては加工段階で縁側を切り落としてしまっていることもあります。縁側つきのフィレが欲しい場合は、鮮魚コーナーのスタッフに「縁側つきでお願いします」と頼むと対応してもらえることもあります。鮮魚に力を入れているスーパーほど、こうしたリクエストに応えてくれる傾向です。

縁側をもっとおいしく味わう食べ方と調理のコツ
刺身・薄造りは縁側の食感を最大限に活かす食べ方
縁側のコリコリ食感を堪能するなら、刺身か薄造りが一番です。厚さ2〜3mmに薄く切ると、コラーゲンのコリコリ感と脂の甘みのバランスがちょうどよくなります。ポン酢にもみじおろしを添えて食べると、脂をさっぱりと楽しめます。
薄造りにするコツは、包丁を手前に引くように切ることです。縁側は繊維が密なので、押し切りにすると断面がつぶれて食感が落ちます。よく研いだ柳刃包丁で、一気に引き切りするときれいな断面に仕上がります。
ヒラメの縁側であれば、白身の刺身と交互に盛り合わせにすると見た目も華やかで、食感の違いを楽しむ贅沢な一皿になります。
炙り(あぶり)は脂の甘みを引き出す
縁側の表面をバーナーや網で軽く炙ると、脂が溶け出して甘みが増し、香ばしさも加わります。炙りの加減は「表面だけうっすら色づく程度」がベストで、火を入れすぎると縁側が硬く縮んでしまいます。
寿司にする場合、炙った縁側に少量の塩とすだちを搾るだけで十分です。醤油をつけると脂の風味が隠れてしまうので、炙りの場合は塩で食べるのがおすすめです。
家庭でバーナーがない場合は、フライパンを強火で熱して縁側の片面だけを2〜3秒押し当てる方法でも代用できます。すぐに氷水で冷やせば、表面だけ火が入った炙り状態になります。
・生で食感を楽しむなら → 刺身・薄造り(厚さ2〜3mm、ポン酢かすだちで)
・脂の甘みを引き出すなら → 炙り(表面だけうっすら色づく程度、塩で食べる)
・おつまみにするなら → 天ぷら・唐揚げ(衣のサクサク感とコリコリ感が合う)
・洋風に楽しむなら → カルパッチョ(オリーブオイル・レモン・黒胡椒で)
天ぷら・唐揚げにすると衣との食感コントラストが楽しめる
縁側を天ぷらや唐揚げにすると、衣のサクサク感と中のコリコリ感が同時に楽しめます。とくに天ぷらは、薄い衣が縁側の脂を閉じ込めるため、噛んだ瞬間にジュワッと脂が広がります。
天ぷらにするときは、縁側を幅2cm程度に切り、軽く塩を振って5分ほど置いてから水気を拭き取ります。衣は薄めにつけるのがポイントで、厚い衣をつけると縁側の食感が感じにくくなります。揚げ油の温度は180度、揚げ時間は1分〜1分半が目安です。
唐揚げにする場合は、醤油・みりん・おろし生姜で下味をつけてから片栗粉をまぶして揚げます。ビールのおつまみにぴったりで、居酒屋メニューとしても人気があります。カラスガレイやアブラガレイの縁側は安価に手に入るので、揚げ物用として気軽に使えます。
カルパッチョやマリネで洋風にアレンジする
縁側は意外と洋風アレンジとの相性がよい食材です。薄造りにした縁側にオリーブオイル・レモン汁・黒胡椒をかけるだけで、簡単にカルパッチョが完成します。コリコリした食感がオリーブオイルの風味と合い、白ワインのおつまみとしても楽しめます。
マリネにする場合は、薄切りにした縁側を白ワインビネガー・オリーブオイル・玉ねぎスライスに30分ほど漬け込みます。酢の酸味が脂をさっぱりさせて、前菜として食べやすくなります。
和食のイメージが強い縁側ですが、脂質が豊富でコラーゲンの食感がある点はフランス料理で好まれる食材の特徴に近いものがあります。一度試してみると、縁側の新しい魅力に気づくはずです。
縁側の栄養はコラーゲンだけではない|脂質とうま味成分の秘密
コラーゲンが豊富なのはヒレを動かす筋肉だから
縁側にコラーゲンが多い理由は、ヒレの付け根という「常に動いている筋肉」だからです。筋肉を支える結合組織にはコラーゲンが豊富に含まれており、とくにヒレを絶えず動かして体のバランスを取るカレイ目の魚では、この結合組織が発達しています。
コラーゲンは加熱するとゼラチンに変わり、とろりとした食感になります。縁側を煮付けにしたときにプルプルした食感が出るのはこのためです。一方、生の状態ではコラーゲンの繊維構造がそのまま残っているため、コリコリした歯ごたえになります。
食品からのコラーゲン摂取がどの程度体内で利用されるかは研究途上ですが、縁側がコラーゲンを含む食材であることは間違いありません。
縁側の脂質にはDHA・EPAが含まれている
縁側はヒラメの白身本体と比べて脂質が多い部位です。魚の脂質にはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった不飽和脂肪酸が含まれており、縁側も例外ではありません。
ヒラメ全体の脂質は100gあたり2〜3g程度と白身魚の中では標準的ですが、縁側部分に限れば脂質含有量はこれより高くなります。魚種や個体差、季節によって変動しますが、本体の白身よりも脂質が集中しやすい部位です。
DHA・EPAは加熱すると一部が酸化・流出するため、これらの栄養素を効率よく摂るなら刺身や寿司など生食がもっとも適しています。天ぷらや唐揚げでは衣が脂の流出を抑えてくれるため、加熱調理の中では比較的損失が少ない方法です。

| コラーゲン | 結合組織が発達した部位のため豊富。加熱でゼラチン化する |
| 脂質 | 白身本体(100gあたり2〜3g)より高い。DHA・EPAを含む |
| うま味成分 | イノシン酸・グルタミン酸が寄与。熟成で増加する傾向 |
| 生食 vs 加熱 | DHA・EPAの摂取は生食が効率的。加熱するなら天ぷらが損失少なめ |
| カロリー目安 | 脂質が多い分、同じ魚の白身より高め(魚種・季節で変動) |
うま味成分イノシン酸が縁側のおいしさを支えている
魚のうま味の主役はイノシン酸です。縁側も例外ではなく、鮮度のよい状態ではイノシン酸が豊富に含まれています。さらに、コラーゲンが分解されて生じるアミノ酸(グリシンやプロリン)もうま味に寄与しており、縁側特有の「噛むほどにおいしい」感覚はこれらの成分が複合的に働いた結果です。
ヒラメの刺身を「熟成」させる寿司店が増えていますが、熟成によってイノシン酸が増加し、うま味が強まることが知られています。縁側も同様に、活け締め後すぐよりも1〜2日寝かせたほうがうま味が増す傾向があります。
ただし、熟成は鮮度管理を誤ると食中毒のリスクがあるため、自宅で行う場合は清潔なキッチンペーパーとラップで包み、チルド室(0〜2度)で保管する方法に留めましょう。長期間の熟成は専門知識が必要です。
縁側を買うときに知っておきたい選び方と保存のポイント
スーパーで「えんがわ」を選ぶときの3つのチェックポイント
スーパーの刺身コーナーで「えんがわ」のパックを買うとき、まず確認したいのは魚種表示です。パッケージの裏面や品質表示ラベルに「カラスガレイ」「アブラガレイ」など魚種名が記載されているはずです。「ヒラメ」と明記されていなければカレイ類だと判断できます。
次に色をチェックします。新鮮な縁側は透明感のある白〜薄いクリーム色をしています。黄色みが強かったり、表面がぬるぬるしていたりするものは鮮度が落ちている可能性があります。
最後に、ドリップ(パック内の水分)の量を見ます。ドリップが多いものは冷凍・解凍を経て時間が経っている可能性が高く、食感が落ちていることがあります。パック内の汁が少なく、身がしっかりしているものを選びましょう。
冷凍保存は2〜3週間が目安、解凍は冷蔵庫でゆっくり
縁側を冷凍保存する場合は、ラップでぴったり包んでからジッパー付き保存袋に入れ、空気をしっかり抜いて冷凍庫に入れます。保存の目安は2〜3週間程度。それ以上保存すると冷凍焼けで食感と風味が落ちます。
解凍は冷蔵庫に移して半日ほどかけてゆっくり行うのがベストです。電子レンジや常温での急速解凍は、ドリップが大量に出て縁側のコリコリ食感が損なわれます。「明日の夕食に使おう」と決めたら、前日の夜に冷凍庫から冷蔵庫に移しておくのが理想です。
やりがちな失敗として、解凍した縁側を再冷凍してしまうケースがあります。再冷凍すると細胞が壊れて食感がぐにゃぐにゃになり、おいしさが大幅に損なわれます。一度解凍したら必ずその日のうちに食べ切りましょう。
縁側を刺身や寿司で生食する場合、鮮度管理には十分注意してください。購入後はすぐに冷蔵庫のチルド室(0〜2度)に入れ、当日中に食べるのが基本です。常温で長時間放置するとヒスタミン生成のリスクが上がります。異臭やぬめりを感じたら食べるのを避け、心配な場合は医療機関を受診してください。
鮮魚店で縁側だけを注文できるか
鮮魚店によっては、ヒラメやカレイを五枚おろしにしたときの縁側だけを別売りしてくれるところがあります。とくに活け締めのヒラメを扱っている店では、五枚おろしの際に「縁側も別にしてください」と頼むと対応してもらえることがあります。
ただし、ヒラメ1匹から取れる縁側は4切れと少量のため、縁側だけの注文を受けていない店も多いです。事前に電話で確認するか、丸ごと1匹を購入して「五枚おろしにして縁側も別にしてほしい」とお願いするのが確実です。
回転寿司用のカラスガレイやアブラガレイの縁側は、業務用食材の通販サイトで冷凍パックとして購入できます。500g入りで1,000〜2,000円程度と手頃な価格で、自宅でたっぷり縁側を楽しみたいときに便利です。
まとめ|縁側魚を知れば寿司も自宅の食卓ももっと楽しくなる
縁側は、ヒラメやカレイなどカレイ目の扁平な魚の背びれ・尻びれの付け根にある筋肉で、担鰭骨(たんきこつ)の周囲に発達した結合組織がコリコリした独特の食感を生み出しています。ヒラメ1匹からわずか4切れしか取れない希少部位で、高級寿司店では1貫500〜1,000円以上で提供されることもある特別な食材です。
回転寿司で「えんがわ」として親しまれているのはカラスガレイやアブラガレイの縁側で、ヒラメのものとは魚種が異なりますが、同じ部位であることに変わりはありません。それぞれの魚種に個性があり、ヒラメは繊細な食感と上品な脂、カラスガレイは適度な脂と弾力、アブラガレイはあっさりした軽い味わいが特徴です。
この記事のポイントを整理します。
- 縁側とは背びれ・尻びれの付け根にある筋肉で、カレイ目の扁平な魚に発達した部位
- ヒラメの縁側は1匹4切れの希少品で、寒ビラメ(11月〜2月)が脂乗りのピーク
- 回転寿司の縁側はカラスガレイかアブラガレイが主流で、魚種表示を確認すれば見分けられる
- 自宅で取り出すには五枚おろしが基本。フィレについている縁側を切り分ける方法もある
- 刺身・炙り・天ぷら・カルパッチョなど、食べ方によって縁側の表情が変わる
- コラーゲンが豊富で脂質にはDHA・EPAを含み、うま味成分のイノシン酸も寄与している
- 冷凍保存は2〜3週間が目安、解凍は冷蔵庫でゆっくり行い再冷凍は避ける
まずはスーパーで「えんがわ」のパックを手に取って、裏面の魚種表示を確認するところから始めてみてください。そして機会があれば、ヒラメの縁側とカレイ類の縁側を食べ比べてみると、同じ「縁側」でも味と食感の違いに驚くはずです。五枚おろしに挑戦して、自分の手で取り出した縁側を食べる体験は、魚好きにとって格別なものになるでしょう。
※魚の鮮度や品質は購入先や保管状況によって異なります。最新の食品表示や取り扱いについては、購入先の鮮魚店やスーパーの品質表示をご確認ください。

コメント