スーパーの鮮魚コーナーで「イワシ」と書かれたパックを手に取ったとき、「これってマイワシ?それともカタクチイワシ?」と迷った経験はありませんか。じつはイワシと呼ばれる魚は主に3種類いて、見た目も味も旬もそれぞれ違います。
結論から言うと、日本で流通するイワシは「マイワシ」「ウルメイワシ」「カタクチイワシ」の3種類です。体の斑点、目の大きさ、口の形を見れば、魚に詳しくなくても見分けられます。
この記事では、3種類のイワシそれぞれの特徴・見分け方・旬・味の違いから、栄養成分やおすすめの食べ方まで丸ごと解説します。読み終わるころには、魚売り場でイワシを選ぶのが楽しくなるはずです。
・イワシ3種類(マイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシ)の特徴と違い
・スーパーや魚売り場で一目で見分ける方法
・種類ごとの旬の時期・主な産地・おすすめの食べ方
・イワシの栄養成分と効果的な摂り方
イワシは「3種類」が基本|分類と名前の由来を知ると見分けが一気にラクになる

日本で食べられるイワシは3種類、じつは「科」が違う
イワシと一口に言っても、日本で食用として流通するのはマイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシの3種類です。マイワシとウルメイワシはニシン科に属しますが、カタクチイワシはカタクチイワシ科で、分類上は別の「科」に分けられています。つまり、同じイワシと呼ばれていても、カタクチイワシだけは少し遠い親戚なのです。
3種類に共通するのは、体が細長くて鱗が剥がれやすいこと、大群で沿岸を回遊すること、青魚の代表格としてEPAやDHAが豊富なことです。ただし体の大きさは種類によって大きく異なり、最大のウルメイワシは30cm以上に育つ一方、カタクチイワシは成魚でも10cm程度にしかなりません。
見分けのポイントは「斑点」「目」「口」の3つ。この3つさえ覚えれば、丸魚の状態でも迷わず判別できます。次のH2以降で、種類ごとに詳しく解説していきます。
「鰯」の由来は”弱い魚”|名前に込められた意味
イワシの漢字「鰯」は、魚へんに弱いと書きます。名前の由来は「弱し(よわし)」が転じたという説が有力で、水揚げするとすぐに鱗が剥がれ、あっという間に傷んでしまうことから付けられました。実際、イワシは鮮度の落ちが青魚の中でも特に速く、水揚げ後の扱いが味に直結します。
この「弱さ」こそがイワシの最大の特徴とも言えます。鮮度が良いうちに食べれば脂の甘みと旨みが口いっぱいに広がりますが、時間が経つと生臭さが出やすくなります。スーパーで選ぶときは、目が澄んでいて体表に光沢があるものを選ぶのが鉄則です。
ちなみに「弱い」とは言っても、海の中のイワシは意外とたくましく生きています。数千〜数万匹の群れで行動し、外敵から身を守るために集団で素早く方向転換する「イワシトルネード」は、水族館でも人気の展示です。
近年注目の「カタボシイワシ」は4種類目になるのか?
従来イワシといえば3種類でしたが、近年は南方系の「カタボシイワシ」が日本近海で増加傾向にあります。体側に黒い斑点が1列に並ぶ点はマイワシと似ていますが、斑点の配列パターンが異なり、マイワシの斑点が不規則に散らばるのに対し、カタボシイワシは体の側線に沿って1列にきれいに並びます。
もともと九州南部より南の温暖な海域に多かった種ですが、海水温の上昇に伴い、近年は関東近海でも確認される例が増えています。スーパーに並ぶことはまだ多くありませんが、釣りで「見慣れないイワシが釣れた」という場合はカタボシイワシの可能性があります。
ただし、一般的にイワシの種類と言えばマイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシの3種類を指すのが基本です。以降、この3種類を中心に詳しく解説します。
マイワシの特徴|黒い斑点が目印の”イワシの王道”
体の側面に並ぶ黒い斑点が最大の目印
マイワシを見分けるいちばんの手がかりは、体の側面に並ぶ7個前後の黒い斑点です。この斑点の並びから「ナナツボシ」という別名でも呼ばれています。斑点は個体によって数や大きさにばらつきがありますが、ウルメイワシやカタクチイワシには見られない特徴なので、斑点があればマイワシとすぐに判断できます。
体型は3種類の中で最も丸みがあり、ふっくらとした印象です。成魚の体長は20cm前後が標準的で、大きいものでは25cm程度になることもあります。体の背側は青緑色、腹側は銀白色で、鮮度が良いものは虹色の光沢が体表に見られます。
スーパーでパック売りされている「イワシ」は、多くの場合このマイワシです。3種類の中で最も流通量が多く、塩焼き・煮付け・刺身と幅広い料理に使える万能選手です。
| 分類 | ニシン目ニシン科マイワシ属 |
| 旬 | 5月〜10月(梅雨〜秋口) |
| 大きさ | 体長20cm前後(最大約25cm) |
| 生息域 | 北海道〜九州の沿岸(太平洋側・日本海側) |
| 味の特徴 | 3種の中で最も脂が多く、濃厚な旨み |
| おすすめ調理法 | 刺身・塩焼き・煮付け・フライ・つみれ |
マイワシの旬は5月〜10月|梅雨イワシと秋の脂乗りに注目
マイワシの旬は5月から10月にかけてです。特に5月〜6月に関東沿岸で水揚げされるマイワシは「入梅イワシ(梅雨イワシ)」と呼ばれ、産卵前に栄養を蓄えて脂がのり、刺身にすると格別の味わいです。千葉県の銚子港は梅雨イワシの名産地として知られています。
8月〜9月になると、北海道の釧路で水揚げされる「釧路まいわし」が旬を迎えます。北の冷たい海で育ったマイワシは身が引き締まり、脂の質も関東産とはまた違った風味があります。つまり、初夏は関東産、晩夏〜秋は北海道産と、産地リレーで長く旬を楽しめるのがマイワシの魅力です。
注意したいのは冬場のマイワシです。産卵後で脂が抜けていることが多く、刺身には不向きな時期になります。冬場に食べるなら、つみれ汁や煮付けなど、調味料で旨みを補える料理法がおすすめです。
マイワシの味と食べ方|脂ののった刺身がいちばんの贅沢
マイワシは3種の中で最も脂質が多く、100gあたりの脂質は13.9gに達します。旬の時期に鮮度の良いものを刺身にすると、口の中でとろけるような脂の甘みが広がります。刺身にする場合は、しょうがやネギを薬味に使うと、青魚特有の風味が和らいで食べやすくなります。
加熱調理なら塩焼きが定番ですが、イタリア料理のオイルサーディンもマイワシで作ると美味しく仕上がります。骨ごと食べられるように圧力鍋で煮たり、梅干しと一緒に煮付けにする「イワシの梅煮」は、臭み消しと酸味の相乗効果で白いご飯が進む家庭料理の定番です。
やりがちな失敗として、マイワシを焼くときに皮が網にくっついてボロボロになるケースがあります。原因は網の予熱不足です。焼き網をしっかり熱してから酢を塗り、その上にイワシを並べると、皮がきれいに焼き上がります。
ウルメイワシの特徴|潤んだ大きな目と銀色ボディが美しい最大種

名前の由来は「潤んだ目」|3種のうち最も体が大きい
ウルメイワシの最大の特徴は、名前の通り「潤んで見える大きな目」です。目の表面を覆う脂瞼(しけん)という透明な膜が発達しており、これが光を反射して目がうるうると潤んで見えることから「潤目(うるめ)」の名が付きました。
体型はマイワシよりも細身で流線型、体側に斑点はなく、全体が銀色に輝く美しい魚です。3種類のイワシの中で最も大きく育ち、成魚で30cm以上になる個体も珍しくありません。マイワシの20cm前後、カタクチイワシの10cm前後と比べると、サイズ感がだいぶ異なります。
スーパーでは丸魚の状態で並ぶことは少なく、干物(目刺し・丸干し)として見かけることの方が多い種類です。西日本の産地に近いスーパーでは生の状態で売られていることもありますが、鮮度の落ちが速いため、見つけたらすぐに買って調理するのがおすすめです。
ウルメイワシの旬は10月〜2月|冬場に美味しくなる秋冬イワシ
マイワシの旬が夏なのに対し、ウルメイワシの旬は10月から2月の秋冬です。産地は西日本に集中しており、高知県や宮崎県、長崎県が主要な水揚げ地です。特に高知県の「土佐のうるめ」は、一本釣りで丁寧に水揚げされたブランド品として知られています。
旬のウルメイワシは身が引き締まり、マイワシとは対照的に脂が少なくあっさりとした味わいです。脂が少ないぶん身の旨みがダイレクトに感じられ、干すと旨みが凝縮されて味わい深くなります。「脂が少ない=美味しくない」と思われがちですが、ウルメイワシの場合は脂の少なさが持ち味なのです。
意外と知られていないのですが、ウルメイワシは新鮮なものを刺身で食べると淡白ながらも上品な味わいが楽しめます。ただし、鮮度の落ちがマイワシ以上に速いため、産地以外で刺身用に出回ることは少なく、まさに「産地の特権」と言える食べ方です。
ウルメイワシの加工品|目刺し・丸干し・めざしの正体
ウルメイワシが最も活躍する場は、干物の世界です。脂が少ないため乾燥させやすく、干すことで旨みが凝縮される特性を活かして、古くから丸干しや目刺しに加工されてきました。「めざし」という名前は、ウルメイワシなどの小型イワシの目に竹串や藁を通して干したことに由来します。
干物にした場合のウルメイワシは、噛むほどに旨みが出る深い味わいが魅力です。みりん干しにしても美味しく、調味料がしっかり染み込む脂の少なさが、ここでも長所として活きてきます。節分の「柊鰯(ひいらぎいわし)」に使われるのも、多くの場合ウルメイワシやカタクチイワシです。
高知県では、ウルメイワシの丸干しを軽く炙ってそのまま食べる習慣があり、朝食の定番として親しまれています。炙る際はフライパンよりも直火のグリルがおすすめで、表面がカリッとして香ばしさが増します。
カタクチイワシの特徴|しらすの親でアンチョビの原料、実は一番身近な魚
下あごが小さい「片口」が名前の由来|3種で最も小型
カタクチイワシの名前の由来は、上あごに比べて下あごが極端に小さく、口が「片方だけ」に見えることです。正面から見ると上あごが大きく突き出しており、この独特な顔立ちは一度覚えると忘れません。背中が黒いことから「セグロイワシ」とも呼ばれます。
体長は成魚でも10cm前後と、3種類の中で最も小型です。目の位置が頭の前方(鼻先に近い位置)にあるのも見分けポイントで、マイワシやウルメイワシと比べると目が顔の前寄りに付いています。体型は細長く、マイワシのようなふっくらとした丸みはありません。
小さいながらも漁獲量は多く、日本の漁業において重要な魚種の一つです。成魚だけでなく、稚魚が「しらす」「ちりめんじゃこ」として流通するため、実は日本人が最も頻繁に口にしているイワシはカタクチイワシかもしれません。
しらす・ちりめん・煮干し・アンチョビ|加工品の幅広さは3種類で断トツ
カタクチイワシの加工品のバリエーションは、3種類のイワシの中で群を抜いています。稚魚の状態で水揚げされたものは「しらす」と呼ばれ、釜揚げにすれば「釜揚げしらす」、干せば「しらす干し」や「ちりめんじゃこ」になります。成魚は「煮干し(いりこ)」や「田作り(ごまめ)」に加工されます。
西洋料理でおなじみの「アンチョビ」もカタクチイワシが原料です。塩漬けにして発酵させたアンチョビは、パスタやピザ、ドレッシングの隠し味として使われ、少量で料理に深いコクを与えます。英語の「anchovy」は、もともとカタクチイワシ科の魚を指す言葉です。
出汁の世界でもカタクチイワシは主役級です。煮干しは味噌汁やうどんの出汁として全国で使われており、特に瀬戸内海産の「いりこ」は讃岐うどんの出汁に欠かせない存在として知られています。稚魚から成魚まで、あらゆる成長段階で異なる加工品になる魚は、カタクチイワシ以外にはなかなかありません。
・稚魚(体長1〜2cm)→ しらす・釜揚げしらす・ちりめんじゃこ
・幼魚(体長3〜5cm)→ 小女子(こうなご)と混称されることもある
・成魚(体長10cm前後)→ 煮干し・いりこ・アンチョビ・田作り(ごまめ)
・全成長段階を通じて、日本の食卓で最も身近なイワシ
カタクチイワシの旬と食べ方|成魚よりも稚魚に高値がつく理由
カタクチイワシの旬は初夏から秋にかけてですが、通年水揚げがあるため、季節を問わず手に入りやすい魚です。生のカタクチイワシが丸魚でスーパーに並ぶことは少なく、鮮魚として出回るのは主に産地近くの市場や鮮魚店に限られます。
面白いのは、成魚よりも稚魚(しらす)の方が高値で取引されることです。しらすは鮮度が命で、水揚げ後すぐに加工しなければ品質が落ちてしまいます。特に生しらすは水揚げ当日にしか食べられないため、鮮度と希少性から高値が付きます。湘南(神奈川県)や駿河湾(静岡県)は生しらすの名産地です。
成魚のカタクチイワシを手に入れたら、唐揚げや南蛮漬けがおすすめです。小型なので丸ごと揚げれば骨まで食べられ、カルシウムの補給にもなります。手開きで簡単にさばけるのも、小さなカタクチイワシならではの利点です。
スーパーで迷わない!3種イワシの見分け方を一目でわかる比較表で解説
見分けの3大ポイントは「斑点・目・口」
3種類のイワシを見分けるには、「斑点があるか」「目の大きさと印象」「口(あご)の形」の3点を確認するだけで十分です。この3つのチェックポイントを順番に見ていけば、魚に詳しくない方でも間違えることはほぼありません。
まず斑点を確認します。体の側面に黒い点々が見えたらマイワシで確定です。斑点がなければウルメイワシかカタクチイワシのどちらかに絞られます。次に目を見ます。大きくて潤んだ印象の目ならウルメイワシです。最後に口の形を確認し、下あごが上あごに比べて明らかに小さければカタクチイワシです。
パック売りで横から見えない場合は、サイズも参考になります。20cm前後でふっくらした体型ならマイワシ、同サイズ以上で細身なら稀にウルメイワシ、10cm以下の小さな魚体ならカタクチイワシの可能性が高いです。
| 比較項目 | マイワシ | ウルメイワシ | カタクチイワシ |
|---|---|---|---|
| 体の斑点 | あり(7個前後の黒点) | なし | なし |
| 目の特徴 | 普通の大きさ | 大きく潤んで見える | 小さめ・鼻先に近い |
| 口の形 | 上下あごが同程度 | 上下あごが同程度 | 下あごが極端に小さい |
| 成魚の体長 | 約20cm | 約30cm | 約10cm |
| 体型 | 丸みがある | 細身の流線型 | 細長い |
| 脂の量 | 多い(3種で最多) | 少ない(3種で最少) | やや少なめ |
| 主な食べ方 | 刺身・塩焼き・煮付け | 干物・丸干し・目刺し | しらす・煮干し・唐揚げ |
鮮度の良いイワシを選ぶコツ|4つのチェックポイント
種類の見分けと同じくらい大切なのが、鮮度の見極めです。イワシは青魚の中でも鮮度低下が速いため、選び方を間違えると味が大きく変わります。スーパーで使える鮮度チェックのポイントは4つあります。
1つ目は「目の澄み具合」です。鮮度の良いイワシは目が透き通って黒目がはっきり見えますが、鮮度が落ちると白く濁ってきます。2つ目は「体表の光沢」で、新鮮なものは銀色に輝き、鮮度が落ちると白っぽくくすみます。3つ目は「身の張り」。指で軽く押したときに弾力があれば新鮮です。4つ目は「エラの色」で、鮮やかな赤色なら鮮度良好、茶色や黒ずんでいれば時間が経っています。
特に注意したいのが、パックの中にドリップ(赤い汁)が溜まっているイワシです。ドリップが多いものは水揚げから時間が経っている証拠なので、加熱調理用として考えた方がよいでしょう。
釣りで持ち帰ったイワシの種類を確認する方法
サビキ釣りで堤防からイワシを釣って持ち帰る方も多いでしょう。釣り上げたばかりのイワシは鱗が剥がれやすいので、種類を確認するなら水から引き上げた直後に観察するのがおすすめです。
釣り場で見分ける場合もポイントは同じで、まず斑点の有無、次に目と口の形を確認します。サビキ釣りでは複数の種類が混ざって釣れることも珍しくないため、帰宅してから「全部同じ種類だと思っていたら2種類混ざっていた」ということもあります。種類によって味が異なるので、分けて調理すると違いを楽しめます。
釣ったイワシを持ち帰る際の失敗でありがちなのが、クーラーボックスの氷が少なすぎて鮮度が落ちてしまうケースです。イワシは体温が上がると急速に傷むため、氷は多めに用意し、海水と氷を混ぜた「潮氷」で冷やすのが鮮度を保つコツです。
種類で変わるイワシの旬と産地|いちばん美味しい時期はいつ?
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| △ | △ | △ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ |
◎=最旬(もっとも美味しい時期) ○=美味しい △=出回るが旬ではない
※ウルメイワシの旬は10月〜2月、カタクチイワシは通年水揚げ(初夏〜秋が最旬)
マイワシは夏、ウルメは冬|旬がずれるから年中楽しめる
イワシの種類を知る最大のメリットの一つが、旬の違いを活かして年中美味しいイワシを食べられることです。マイワシの旬は5月〜10月の夏場、ウルメイワシの旬は10月〜2月の秋冬、カタクチイワシは通年水揚げされますが初夏〜秋が最旬です。
つまり、夏はマイワシの刺身、秋冬はウルメイワシの干物、通年でカタクチイワシの煮干しやしらす、と種類を使い分ければ「イワシの旬は年中ある」とも言えます。スーパーで「今日はどのイワシが旬かな」と考えながら選べるようになると、魚売り場での買い物がぐっと楽しくなります。
旬のずれは生態の違いに由来しています。マイワシは暖流に乗って北上しながら脂を蓄え、ウルメイワシは水温が下がる秋冬に沿岸に寄ってきます。魚の旬は「産卵前に栄養を蓄える時期」と連動していることが多く、イワシも例外ではありません。
産地で味が変わる?全国のイワシ名産地マップ
同じマイワシでも、産地によって味わいが異なります。千葉県銚子港は日本有数のイワシ水揚げ量を誇り、5月〜6月の「入梅イワシ」は脂のりが抜群です。北海道釧路は8月〜9月の「釧路まいわし」が有名で、冷たい海で育った身の締まったマイワシが味わえます。
ウルメイワシは西日本に産地が集中しています。高知県は丸干しの名産地で、宮崎県・長崎県も主要な水揚げ地です。カタクチイワシ(煮干し用)は瀬戸内海が名産地で、香川県の「伊吹いりこ」は最高級の煮干しとして知られています。しらすの産地としては、神奈川県湘南、静岡県駿河湾、兵庫県淡路島が有名です。
産地にこだわって選ぶなら、パッケージの産地表示を確認しましょう。「千葉県産マイワシ」「高知県産ウルメイワシ」など、種類と産地の組み合わせで、旬の美味しさを最大限に引き出せます。
イワシの漁獲量は年によって激しく変動する
イワシ、特にマイワシは「多獲性魚」と呼ばれ、年によって漁獲量が大きく変動することで知られています。1980年代にはマイワシが大豊漁で年間400万トン以上の漁獲がありましたが、1990年代以降は急激に減少し、一時は数万トンにまで落ち込みました。近年は回復傾向にありますが、かつての大漁期ほどの量には戻っていません。
この変動の原因は完全には解明されていませんが、海水温の変化やプランクトンの量、産卵環境の変化などが複合的に関わっていると考えられています。水産庁の資源評価でもマイワシの資源量は長期的に大きな増減を繰り返す「レジームシフト」が指摘されています。
消費者の視点では、漁獲量が多い年はイワシの価格が下がってお買い得になります。逆に不漁の年は値上がりする傾向があるため、「今年はイワシが安いな」と感じたら旬を逃さず積極的に食べるのがおすすめです。
イワシの栄養は青魚トップクラス|種類別の成分と効果的な食べ方
マイワシ100gあたりの栄養成分|EPA・DHAが豊富な理由
マイワシは100gあたりエネルギー217kcal、タンパク質19.8g、脂質13.9gと、高タンパク・良質な脂質を含む栄養価の高い魚です。特に注目したいのがオメガ3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)で、青魚の中でもトップクラスの含有量を誇ります。
EPAとDHAが豊富な理由は、イワシが海中のプランクトンを大量に食べることにあります。プランクトンに含まれるオメガ3脂肪酸がイワシの体内に蓄積され、特に脂がのる旬の時期にはEPA・DHA量が増加します。食物連鎖の下位にいるイワシは、大型魚に比べて水銀などの蓄積リスクが低い点もメリットです。
ビタミンDの含有量も見逃せません。マイワシはビタミンDが豊富で、カルシウムの吸収を助ける働きがあるため、骨の健康維持に役立ちます。カルシウムそのものも含まれており、丸ごと食べれば効率よく摂取できます。
種類によって栄養価はどう変わる?
3種類のイワシはいずれも栄養豊富ですが、脂質の量に差があるため、栄養価にも違いが出ます。脂質が最も多いマイワシはEPA・DHAの含有量も高く、カロリーも高めです。一方、脂質が少ないウルメイワシは低カロリーで、タンパク質の比率が高くなります。
カタクチイワシは小型なので1匹あたりの栄養量は少ないですが、煮干しに加工すると水分が抜けてカルシウムが凝縮されます。煮干し100gあたりのカルシウム含有量は生のマイワシの10倍以上にもなり、成長期の子どもやカルシウム不足が気になる方にはおやつ代わりに煮干しを食べるのもよい方法です。
鉄分については、イワシ全般に含まれていますが、特にマイワシの血合い部分に多く集中しています。血合いは独特の風味があるため敬遠されがちですが、生姜煮にすれば食べやすくなり、鉄分を効率的に摂取できます。
イワシのアニサキス対策|刺身で食べるなら知っておきたい予防法
イワシを刺身で食べる場合に注意したいのが、アニサキスなどの寄生虫リスクです。イワシに限らず天然の魚にはアニサキスが寄生している可能性があり、生食する際は適切な予防策をとることが大切です。
一般的な予防法としては、マイナス20℃以下で24時間以上冷凍する方法と、70℃以上(中心温度60℃以上)で加熱する方法が知られています。また、刺身にする際は身を薄く切り、目視でアニサキスの有無を確認することも有効です。アニサキスは体長2〜3cmの白い糸状の寄生虫で、明るい場所で注意深く見れば肉眼で発見できます。
心配な場合は医療機関を受診してください。特に生食後に激しい腹痛や吐き気が生じた場合は、速やかに医療機関で診察を受けることが大切です。
イワシは鮮度が落ちるとヒスタミンが生成されやすい魚です。ヒスタミンは加熱しても分解されないため、鮮度管理が何より重要です。購入後は速やかに冷蔵庫で保存し、当日中に食べ切るのが理想です。常温で長時間放置すると、ヒスタミン生成のリスクが上がるため注意してください。
地方名・別名で呼ばれるイワシたち|知っておくと旅先で役立つ
マイワシの地方名|ナナツボシ・ヒラゴ・オオバ
マイワシは全国で水揚げされるため、地域ごとにさまざまな呼び名があります。最も有名な別名は、体側の黒い斑点に由来する「ナナツボシ」です。ただし実際には斑点が7個とは限らず、5〜8個程度のばらつきがあります。名前が「七つ星」でも、律儀に7個数えなくて大丈夫です。
関西では小型のマイワシを「ヒラゴ」と呼ぶことがあり、これはマイワシの若魚を指す地方名です。大型のマイワシは「オオバ(大羽)」と呼ばれ、大羽イワシの刺身は脂がたっぷりのっていて別格の味わいです。逆に小さなものは「コバ(小羽)」「チュウバ(中羽)」と、サイズで名前が変わるのも面白い特徴です。
出世魚のように成長段階で名前が変わるわけではありませんが、サイズによって呼び名が変わるのは「大きさで味が変わる」ことを漁師や魚屋が経験的に知っていた証拠です。大羽のマイワシを見つけたら、ぜひ刺身で食べてみてください。
カタクチイワシの多すぎる別名|セグロ・シコ・エタリ
カタクチイワシは3種類の中で最も別名が多い魚です。背中が黒いことから「セグロイワシ(背黒鰯)」、酢締めにして食べる文化がある関東では「シコイワシ」と呼ばれます。「シコ」は歯ごたえ(しこしこ)に由来するという説があり、酢締めにしたカタクチイワシの食感をよく表しています。
九州では「エタリ」と呼ばれ、長崎県の郷土料理「エタリの塩辛」は、カタクチイワシを塩漬けにして発酵させた伝統食品です。これはイタリアのアンチョビと製法が似ており、日本と地中海の食文化に不思議なつながりを感じさせます。
稚魚の状態でも呼び名が変わり、透明に近い状態が「シラス(白子)」、少し成長して体に色が付き始めたものが「カエリ」と呼ばれます。煮干しにした場合は「いりこ」と呼ぶ地域(主に西日本)と「にぼし」と呼ぶ地域(主に東日本)に分かれ、同じ加工品なのに地域で呼び名が変わるのも面白いところです。
旅先で出会うイワシ料理|地域で変わる食べ方の文化
イワシは全国で獲れるぶん、地域ごとに独特の食文化が発達しています。千葉県九十九里では、マイワシを丸ごとすり身にして焼いた「いわしのごま漬け」や、マイワシの刺身を味噌とネギで叩いた「なめろう」が名物です。銚子港近くの食堂では、旬の入梅イワシの刺身定食が人気メニューになります。
高知県ではウルメイワシの丸干しを炙って食べるのが定番で、皿鉢料理(さわちりょうり)の一品としても登場します。長崎県ではカタクチイワシの塩辛「エタリの塩辛」が郷土料理として受け継がれています。静岡県では生しらす丼が観光グルメの定番で、駿河湾の恵みとして多くの観光客を惹きつけています。
節分には全国的にイワシを食べる風習があり、焼いたイワシの頭を柊の枝に刺して玄関先に飾る「柊鰯(ひいらぎいわし)」は、イワシの臭いと柊の棘で鬼を追い払うという意味があります。こうした文化的な側面からも、イワシが日本人の暮らしに深く根付いてきた魚であることがわかります。
まとめ|イワシ3種類の違いを知れば魚売り場が楽しくなる
イワシと呼ばれる魚は、マイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシの3種類が基本です。見た目も味も旬もそれぞれ異なり、違いを知っているだけで魚選びの幅がぐっと広がります。
見分け方はシンプルで、「斑点があればマイワシ」「大きな潤んだ目ならウルメイワシ」「下あごが小さければカタクチイワシ」の3ポイントを覚えておけば、スーパーや魚市場で迷うことはありません。
旬の違いを活かせば、イワシは年中楽しめる魚でもあります。ぜひ今日の買い物から、パックのイワシをちょっと観察してみてください。
- 日本で流通するイワシは主に3種類:マイワシ(ニシン科)・ウルメイワシ(ニシン科)・カタクチイワシ(カタクチイワシ科)
- 見分けの3大ポイントは「斑点の有無」「目の大きさ」「口(あご)の形」
- マイワシは脂が多く刺身向き、旬は5月〜10月。体側の黒い斑点が目印
- ウルメイワシは干物向き、旬は10月〜2月。潤んだ大きな目と銀色の体が特徴
- カタクチイワシは加工品の王様。しらす・煮干し・アンチョビの原料で、成魚でも体長約10cm
- 栄養面ではEPA・DHA・カルシウム・ビタミンDが豊富で、青魚の中でもトップクラス
- まずはスーパーで売られているイワシの斑点を確認するところから始めてみてください
※イワシの漁獲量や旬の時期は年や海域によって変動します。最新の情報は水産庁の公式サイトでご確認ください。


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