味噌汁やうどんのつゆを口にして「あれ、うちのと全然違う」と思ったこと、ありませんか。その差の正体は、たいてい出汁です。そして出汁の主役は、昆布のような海藻だけでなく、じつは何種類もの「魚」が担っています。鰹節、煮干し、あご、サバ節、宗田節──どれも魚を乾かして旨味をぎゅっと閉じ込めた、いわば旨味の保存食です。
この記事では「出汁が取れる魚は何があって、どう違うのか」を、台所目線でまるごと整理します。結論から言うと、家庭で使える魚の出汁は主に5種類。香りで選ぶか、コクで選ぶかで使い分けると、いつもの料理が一段おいしくなります。さらに、魚から旨味が出る仕組み、それぞれのだしの取り方、かつおと昆布を合わせると旨味が跳ね上がる理由、やりがちな失敗と保存のコツまで、順番に解説していきます。
「だしパックは使うけど、中身の魚のことは考えたことがなかった」という人ほど、読み終わるころには鰹節と煮干しを使い分けたくなっているはずです。難しい専門用語は最小限にして、スーパーで何を選べばいいかまで落とし込みます。
・出汁が取れる代表的な魚5種類(鰹・煮干し・あご・サバ・宗田)の個性と使い分け
・魚から旨味(イノシン酸)が出る仕組みと、乾燥・熟成で濃くなる理由
・それぞれのだしの取り方と、かつお×昆布で7〜8倍うまくなる相乗効果
・雑味・酸化・ヒスタミンを避けるための下処理と保存のコツ
出汁が取れる魚は主に5種類|まず全体像をつかむ
家庭で出会う「魚の出汁」は、ざっくり5種類に整理できます。香りの主役・鰹節、魚らしいコクの煮干し(いりこ)、澄んだ甘みのあご、あっさり甘いサバ節、濃厚な宗田節。まずはこの5つの顔ぶれと、それぞれが得意な料理を頭に入れておくと、だしパックの裏面表示を見るのが楽しくなります。
代表魚は鰹・煮干し・あご・サバ・宗田の5枚看板
出汁に使われる魚は、いずれも「乾かして旨味を凝縮した節(ふし)や煮干し」の形で売られています。鰹節はカツオ、煮干しはカタクチイワシ、あごはトビウオ、サバ節はゴマサバ、宗田節はソウダガツオが原料です。同じ魚の旨味でも、原料と作り方が違えば香りもコクもまるで別物。たとえば澄んだお吸い物にはあごや鰹、こっくりした味噌汁やうどんつゆには煮干しや宗田、という具合に向き不向きがはっきり分かれます。スーパーのだしコーナーで「混合削り」と書いてあれば、たいていこの中の2〜3種をブレンドしたものです。
魚の出汁は「香り系」と「コク系」に分かれる
5種類を覚えるのが大変なら、まずは2グループに分けると整理しやすくなります。香り系が鰹節とあご、コク系が煮干し・サバ節・宗田節です。香り系はさっと短時間で取って、立ちのぼる香りを楽しむ吸い物・茶碗蒸し向き。コク系は少し時間をかけて煮出し、魚のパンチを効かせる味噌汁・煮物・麺つゆ向きです。理由はシンプルで、香り成分は熱で飛びやすく、コク(旨味と脂のうま味)は煮出すほど出てくるから。「上品に仕上げたいか、しっかり効かせたいか」で系統を選ぶと、ほぼ失敗しません。
昆布は魚じゃない|でも魚と組ませると化ける
意外と知られていないけれど、和食の基本だしは「魚+海藻」のチームプレーです。昆布は魚ではなく海藻ですが、昆布のうま味(グルタミン酸)と魚のうま味(イノシン酸)は種類が違うため、合わせると単独より何倍も強い旨味になります。だから一番だしは「昆布+かつお」が王道なのです。魚の出汁を単体で語ると話が半分になってしまうので、この記事でも後半で合わせだしをしっかり扱います。まずは「魚だけでも出汁は取れるが、昆布と組ませると本領発揮する」と覚えておいてください。
| 魚の出汁 | 原料の魚 | 味わいの特徴 | 向く料理 |
|---|---|---|---|
| 鰹節 | カツオ | 香り高く上品・万能 | 吸い物・茶碗蒸し |
| 煮干し(いりこ) | カタクチイワシ | 魚らしいパンチとコク | 味噌汁・うどん |
| あご(焼きあご) | トビウオ | 澄んだ甘み・高級感 | 雑煮・すまし汁・鍋 |
| サバ節 | ゴマサバ | あっさり甘くコクあり | そばつゆ・煮物 |
| 宗田節 | ソウダガツオ | 濃厚で力強い・色も濃い | もりそばつゆ・合わせ用 |
※さかなのさ調べ(各原料の一般的な特徴を整理。香り・コクの感じ方には個体差・銘柄差があります)
イワシの仲間は煮干しの主役。そもそもイワシにどんな種類があるのかを知っておくと、いりこ選びがぐっと楽になります。

スーパーの鮮魚コーナーで「イワシ」と書かれたパックを手に取ったとき、「これってマイワシ?それともカタクチイワシ?」と迷った経験はありませんか。じつはイワシと呼ば…
魚から旨味が出る仕組み|イノシン酸という核酸のはたらき
そもそも、なぜ魚を乾かすと出汁が出るのでしょうか。鍵を握るのが「イノシン酸」という旨味成分です。これは魚のうま味の中心で、乾燥や熟成の過程でぐっと増えていきます。仕組みがわかると、だしの取り方のコツも腑に落ちます。
魚の旨味の正体はイノシン酸という核酸
魚の出汁のうま味を支えている主役は、イノシン酸という「核酸系」の旨味成分です。鰹節をはじめ、煮干しやあごにも含まれます。イノシン酸は、魚の身に含まれる成分が時間とともに変化して生まれるもので、鰹節では乾燥・熟成の工程でつくられます。だから生の魚をそのまま水に入れても、出汁としての旨味は弱い。乾かして熟成させた「節」や「煮干し」にすることで、旨味の濃度がぐっと上がるわけです。鰹節には旨味に関わる成分が30種以上あるとされ、その中心がイノシン酸だと考えるとわかりやすいです。さらに鰹節には必須アミノ酸9種を含む30種ものアミノ酸が含まれ、旨味だけでなく栄養面でも優れた食材です。脂質は約3%と少なく、少量で深い旨味を出せるのも、毎日の料理に取り入れやすいポイントといえます。
魚の出汁の旨味=イノシン酸(核酸系)が中心。昆布の旨味=グルタミン酸(アミノ酸系)。種類の違うこの2つを合わせると、旨味が一気に強くなります。これが和食の出汁づくりの核心です。
乾燥・熟成で旨味が凝縮される理由
節や煮干しが強い出汁を出すのは、水分を抜いて旨味を凝縮しているからです。生の魚は7〜8割が水分ですが、乾かすことで旨味成分の密度が高まります。鰹節はさらにカビ付け・熟成を重ねる「枯節」などもあり、工程が進むほど風味が深くなります。あごのように「煮ずに焼いてから干す」焼き干しも、加熱で旨味を閉じ込めつつ香ばしさを足すための工夫です。逆に言えば、乾物の出汁素材は湿気を吸うと旨味も香りも落ちるということ。だからこそ開封後の保存が味を大きく左右します。
グルタミン酸との違い|アミノ酸系と核酸系
旨味成分には大きく2系統あります。魚に多い「核酸系」のイノシン酸と、昆布や野菜・トマトに多い「アミノ酸系」のグルタミン酸です。どちらも単独で旨味を感じますが、系統が違うため、合わせるとお互いを引き立て合います。これが後で詳しく触れる「相乗効果」の正体です。あごのように、魚でありながらグルタミン酸とイノシン酸の両方を含む素材もあり、単体でもまろやかな旨味が出るのが特徴です。「魚=イノシン酸、昆布=グルタミン酸、両方そろうと強い」とだけ覚えれば十分です。
鰹節の出汁は香りの主役|上品で万能なだしの取り方
魚の出汁の代表選手といえば、やはり鰹節です。立ちのぼる香りと上品な旨味で、吸い物から煮物まで幅広く使える万能選手。ただし香りが命なので、取り方を間違えると魅力が半減します。ここでは家庭で失敗しないコツを押さえます。
鰹節だしは香り重視|さっと短時間で取る
鰹節の出汁は「香りを取る」のが基本です。沸騰した湯を火から外す直前か、火を弱めたところに削り節を入れ、1〜2分でこすのが目安。長く煮ると香りが飛び、雑味や酸味が出てきます。理由は、鰹節の魅力である香り成分が熱で飛びやすいから。スーパーでは「花かつお(薄削り)」が手に入りやすく、これは香り重視のだし向き。厚削りはコクが出るぶん少し長めに煮出します。薄削りはさっと、厚削りはじっくり、と削りの厚さで取り方を変えるのがコツです。
一番だしと二番だしの違いを使い分ける
同じ鰹節でも、一番だしと二番だしは役割が違います。一番だしは昆布と削りたての鰹節から短時間で取る、香り高く澄んだだし。お吸い物や茶碗蒸しなど、だしそのものを味わう料理に使います。二番だしは、一番だしを取ったあとの素材を再び煮出して取るもので、香りは穏やかですが旨味は十分。味噌汁や煮物のように味付けをする料理に向きます。「贅沢に香りを楽しむ一番だし」「無駄なく旨味を使う二番だし」と覚えておくと、素材を最後まで使い切れます。
| 原料 | カツオ(マガツオ) |
| 主な旨味成分 | イノシン酸(核酸系) |
| 栄養の目安 | 生カツオはタンパク質100gあたり約25.8g/鰹節は脂質約3%、必須アミノ酸9種を含む |
| 取り方 | 薄削りはさっと1〜2分/厚削りは少し長めに |
| 向く料理 | 吸い物・茶碗蒸し・煮物・万能 |
失敗しがち①|沸騰させ続けて香りも飛び雑味も出る
鰹節だしで最も多い失敗が、「グラグラ沸かし続ける」こと。香りが飛ぶうえに、長時間の加熱で渋みや酸味、生臭さといった雑味が出てしまいます。原因は「煮込めば濃くなる」という思い込み。鰹節は煮込む素材ではなく、香りを移す素材です。対策はシンプルで、削り節を入れたら火を弱めるか止め、1〜2分置いてすぐにこすこと。こすときも、ぎゅうぎゅう絞ると雑味が出るので、自然に落ちるのを待ちます。「短時間・絞らない」を守るだけで、澄んだ香り高いだしになります。
そもそもカツオってどんな魚?と気になったら、よく混同されるマグロとの違いを知っておくと、鰹節の個性も腑に落ちます。

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煮干し(いりこ)の出汁は魚らしいコク|下処理と取り方
味噌汁の「ザ・実家の味」を支えているのが煮干しの出汁です。鰹節が香りなら、煮干しはコクとパンチ。魚そのものを煮て干したぶん、しっかりした魚の旨味が出ます。少しの下処理で雑味が消え、見違えるほどおいしくなります。
いりこと煮干しは同じもの|地域で呼び名が変わる
結論から言うと、「いりこ」と「煮干し」は基本的に同じものです。西日本では「いりこ」、東日本では「煮干し」と呼ぶ地域差で、原料はどちらもカタクチイワシが代表的。カタクチイワシは日本でもっとも身近な煮干しの原料で、鰹節に比べるとガツンとした魚らしい出汁が取れます。パッケージに「いりこ」とあっても「煮干し」とあっても、中身は煮て干した小魚だと思えば迷いません。マイワシやウルメイワシの煮干しもあり、こちらはやや上品な味わいになります。
頭とワタを取る下処理で雑味が消える
煮干しをおいしく使う最大のコツが、頭とワタ(内臓)を取り除く下処理です。頭と腹の黒い部分には苦みや臭みのもとが含まれ、ここを取るだけで雑味がぐっと減ります。手で頭をポキッと折り、腹を開いて黒いワタを指でかき出すだけ。煮干しを縦半分に割っておくと、出汁が出やすくもなります。少し手間ですが、すまし汁や上品な煮物など、だしの澄み具合が大事な料理ほど効果がはっきり出ます。逆に、こってりした味噌汁なら頭付きのまま豪快に使ってもおいしく仕上がります。
水出しと煮出しを使い分ける
煮干しのだしには、火を使わない「水出し」と、煮る「煮出し」の2通りがあります。水出しは、水1Lに煮干し30gをポットに入れ、冷蔵庫で半日ほど浸けておくだけ。火を入れないので雑味が出にくく、すっきり上品なだしになります。一方の煮出しは、しっかり火を入れることで魚の旨味と風味が前に出る、パンチの強いだし。「澄んだ味に仕上げたいなら水出し」「コクを効かせたいなら煮出し」が使い分けの目安です。前の晩に水出しを仕込んでおけば、朝は注ぐだけで味噌汁が作れて手間も省けます。
煮干しはカタクチだけじゃない|マイワシ・ウルメの使い分け
煮干しの主役はカタクチイワシですが、じつはマイワシやウルメイワシで作られた煮干しもあります。カタクチイワシの煮干しは、ガツンとした魚らしさとパンチが身上で、こってりした味噌汁や煮物にぴったり。一方、マイワシやウルメイワシの煮干しは、やや上品で甘みのある澄んだだしが取れるため、すまし汁や上品な麺つゆに向きます。サイズも目安になり、小ぶりの「かえり」に近いものはクセが少なく、大ぶりのものはコクが濃い傾向です。スーパーで原料表示を見て、「片口(カタクチ)」か「真鰯(マイワシ)」かをチェックすると、狙った味に近づけます。用途に合わせて使い分けると、煮干しだしの世界がぐっと広がります。
あご・サバ・宗田|個性派の魚だしを使い分ける
鰹節と煮干しを押さえたら、次は一歩進んだ3つの個性派です。澄んだ甘みのあご、あっさり甘いサバ節、濃厚な宗田節。料理屋やそば屋がブレンドで使い分けている「だしの引き出し」を、家庭にも取り入れてみましょう。
あご(焼きあご)は澄んだ甘みの上品だし
あごとはトビウオのこと。海上を飛ぶほど身が締まり、脂肪が少ないため、澄んだ甘みのある上品なだしが取れます。中でも炭火などで焼いてから干した「焼きあご(焼き干し)」が代表格で、焼くことで旨味が凝縮し、香ばしさも加わります。あごにはグルタミン酸とイノシン酸の両方が含まれるため、単体でもまろやかでコクのある味わいになるのが魅力。長崎をはじめ九州では雑煮のだしとして親しまれ、だしの中でも高級品に位置づけられます。お正月のすまし汁や鍋つゆを格上げしたいときに使ってみてください。
サバ節はあっさり香ばしくコクもある
サバ節は、脂肪分の少ないゴマサバから作られる節です。香り自体はあっさりしていますが、甘みがありコクのある濃厚なだしが出るのが持ち味。鰹節ほど香りで主張しすぎず、それでいて旨味の土台をしっかり作ってくれます。出汁の色は鰹節や宗田節と比べると薄めで、上品な仕上がりになりやすいのも特徴です。そば屋では、かけそばのつゆにサバ節を使うところも多く、麺類のだしと相性が良い素材です。鰹節だけだと物足りないと感じたら、サバ節を少し足すとコクが増します。
宗田節は濃厚|単体より合わせて使う
宗田節は、ソウダガツオを原料にした節です。血合いが多いぶん味も香りも濃厚で、コクが強く、厚削りのだしでは色も最も濃く出ます。ただし、単体でだしを取ると血合い由来の苦みが前に出やすいのが弱点。そのため、宗田節は鰹節やサバ節と合わせて使うのが定番です。そば屋でも、こくのあるもりそばのつゆに宗田節を効かせる使い方が知られています。家庭で扱うなら、市販の「混合削り」や「だしパック」を選べば、すでに絶妙な比率でブレンドされているので失敗がありません。
・あご=澄んだ甘み。すまし汁・雑煮・鍋を上品に
・サバ節=あっさり+コク。麺つゆ・煮物の土台に
・宗田節=濃厚で力強い。単体より鰹・サバとブレンドで
状況別の使い分け|すまし汁・味噌汁・麺つゆで選ぶ
魚の出汁は、作る料理から逆算して選ぶと迷いません。だしの色と香りをそのまま味わう「すまし汁・茶碗蒸し」には、澄んで香り高いあごや鰹の一番だしが好相性。味噌や調味料でしっかり味付けする「味噌汁・煮物」には、コクのある煮干しやサバ節、二番だしが向きます。「そば・うどんの麺つゆ」には、サバ節や宗田節をブレンドして力強い旨味を効かせると、市販つゆとは違う深みが出ます。季節で考えるなら、寒い冬はあごだしの澄んだ鍋つゆ、夏は冷たい麺に濃いめのブレンドだし、という選び方も楽しいものです。料理の主役がだしなのか、調味料なのかを意識するのが、使い分けの一番のコツです。
煮干しのイワシもサバ節のサバも、栄養豊富な「青魚」の仲間。青魚にどんな種類があるかを知ると、だし素材の選び方の幅が広がります。

「青魚って、結局どの魚のこと?」と聞かれて、パッと答えられる人は意外と少ないかもしれません。スーパーの鮮魚コーナーで見かけるサバやイワシ、サンマはもちろん青魚で…
かつおと昆布の合わせだしが7〜8倍うまい理由
魚の出汁の話で外せないのが「合わせだし」です。かつおと昆布を合わせるだけで、旨味は単独の何倍にも跳ね上がります。これは気のせいではなく、うま味成分の組み合わせによる、れっきとした相乗効果です。理屈を知ると、だしづくりがもっと面白くなります。
かつお×昆布で7〜8倍|うま味の相乗効果
昆布のグルタミン酸(アミノ酸系)と、かつおのイノシン酸(核酸系)。この2つを合わせると、それぞれ単独で取っただしよりも7〜8倍もうま味が強くなることが知られています。種類の違ううま味成分が出会うことで、お互いを強め合うためです。和食の基本である一番だしが「昆布+かつお」なのは、まさにこの相乗効果を最大限に使うため。家庭で味噌汁を作るときも、昆布を一切れ足すだけで、かつおや煮干しの旨味がぐっと立ちます。「魚だけ」「昆布だけ」で物足りないと感じたら、もう一方を足すのが手っ取り早い解決策です。
グルタミン酸とイノシン酸はほぼ等量が決め手
相乗効果には「黄金比」があります。研究では、グルタミン酸とイノシン酸がほぼ等量のときに、うま味の相乗効果が最も強くなるとされています。つまり、昆布とかつおは「どちらかに偏らせる」より「バランスよく合わせる」のがコツ。うま味の専門機関でも、昆布だし2%とかつおだし3%を合わせる例が紹介されています。家庭でいちいち計算する必要はありませんが、「片方を入れすぎても旨味は比例して増えるわけではない」と知っておくと、だしパックや顆粒だしの入れすぎ防止にもなります。少量でバランスよく、が合言葉です。
一番だし(昆布+かつお)の基本手順
合わせだしの王道、一番だしの取り方も押さえておきましょう。まず水に昆布を入れて30分ほど浸し、弱火にかけて沸騰直前で昆布を取り出します(昆布は煮立てるとぬめりや雑味が出るため)。次に火を止めるか弱め、削りたての鰹節を加えて1〜2分。あとは静かにこせば、香り高く澄んだ一番だしの完成です。ポイントは、昆布もかつおも「煮立てすぎない」こと。グルタミン酸とイノシン酸という2系統の旨味を、雑味なく引き出すのが目的です。慣れないうちは、市販の合わせだしパックで感覚をつかむのもおすすめです。
魚だし×干し椎茸も相乗効果|精進だしにも通じる知恵
相乗効果は、昆布とかつおの組み合わせだけのものではありません。きのこ類に多い「グアニル酸」も核酸系のうま味で、グルタミン酸と合わせると同じように旨味が強まります。だから干し椎茸の戻し汁(グアニル酸)と昆布だし(グルタミン酸)を合わせる精進だしも、理にかなった組み合わせなのです。魚の出汁に少量の干し椎茸の戻し汁を足すと、奥行きが出て煮物が深い味になります。逆に言えば、トマトや玉ねぎ(グルタミン酸)と魚のイノシン酸を合わせる洋風の使い方も、同じ原理です。和洋を問わず「アミノ酸系+核酸系」を意識すると、だしの応用が一気に効くようになります。
魚の出汁でやりがちな失敗と保存のコツ|雑味・酸化・鮮度
せっかくの出汁素材も、扱い方を間違えると台無しです。ここでは煮干しの酸化や、見落としがちな鮮度管理の注意点を整理します。安全においしく使い切るための、地味だけど大事なポイントです。
失敗しがち②|煮干しを開封後に常温放置で酸化・生臭くなる
2つ目のよくある失敗が、煮干しを開封したまま常温で放置してしまうこと。煮干しはイワシの脂肪分を含むため、空気に触れると脂が酸化し、生臭く、えぐい味に変わってしまいます。原因は「乾物だから常温で平気」という油断。対策は、開封後はしっかり袋の口を閉じるか密閉容器に移し、冷蔵庫(できれば冷凍庫)で保存することです。一度に使い切れない量を買ったら、小分けにして冷凍しておくと安心。鰹節やあご、サバ節などの節類も同様に、湿気と酸化を嫌うので、開封後は早めに使い切るのが基本です。
魚の素材は、鮮度が落ちる過程で「ヒスタミン」という成分が増えることがあります。ヒスタミンは一度生成されると加熱しても分解されず、人によってはアレルギーに似た症状の原因になり得ます。出汁素材は適切に保存し、変色や強い異臭があるものは使わないようにしましょう。だしを取ったあとの煮出し時間や保存についても、長時間の放置は避けるのが無難です。体調に不安や気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
ヒスタミンは加熱で消えない|鮮度と保存で防ぐ
ヒスタミンは、食品に含まれるアミノ酸(ヒスチジン)が、ヒスタミン産生菌のはたらきで変化して生成されるものです。やっかいなのは、一度できてしまうと調理の加熱では分解されないこと。だからこそ「作らせない=鮮度管理」が何より大切です。出汁素材は乾物であっても、湿気を含んだり高温で長く置かれたりすると劣化します。購入後は適切に保存し、開封後は早めに使い切る。だしを取ったあとも、長時間室温に置かず、冷蔵で保存して早めに使うのが安心です。これは厚生労働省などの公的機関も注意を呼びかけている、食品衛生の基本です。
出汁がら(だしがら)を無駄なく活用する
だしを取ったあとの「出汁がら」も、まだ旨味と栄養が残っています。煮干しや鰹節の出汁がらは、細かく刻んで甘辛く炒り煮にすればふりかけや佃煮になり、ごはんのお供にぴったり。鰹節の出汁がらは、しょうゆとみりんで炒れば即席のおかかになります。捨ててしまいがちな部分ですが、魚をまるごと使い切る発想は、食材を大切にする和食らしい知恵。ただし、酸化や傷みが気になる出汁がらは無理に使わず、その日のうちに調理して食べ切るようにしましょう。冷凍した出汁がらは、味噌汁の具やハンバーグのつなぎにも使えます。鰹節の出汁がらにごまや青のりを混ぜて乾煎りすれば、無添加の自家製ふりかけになり、子どものごはんにも安心して使えます。だしを取った後の素材まで使い切ると、魚一匹分の旨味と栄養を余すところなくいただけます。
まとめ|だしが取れる魚を使い分ければ料理は一段おいしくなる
出汁が取れる魚は、主に鰹節・煮干し(いりこ)・あご・サバ節・宗田節の5種類。香りを楽しむなら鰹やあご、コクを効かせるなら煮干しやサバ・宗田、と「香り系」「コク系」で選ぶと迷いません。魚の旨味の中心はイノシン酸という核酸系の成分で、乾燥・熟成によって凝縮されます。そして昆布のグルタミン酸と合わせれば、旨味は単独の7〜8倍に。これが和食の出汁の奥深さです。
大切なのは、素材ごとの個性を知り、料理に合わせて使い分けること。そして煮干しの下処理や、酸化・鮮度といった地味なケアを怠らないことです。これだけで、いつもの味噌汁や煮物が見違えます。
・出汁が取れる代表魚は鰹・煮干し・あご・サバ・宗田の5種類
・香り系(鰹・あご)とコク系(煮干し・サバ・宗田)で選ぶと簡単
・魚の旨味の中心はイノシン酸。乾燥・熟成で凝縮される
・昆布のグルタミン酸と合わせると旨味が7〜8倍、ほぼ等量が決め手
・鰹節は短時間・絞らない、煮干しは頭とワタを取って雑味を防ぐ
・煮干しは酸化しやすいので開封後は冷蔵・冷凍で保存
・ヒスタミンは加熱で消えないため、鮮度と保存の管理が大切
まずは次に味噌汁を作るとき、市販の顆粒だしの代わりに「頭とワタを取った煮干し」を一晩水出ししてみてください。火にかけて温め、味噌を溶くだけ。魚のコクの違いに驚くはずです。慣れてきたら、そこに昆布を一切れ足して相乗効果を体感し、すまし汁にはあごや鰹を使ってみる。5種類の魚を少しずつ試していけば、あなたの台所の出汁の引き出しは確実に増えていきます。なお、食品の安全性や体調について気になる点があれば、最新情報は公的機関の公式サイトをご確認ください。
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