スーパーで茹でダコのパックを眺めていて、あの黒くて小さな目とふと目が合った——そんな経験はありませんか。あるいは水族館の大きなマダコが、ガラス越しにこちらをじっと見つめてくる。「たこって、本当にこっちを見てるの?」「あの目、どのくらい見えているんだろう?」と気になったことのある人は少なくないはずです。
結論から言うと、たこの目は人間の目とそっくりな「カメラ眼」という構造を持ちながら、人間にはない驚きの能力をいくつも備えています。盲点がない、体を回しても景色が傾かない、偏光が見える——どれも私たちの目にはできない芸当です。一方で「色は見えていないらしい」という長年の定説には、近年あらたな研究が一石を投じています。
この記事では、たこの目の基本構造から瞳孔が横長な理由、盲点がない仕組み、色覚や偏光をめぐる最新の話題、さらに台所でたこをさばくときに知っておきたい目の扱い方まで、魚好き目線でまるごと解説します。読み終えるころには、次にたこと目が合ったとき、見える景色がきっと変わっているはずです。
・たこの目が人間とそっくりな「カメラ眼」である理由
・瞳孔が横長で、体を回しても傾かない不思議な仕組み
・たこの目に盲点がない、人間との決定的な違い
・色覚・偏光をめぐる定説と最新研究、さばくときの目の扱い方
たこの目は人間そっくり?カメラ眼という驚きの構造

たこは貝やイカの仲間である軟体動物で、私たち脊椎動物とはまったく別の進化の道をたどってきました。それなのに目だけは驚くほど人間に似ています。まずは、その「似ているのに別物」というたこの目の正体から見ていきましょう。
たこの目は人間と同じ「カメラ眼」だった
たこの目は、人間や魚と同じ「カメラ眼(カメラ型の目)」です。虹彩があり、ほぼ球形の水晶体(レンズ)で光を集め、その奥の硝子体腔を通して網膜に像を結びます。カメラがレンズで光を集めてフィルムやセンサーに像を映すのと同じ理屈で、だからこそ「カメラ眼」と呼ばれます。光に敏感な網膜が受け取った情報は、神経の信号に変換されて脳へ送られます。なぜこの構造が大切かというと、レンズで光を屈折させて1点に集めることで、明暗だけでなく「形」や「輪郭」をはっきり捉えられるからです。スーパーの茹でダコでも、黒い眼球の中心にレンズにあたる透明な部分が確認できることがあります。ただし茹でると白く濁ってしまうので、レンズらしさを見たいなら生ダコの目のほうがわかりやすい、と覚えておくと観察が楽しくなります。
脊椎動物じゃないのに似ている「収斂進化」のふしぎ
たこは脊椎動物ではないのに、なぜ人間そっくりのカメラ眼を持つのでしょうか。答えは「収斂進化(しゅうれんしんか)」です。まったく別の系統の生き物が、似た環境で似た課題に直面した結果、よく似た形にたどり着く現象を指します。水中で獲物や敵をくっきり見分けるには、レンズで光を集めるカメラ眼が合理的だったため、軟体動物のたこと脊椎動物の人間が、それぞれ独立にこの設計へ「たどり着いた」わけです。生物学の教科書では、収斂進化の代表例としてこのタコの目がよく登場します。注意したいのは、似ているのはあくまで「最終的な形と機能」であって、できあがる過程や細部の配線はまるで違うという点です。次の見出しで見るように、その配線の違いが「盲点があるかないか」という大きな差を生んでいます。
レンズを動かしてピントを合わせるカメラそっくりの仕組み
たこのピント合わせは、人間とは方法が異なります。人間はレンズ(水晶体)の厚みを筋肉で変えてピントを調整しますが、たこはレンズの形を変えず、カメラや望遠鏡のようにレンズそのものを前後に動かして焦点を合わせます。たこのレンズはほぼ球形で、形を変えにくいぶん「位置を動かす」方式を選んだ、と考えるとイメージしやすいでしょう。具体例として、手元の獲物と遠くの岩陰を交互に見るとき、たこは目の中でレンズの距離を微調整していると考えられています。豆知識として、この「レンズ移動式」はカメラのオートフォーカスとまさに同じ発想で、人間の「レンズ変形式」とどちらが優れているという話ではなく、別解にたどり着いた好例です。たこという生き物の意外な精密さが垣間見えます。
たこの目は人間と同じ「カメラ眼」。ただし別系統の進化(収斂進化)でたどり着いたもので、ピントはレンズを動かして合わせます。「似ているけれど中身は別物」が、たこの目を理解する出発点です。
たこにはマダコ・ミズダコ・イイダコなどさまざまな種類があり、目の大きさや見え方も種によって少しずつ違います。種ごとの特徴は次の記事でまとめています。

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瞳孔が横長なのはなぜ?体を回しても傾かない不思議な目
たこの目をよく見ると、瞳孔(黒目の中の光を取り込む部分)が横に細長いことに気づきます。この「横長スリット」には、水中で暮らすたこならではの理由が隠れています。
明るさで形が変わる横長スリットの瞳孔
たこの瞳孔は、明るい場所では横長のスリット状に細くなり、暗い場所では丸く大きく開きます。これは取り込む光の量を調節するためで、人間の瞳孔が明るいと小さく、暗いと大きくなるのと同じ役割です。違うのは、人間が丸いまま大小を変えるのに対し、たこは「横長のスリット」と「丸」の間で形そのものを変える点です。スーパーの茹でダコでははっきり見えにくいですが、生簀の生きたマダコや水族館の個体を観察すると、横一文字のスリットになっている瞳孔を見つけられることがあります。なぜスリット型かというと、横方向に広い視野を確保しつつ、上下から差し込む強い光を絞り込むのに都合がよいからだと考えられています。日中の浅い海で活動するたこにとって、理にかなった設計といえます。
体を回転させても景色が傾かない自律反応
たこの目のもっとも不思議な能力が、瞳孔を「常に水平に保つ」働きです。たこは体をぐるりとひねったり、岩の隙間で逆さまになったりしますが、瞳孔は体の向きに関わらず常に水平を維持するよう、自律神経による反応で自動的に調整されます。理由は、見えている景色が体の傾きに左右されず安定するからです。私たちがスマホで写真を撮るとき、手ブレ補正や水平補正が効くと景色が安定して見やすくなりますが、たこは生まれつきこの「水平補正機能」を目に備えていると考えるとわかりやすいでしょう。具体例として、獲物に飛びかかる瞬間に体勢が大きく崩れても、たこには周囲がぐらつかず見えていると考えられます。捕食や逃避のときに、これは大きな武器になります。観察するときは、たこが体を傾けても黒い瞳孔の細い線がずっと水平のままか、注目してみてください。
横長の視界が捕食と逃避に効く理由
横長の瞳孔と水平を保つ仕組みは、たこの暮らし方に直結しています。海底や岩場で暮らすたこにとって、敵や獲物の多くは「横方向」から近づいてきます。横に広い視野を安定して確保できれば、周囲の動きをいち早く察知でき、素早く隠れたり飛びかかったりできます。根拠として、たこの網膜には視細胞が密集しており、特に動きや形を捉える能力に優れていることが知られています。見分けのポイントとして、釣り上げたばかりの活きのいいたこの目は、瞳孔のスリットがくっきりしていて反応もよく、弱ってくると瞳孔の動きが鈍くなります。鮮度の目安のひとつとして、目の透明感と瞳孔のはっきりさを覚えておくと役立ちます。注意点として、これはあくまで観察上の目安で、安全に食べられるかどうかは別問題ですから、購入や調理の際は表示や保存状態も合わせて確認してください。
盲点がないって本当?人間の目との決定的な違い

たこの目と人間の目の最大の違いは、実は「盲点があるかないか」にあります。人間には誰にでも盲点がありますが、たこにはありません。その理由は、網膜の「配線」の向きにあります。
人間に盲点があるのは網膜が「裏返し」だから
人間の目には、誰にでも見えない点「盲点」があります。原因は網膜の配線です。人間の網膜では、光を受け取る視細胞の「前」に神経線維が走っていて、その神経線維が1か所に束ねられて網膜を貫き、視神経として脳へ抜けていきます。この貫いた一点には視細胞がないため、光を感じられず盲点になります。つまり人間の網膜は、光を受ける面の手前に配線が通る「裏返し」の構造なのです。片目を閉じて指を視野の端でゆっくり動かすと、ふっと指が消える位置があり、それが盲点です。普段気づかないのは、脳が左右の目の情報や周囲の景色から欠けた部分を補っているからです。この「補正があるから気づかない」という点が、次に見るたことの違いを際立たせます。
たこは網膜の「裏側」に配線が通るから盲点ゼロ
たこの目には、この盲点がありません。理由は配線の向きが人間と逆だからです。たこをはじめとする頭足類では、神経線維が網膜の「後ろ側」を通ります。そのため視神経が光受容体の層を貫いて表に出る必要がなく、視細胞が途切れる一点が生まれません。結果として、たこの視野には欠けがなく、景色を途切れなく受け取れます。具体的にいえば、人間が「脳の補正でごまかしている」部分を、たこはそもそも作らずに済んでいるわけです。豆知識として、この配線の向きは「たこの目のほうが設計として合理的だ」と語られることもあります。進化は必ずしも最適解を選ぶわけではなく、人間の網膜が裏返しなのは進化の経緯による「いきさつ」の結果だと考えられています。同じカメラ眼でも、細部の出来栄えにはこんな差があるのです。
まぶたがない・直接海水にさらされるという違い
もうひとつの大きな違いが、まぶたと涙です。人間の目は涙でうるおい、まぶたで守られていますが、たこにはまぶたがなく、目を閉じることができません。目は基本的に開けっぱなしで、角膜は海水と目の中をつなぐ特殊な構造になっており、直接海水にさらされています。理由はシンプルで、常に水中にいるたこには、乾燥を防ぐための涙やまぶたが必要なかったからです。とはいえ完全に無防備というわけではなく、目の周りの皮膚を絞ることで眼を覆い、ある程度「閉じる」ような動きはできます。観察のポイントとして、たこをよく見ると目の上の皮膚がしわのように動くことがあり、これがその仕組みです。私たちが「目を閉じて休む」のとは違う方法で、たこは強い光や刺激から目を守っている、と知っておくと面白いでしょう。
| 比較項目 | 人間の目 | たこの目 |
|---|---|---|
| 基本構造 | カメラ眼 | カメラ眼(収斂進化) |
| 盲点 | ある | ない |
| ピント調節 | レンズの厚みを変える | レンズを前後に動かす |
| 瞳孔の形 | 丸(大小が変化) | 横長スリット〜丸 |
| まぶた | ある | ない |
| 色覚(従来説) | 3色型(豊か) | 基本は色盲とされる |
※さかなのさ調べ(各情報源をもとに作成)
たこは色が見えていない?目をめぐる色覚の謎
たこといえば、まわりの色に合わせて体色を瞬時に変える擬態の名人です。ところが、その色を見るための「色覚」については、長らく「ほとんど見えていない」とされてきました。最近の研究も交えて、この謎を見ていきましょう。
たこの目の視物質はロドプシンだけ
従来の定説では、たこは色をほとんど見分けられないとされてきました。理由は、たこの眼にある視物質(光を感じる色素タンパク質)がロドプシン1種類だけだからです。人間は赤・緑・青に反応する3種類の視物質を持ち、その反応の差から色を読み取りますが、視物質が1種類しかないと、基本的には明暗の濃淡しか区別できません。これがたこ「色盲説」の根拠です。具体例として、白黒テレビが明るさの段階だけで映像を映すのと似たイメージで、色という情報の軸が1本足りない状態と考えられてきました。注意点として、これは「目が悪い」という意味ではなく、形や動きを捉える力はむしろ優れているという点です。たこは色という手がかりを使わずに、明暗・形・動きで世界を読み取っていると長く考えられてきました。
体の色は変えられるのに色が見えない不思議
ここで大きな矛盾が浮かびます。たこやイカは、まわりの岩や砂の色に溶け込むように体色を一瞬で変える変身能力を持っています。それなのに、肝心の「色そのもの」が見えていないとしたら、どうやって背景の色に合わせているのでしょうか。これは長年、研究者を悩ませてきた謎です。考えられている説のひとつは、たこは色ではなく明るさのコントラスト(明暗の差)を手がかりに、背景に紛れるよう体色を調整しているというものです。具体的には、周囲より明るいか暗いかを読み取り、それに合わせて体の濃淡を変えている可能性があります。豆知識として、たこの擬態は色だけでなく、皮膚の突起で凹凸まで作り出して質感をまねるほど精巧です。「色が見えていないのに色をまねる」という不思議は、たこという生き物の奥深さを象徴するテーマといえます。
皮膚で光を感じる?色覚をめぐる最新研究
近年、この「色盲説」に新たな視点が加わっています。たこは皮膚にも視物質オプシンを持つことがわかっており、皮膚の色素胞をカラーフィルターのように使って色の判別に役立てている可能性が指摘されています。さらに、単一の光受容体オプシンと、瞳孔の形による光の回折で生じる「色収差(色によってピントの合う位置がずれる現象)」を組み合わせることで、人間には気づけない微細な色の違いを検出している可能性を示す研究が、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表されました。これは従来の「色盲」という分類に挑戦する内容です。ただし注意したいのは、これらはまだ研究段階の仮説を含む話で、「たこは人間のように色が見える」と断定できるわけではない点です。最新の研究では、たこの視覚は私たちが思っていたよりずっと複雑かもしれない——そう考えられ始めている、というのが今の状況です。
たこが色を見分けている可能性を示す研究は注目されていますが、まだ仮説を含む段階です。「色盲」とも「色が見える」とも言い切れないのが正直なところ。最新の知見は、研究機関や学術論文などの一次情報でご確認ください。
偏光が見えるってどういうこと?透明な獲物も見破る特殊能力
たこの目には、人間にはまったくない能力があります。それが「偏光」を見分ける力です。色は見えにくいとされる一方で、この偏光視覚はたこの狩りを支える隠れた武器になっています。
そもそも偏光って何?人間には見えない光の性質
偏光とは、光の波が振動する「向き」がそろった光のことです。私たちが普段見ている光はさまざまな向きに振動していますが、水面で反射したり、水中を進んだりすると、特定の向きにそろった偏光が生まれます。人間の目はこの振動の向きを区別できないため、偏光は見えません。具体例として、釣りやドライブで使う偏光サングラスは、水面のギラつき(偏光成分)をカットして水中を見やすくする道具です。つまり人間は道具の力を借りて初めて偏光を扱えるわけです。ところがたこは、生まれつきこの偏光の向きを目で見分けられます。注意点として、偏光が見える=色が見えるではありません。色とは別の「光の情報の軸」を、たこは天然のセンサーで読み取っている、とイメージしてください。
たこの網膜が偏光を見分けられる仕組み
たこが偏光を見分けられるのは、網膜の構造に秘密があります。たこの網膜では、隣り合う光受容体が互いに直交する(90度ずれた)向きにそろって並んでいます。光の振動の向きによって、この直交する受容体への反応の強さが変わるため、たこは偏光の方向を区別できるのです。たとえるなら、縦向きと横向きのブラインドを2枚重ねて、どちらをよく通すかで光の向きを読み取るようなイメージです。根拠として、この直交配置は頭足類の網膜に共通して見られる特徴で、イカなども同様の偏光感覚を持つことが知られています。豆知識として、色覚を1種類の視物質で犠牲にしたぶん、たこは偏光という別の情報チャンネルを発達させた、とも考えられます。限られた仕組みの中で、見るべき情報を効率よく選び取っている点に、たこの目の巧みさが表れています。
透明な獲物やコントラストを見破る狩りの武器
偏光が見えると、狩りでどんな得があるのでしょうか。最大のメリットは、透明で見えにくいものを浮かび上がらせられることです。クラゲや小さなエビの幼生など、海中には体が透き通った獲物が多くいます。人間の目には背景に溶け込んで見えませんが、透明な体を通った光は偏光の状態が変化するため、偏光が見えるたこには輪郭がくっきり浮かび上がると考えられています。具体例として、これは偏光サングラスをかけると水中の魚影が見えやすくなるのと同じ理屈です。たこは常時その「サングラス」をかけているようなものです。注意点として、すべての獲物に有効なわけではありませんが、コントラストを高めて対象を識別する力は、色覚に頼らないたこにとって貴重な手がかりになっています。色が見えないという弱点を、偏光という独自の強みで補っている——そう考えると、たこの目の設計がぐっと立体的に見えてきます。
意外と知られていませんが、たこは私たちが当たり前に見ている「色」をほとんど使わず、人間には見えない「偏光」を頼りに獲物を見つけている可能性があります。色か偏光か——同じ海を見ていても、たこと人間ではまるで違う景色が広がっているのかもしれません。
視力はどのくらい?まぶたがない目のメリットと注意点
「たこは目がいい」とよく言われますが、具体的にどのくらい見えているのでしょうか。視力の実力と、まぶたがない目ならではの長所・短所を整理します。
形や動きを捉える力にすぐれている
たこの視覚は、特に「形」と「動き」を捉える点で発達しています。網膜に視細胞が密集しているため、物体の輪郭や、近づいてくるものの動きを鮮明にとらえられます。理由は、海底や岩場で敵と獲物を素早く見分ける必要があるからです。具体例として、水族館のたこは飼育員の姿や手の動きを見分け、人によって反応を変えることが知られています。これは形と動きをしっかり認識している証拠といえます。見分けのポイントとして、たこに近づくとこちらをじっと「見て」体色や姿勢を変えることがあり、これは視覚で状況を判断している様子です。注意点として、色覚に頼らないぶん明暗・形・偏光を総合して世界を読み取っているため、人間の「視力○○」という物差しでそのまま比べるのは難しい、と理解しておくとよいでしょう。
まぶたがないからこそ得られるメリット
まぶたがないのは弱点のようでいて、実はメリットもあります。常に目が開いているため、たこは四六時中、視野を確保し続けられます。まばたきで視界が一瞬途切れることがなく、岩陰からじっと外をうかがうような暮らしに向いています。理由は、水中では乾燥の心配がなく、まぶたで目を守る必要が薄いからです。具体例として、たこは狭い隙間に隠れて獲物が通るのを待ち伏せしますが、まばたきしない目は、その「見張り役」にうってつけです。豆知識として、まぶたがない代わりに目の周りの皮膚を絞って強い光から目を守る動きができるため、完全に無防備というわけではありません。常時オンの監視カメラのような目——そう考えると、まぶたがないことの合理性が見えてきます。
【失敗パターン①】さばくときに目をいきなり切って中身が飛ぶ
生きたたこや活けのたこを家庭でさばくとき、頭部(正確には胴体)を裏返して内臓と一緒に目を処理しますが、ここでよくある失敗が「目をいきなり強く切ってしまい、眼球の中身が飛び散る」ことです。原因は、たこの目が薄い皮膚の下にあり、力任せに刃を入れると潰れてしまうからです。対策は、目のまわりをぐるりと浅く切り込み、目を周囲から外すように取り除くこと。包丁の先を立てすぎず、皮一枚を丁寧にたどる感覚が大切です。具体的には、目と目の間に軽く切れ目を入れてから、それぞれの目を分けて外すと扱いやすくなります。注意点として、目や内臓を傷つけると独特のにおいや汚れが身に移りやすいので、流水を用意して手早く処理しましょう。失敗してもすぐに洗い流せば大きな問題にはなりませんが、最初の一刀を「浅く・ぐるりと」を意識するだけで仕上がりが変わります。
知って得する目の雑学|四角く見える理由から食べ方まで
最後に、台所や食卓で役立つたこの目の雑学を集めました。「四角い目」と言われる理由から、目玉は食べられるのかという素朴な疑問まで、知っておくと魚売り場が少し楽しくなる話です。
「たこの目は四角い」と言われるのはなぜ?
「たこの目は四角い」と表現されることがあります。これは瞳孔が横長のスリット状になることや、目のまわりの形が角ばって見えることに由来する言い回しです。実際には眼球そのものが正方形なわけではなく、横長の瞳孔と目を囲む皮膚の形が合わさって、人によっては四角く見える、というのが実態です。具体例として、生きたマダコを正面から見ると、横一文字の瞳孔の上下に皮膚のラインが入り、長方形のように見えることがあります。豆知識として、明るさによって瞳孔が丸くなると印象も変わるため、「丸い目に見えるとき」と「四角く見えるとき」があるわけです。見分けのポイントとして、観察するなら明るい場所のほうがスリットがはっきりし、四角い印象が強まります。言葉のあやのようでいて、ちゃんと構造に裏付けのある表現なのです。
たこの目玉は食べられる?処理のポイント
たこの目玉は、基本的には調理の前に取り除く部位です。コリコリした目の周辺を珍味として食べる文化もありますが、家庭では下処理で目・口(くちばし)・内臓を外してから茹でるのが一般的です。理由は、目をそのまま茹でると口当たりが悪くなったり、加熱で潰れて見た目や食感を損ねたりしやすいからです。具体的な手順としては、胴を裏返して内臓を取り、目をぐるりと外し、足の中心にある硬い口(カラストンビ)を押し出して取り除きます。注意点として、目や口を残したまま丸ごと茹でてしまうと、後から取り除きにくく食感も悪くなります。下処理の段階で外しておくのが失敗しないコツです。なお、珍味として食べる場合も、鮮度と衛生状態をよく確認し、心配な場合は無理をしないようにしましょう。体調に不安があるときは医療機関を受診してください。
足の中心にある硬い口「カラストンビ」については、その正体と食べ方を別記事で詳しく紹介しています。

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【失敗パターン②】目を取らずに茹でて食感を損ねる
もうひとつのよくある失敗が、「目を取り除かずに丸ごと茹でてしまう」ことです。生のうちは目が処理しやすいのに、茹でたあとだと目が固まって取りにくく、無理に外すと身まで崩れてしまいます。原因は、下処理の順番を飛ばして「とりあえず茹でる」を先にしてしまうこと。対策はシンプルで、茹でる前に必ず目・口・内臓を外しておくことです。具体例として、目を残したまま茹でると、噛んだときに固い粒が残って口当たりを損ね、せっかくのたこの食感が台無しになります。豆知識として、生のたこは塩でよく揉んでぬめりを取り、目と口を外してから茹でると、仕上がりがぐっときれいになります。注意点として、目の処理は鮮度のよいうちに手早く行うのが鉄則です。「下処理を先、加熱を後」——この順番を守るだけで、家庭でも茹でダコの仕上がりが安定します。
水族館・釣り場・スーパーで目を観察するコツ
たこの目は、観察する場所によって見え方が違います。水族館では生きた個体の瞳孔が明るさで変化する様子や、体を傾けても瞳孔が水平を保つ動きを観察できます。釣り場では、活きのいいたこの目は透明感があり瞳孔の反応もよく、弱るにつれて瞳孔の動きが鈍くなるため、状態を見る手がかりになります。スーパーの茹でダコでは、加熱で目が白く濁っていることが多く、生の透明感は失われています。理由は、加熱によってタンパク質が変性するからです。具体的な楽しみ方として、水族館では「瞳孔が横長か丸か」、釣り場では「目に張りがあるか」、売り場では「目の処理がきれいにされているか」と、場所ごとに見るポイントを変えると発見が増えます。注意点として、観察上の鮮度の目安と、安全に食べられるかどうかは別問題ですから、購入時は表示や保存状態も合わせて確認してください。
ちなみに、たこは状態によって数え方(助数詞)が「匹」「杯」などに変わるのをご存じですか。目と同じく、知ると魚売り場が楽しくなる雑学です。

スーパーの鮮魚コーナーでゆでだこを手に取ったとき、ふと「たこって1匹? それとも1杯?」と迷ったことはありませんか。魚は「1尾」、貝は「1個」とイメージしやすい…
まとめ:たこの目は「似ているのに別物」の宝庫
たこの目は、人間と同じカメラ眼という構造を持ちながら、進化の道筋も中身もまるで違う「似て非なる目」です。盲点がなく、体を回しても景色が傾かず、人間には見えない偏光まで見分ける——一方で色はほとんど見えていないとされてきたものの、近年はその定説に最新研究が挑んでいます。台所では、目は下処理で取り除くのが基本で、生のうちに手早く外すのが失敗しないコツです。次にたこと目が合ったとき、その小さな目に詰まった驚きの仕組みを思い出してもらえたらうれしいです。
この記事の要点を振り返っておきましょう。
- たこの目は人間と同じ「カメラ眼」。ただし収斂進化でたどり着いた別物で、ピントはレンズを前後に動かして合わせる
- 瞳孔は明るさで横長スリット〜丸に変化し、体を回しても常に水平を保つため景色が傾かない
- 網膜の配線が人間と逆向きで、たこの目には盲点がない
- まぶたがなく目は開けっぱなし。目の周りの皮膚を絞って光を防ぐ
- 視物質はロドプシンのみで基本は色盲とされるが、皮膚オプシンや色収差で色を見分ける可能性を示す研究もある
- 偏光を見分けられ、透明な獲物のコントラストを高めて狩りに活かす
- 調理では目・口・内臓を生のうちに外すのが基本。残したまま茹でると食感を損ねる
まずは次にスーパーや水族館でたこを見かけたら、その目をじっくり観察してみてください。瞳孔は横長か丸か、目に張りはあるか——小さな黒い目を見るだけで、たこという生き物の奥深さがぐっと身近に感じられるはずです。心配な体調の症状があるときは、自己判断せず医療機関を受診してください。最新の研究内容は公的機関や学術論文などの一次情報でご確認ください。

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