イカの足の数は10本に見えて実は8本|2本の触腕とタコとの違いを丸ごと解説

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スーパーの鮮魚コーナーでイカを手に取って、ふと足を数えてみたことはありませんか。「イカの足は10本」と覚えている人が多いのですが、実は「正解は8本」という説明も世の中には出回っています。どちらが本当なのか、モヤモヤしたまま放置している人は少なくありません。

結論から言うと、見た目は確かに10本、でも生物学的にきちんと「腕」と呼べるのは8本で、残りの2本は「触腕(しょくわん)」という別物です。つまり「10本派」も「8本派」も、どちらも間違ってはいないのです。この2本の正体さえわかれば、長年のモヤモヤは一気に晴れます。

この記事では、イカの足が10本に見えて実は8本と言われる理由、残り2本の触腕の役割、タコの8本との決定的な違い、ゲソ(下足)という呼び名の由来、さらにはスルメイカやダイオウイカといった種類ごとの違いまで、全国いか加工業協同組合や水産関連の公的な情報をもとに丸ごと解説します。読み終えるころには、イカ売り場で誰かに語りたくなっているはずです。

📌 この記事でわかること

・イカの足が「10本」とも「8本」とも言われる本当の理由
・残り2本「触腕」の役割と、8本の腕との見分け方
・タコの足8本との吸盤・使い方・呼び名の違い
・スルメイカ・コウイカ・ダイオウイカなど種類ごとの足の特徴

目次

イカの足の数は10本に見えて実は8本|まずは結論から

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「イカの足は何本?」という問いに一言で答えるなら、「見た目は10本、でも腕は8本」が一番正確です。長く伸びた2本を「足(腕)」に数えるか数えないかで、答えが10本にも8本にも変わるだけで、矛盾しているわけではありません。まずはこの全体像を押さえておきましょう。

見た目は10本、でも腕と呼べるのは8本

イカの口の周りからは、確かに10本の細長い器官が放射状に伸びています。これを素直に数えれば10本です。ところが生物の体のつくりとして見ると、このうち8本が「腕」、残り2本は「触腕」というまったく別の役割を持つ器官に分かれます。全国いか加工業協同組合の解説でも、8本の腕は背側から腹側へ向かって左右の第一腕〜第四腕の4対で構成され、触腕は第三腕と第四腕の間から1対だけ伸びていると整理されています。つまり「8+2=10」という構造です。学校のテストで「10本」と習った人も、図鑑で「8本」と読んだ人も、どちらも同じものを違う数え方で見ていたにすぎません。スーパーのイカでこの2本を探すのが、雑学の第一歩になります。

📌 押さえておきたいポイント

イカの足は「8本の腕」+「2本の触腕」=合わせて10本。長い2本を腕に数えれば10本、別物として除けば8本。どちらの答えも構造的には正しいのです。

「8本」と「10本」どちらも正解になる理由

なぜ答えが割れるのかというと、「足」という言葉の定義があいまいだからです。日常会話で「足」と言えば、口の周りから出ている細長いものすべてを指します。この感覚で数えれば10本です。一方、生物学では吸盤の付き方や役割で器官を分類するため、捕食専用に特化した2本を「触腕」として腕とは区別します。この立場では腕は8本です。どちらが偉いという話ではなく、料理や日常では10本、生態や分類の話では8本、と場面によって使い分ければ混乱しません。クイズ番組などで「イカの足は8本」が正解として出るのは、この生物学的な数え方を採用しているからです。豆知識として、両方の理屈を知っておくと「どっちも正解だよ」と説明できて一目置かれます。

この記事で使う「足・腕・触腕」の呼び方を整理

混乱を避けるため、この記事での言葉の使い方を先に決めておきます。短くて吸盤がびっしり並ぶ8本を「腕」、長く伸びて先端だけに吸盤がある2本を「触腕」、その10本をまとめて指すときは日常語の「足」と呼びます。料理の世界でゲソと呼ぶ部分は、この10本すべてを含みます。注意点として、専門書によっては腕を「kai(かい)」と読ませたり、触腕を「触手」と表現したりと用語にゆれがあります。本記事は読みやすさを優先して「腕」「触腕」で統一しますが、別の本で違う呼び方に出会っても同じものを指していると考えて差し支えありません。言葉の定義をそろえておくと、この先の説明がぐっと頭に入りやすくなります。

なぜ答えが「8本」と「10本」で割れるのか

イカの足の数で意見が分かれるのは、知識不足のせいではなく、見る角度の違いです。ここでは「腕」と「触腕」がどう違うのか、その境界線を生態の面から掘り下げます。実はこの違いを知ると、タコとの区別も一気にクリアになります。

腕と触腕は「吸盤の付き方」で見分けられる

8本の腕と2本の触腕を見分ける一番わかりやすいポイントは、吸盤の付き方です。8本の腕は、根元から先端まで内側にびっしりと吸盤が並んでいます。一方、触腕は柄にあたる細長い部分には吸盤がなく、先端の広がった部分にだけバンド状に吸盤が密集しています。スーパーでイカ一杯を買ったら、足の中で2本だけ長く、根元がツルッとして先だけ吸盤がついているものを探してみてください。それが触腕です。理由は後述しますが、触腕は獲物に向かってサッと伸ばす道具なので、伸びる柄の部分に吸盤があると邪魔になるのです。見分けの注意点として、流通の過程で触腕が切れて失われていることもあり、その場合は8本しか残っていないこともあります。

「実はイカもタコも腕は8本」という逆張りの真実

意外と知られていないのですが、生物学的に「腕」だけを数えると、実はイカもタコも同じ8本です。タコは8本の腕だけで触腕を持たず、イカは8本の腕に加えて捕食用の触腕を2本持っている、という関係になっています。「イカは10本、タコは8本」という有名な対比は、触腕を腕に含めるかどうかの差で生まれているだけなのです。この視点に立つと、イカとタコは「腕8本」という共通の設計を持つ近い仲間(ともに頭足類)で、イカだけが狩りに特化した触腕という追加装備を発達させた、と理解できます。ふだん何気なく「8本と10本で違う生き物」と思っていたものが、実は「8本という同じ土台+αの違い」だったわけです。この捉え方は、次のタコとの比較を読むときの軸になります。

📌 押さえておきたいポイント

「腕」だけで数えるとイカもタコも8本。イカはそこに捕食専用の触腕2本が加わって10本になる。両者は「腕8本」という同じ土台を持つ近い仲間(頭足類)です。

子どものうちは10本でも大人で8本になるイカもいる

足の数は一生変わらないと思いがちですが、種類によっては成長とともに本数が変わります。全国いか加工業協同組合の解説によると、タコイカやヤツデイカの仲間は、小さな子どもの間は触腕を持っていて10本ですが、成長するにつれて触腕が自然に脱落し、最終的に8本になります。つまり「大人になるとタコのような8本足のイカ」が実在するのです。理由は、これらのイカが成長の過程で触腕に頼らない生活へと変化していくためと考えられています。注意点として、これは限られた種類の話で、スルメイカやアオリイカなど私たちが普段食べるイカは大人になっても触腕を保ったままです。「足の数は種類と成長段階で変わりうる」と知っておくと、図鑑の数字が場所によって違っても戸惑わずにすみます。

残り2本の正体「触腕」とは何者か

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イカの足の数の鍵を握るのが、この触腕です。ふだんは目立たないのに、いざというときに体長より長く伸びる、イカの狩りの主役。ここでは触腕の役割と構造を、台所で確かめられるレベルまで掘り下げます。

触腕は獲物を捕らえる「伸びる槍」

触腕の最大の役割は、獲物を捕らえることです。イカは小魚やエビが射程に入ると、ふだんは縮めて隠している2本の触腕を一瞬で伸ばし、先端の吸盤で獲物をガッチリつかんで引き寄せます。その後、8本の腕で抱え込み、口元へ運んで食べます。触腕は8本の腕よりはるかに長く、種類によっては自分の体長を超えて伸びることもあります。まさに「伸びる槍」や「投げ縄」のような器官です。台所でイカをさばくとき、2本だけ明らかに長い足があれば、それが普段は縮こまっていた触腕です。豆知識として、釣りで使うエギ(餌木)やイカ用ルアーは、この触腕でガバッと抱きつく習性を利用しています。イカがルアーに「抱きつく」と表現されるのは、触腕と腕で獲物を抱え込む捕食行動そのものなのです。

Q. 触腕は食べられるの?捨てるべき?
A. 触腕も8本の腕と同じくゲソとして食べられます。やや細長く食感が違うだけで、捨てる必要はありません。炒め物や天ぷら、塩辛などに普通に使えます。先端の吸盤の硬い部分が気になる場合だけ取り除けば十分です。

切れても困らない?touch触腕が失われやすい理由

触腕は、実はかなり失われやすい器官でもあります。獲物や外敵に強く引っ張られると、トカゲのしっぽのように途中で切れてしまうことがあるのです。それでもイカが生きていけるのは、触腕が「なくても致命的ではない捕食補助の道具」だからです。8本の腕は移動や姿勢の維持にも関わりますが、触腕は基本的に狩りの専用装備なので、多少欠けても生命維持には直結しません。そのため、市場に並ぶイカの中には触腕が片方だけ、あるいは両方とも失われているものが珍しくありません。注意点として、触腕がないイカを見て「これは8本足の別の生き物だ」と早合点しないこと。腕の本数(8本)と吸盤の付き方を確認すれば、触腕が抜けただけの普通のイカだと判断できます。欠けやすい器官だからこそ、図鑑通りにきれいな10本がそろっている個体は意外と少ないのです。

イカの足以外の部位にも、知っておくと料理が楽しくなる名前がついています。胴の左右にある三角のヒレは「エンペラ」と呼ばれ、コリコリした食感が人気の部位です。

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コウイカには触腕を隠す「ポケット」がある

触腕の収納方法は、イカの種類によって違います。とくにコウイカの仲間は、体に触腕を収納するための専用のポケットを持っていて、ふだんは触腕をすっぽりしまっています。そのため一見すると8本足のように見え、獲物を狙う瞬間にだけポケットから触腕を勢いよく射出します。これは獲物に気づかれずに一気に間合いを詰めるための、待ち伏せ型の狩りに適した進化です。スルメイカのように泳ぎ回りながら触腕を使うタイプと、コウイカのように隠して不意打ちするタイプがいる、と知っておくと観察が面白くなります。注意点として、コウイカを買って「足が8本しかない」と感じても、それは触腕がポケットに収まっているだけのことが多いです。よく探すと、ほかの腕より一回り長い2本が見つかるはずです。

イカとタコの足は何が違う?吸盤・本数・使い方を比較

イカの足の数を語るとき、必ず引き合いに出されるのがタコです。「イカ10本・タコ8本」という対比は有名ですが、両者の違いは本数だけではありません。ここでは吸盤の形から使い方まで、台所で見分けられるポイントを表にまとめます。

吸盤の形で一発判別|ワイングラス型か切り株型か

イカとタコを最も確実に見分けられるのが、吸盤の形です。イカの吸盤は、細い柄の先にお椀がついた「ワイングラス型」で、お椀の内側にはキチン質でできた硬いリングがはまり、そのリングにギザギザの歯が並んでいます。一方タコの吸盤は、柄のない「切り株型」で、柔らかい肉質。ビニールの吸盤と同じ原理で吸い付きます。実際にゲソを指でなぞってみると、イカの吸盤は少しザラッとした硬い感触があり、これがキチン質のリングです。豆知識として、このリングは加熱しても残るため、食べたときに口に当たることがあります。気になる場合は下処理で取り除けます。見分けの注意点として、調理済みで吸盤がつぶれていると判別しづらいので、生の状態で確認するのが確実です。

比較項目 イカ タコ
足の本数 腕8本+触腕2本=10本 腕8本(触腕なし)
吸盤の形 ワイングラス型+硬いリング 切り株型・柔らかい肉質
足の主な使い方 主に捕食用(移動は噴射) 捕食・移動・物の固定すべて
墨の性質 粘り気あり・塊になる 粘り気なし・広がる
産卵後のメス 世話せず死ぬ 卵を守り世話する

※さかなのさ調べ(全国いか加工業協同組合・豊海おさかなミュージアムの解説をもとに作成)

タコは足で歩く、イカは噴射で泳ぐ

足の使い方も、イカとタコでは大きく違います。タコは8本の腕を移動・物をつかむ・獲物を捕らえるなど、あらゆる動作に使います。海底を腕で歩いたり、岩の隙間に体を押し込んだりするのも腕の仕事です。一方イカは、胴の下にある「漏斗(ろうと)」という管から海水を勢いよく噴射して進みます。ロケットのように水を後ろへ吐き出して反作用で泳ぐので、移動に足はほとんど使いません。イカの足は主に獲物を捕らえるための器官なのです。この生き方の違いが、後述する呼び名の違いにもつながっています。豆知識として、イカが素早く後ろ向きにスッと逃げるのは、この噴射推進のおかげ。前進も後進も自在で、瞬発力はタコより上です。

失敗例|ゲソの吸盤リングを取らずに刺身が口に残る

イカを刺身やゲソ刺しにするときによくある失敗が、吸盤の硬いリングをそのままにしてしまうことです。前述のとおりイカの吸盤にはキチン質の歯のついたリングがあり、これを取らずに刺身にすると、噛んだときに口の中でジャリッ、ゴリッと当たって食感を損ねます。原因は、吸盤が小さくて見落としやすいことと、生のうちは目立たないことです。対策は、ゲソを使う前に包丁の刃で足の内側を軽くしごくか、塩でもみ洗いして吸盤の硬い部分を落とすこと。さっと湯通ししてから指でこそげる方法もあります。注意点として、リング取りは食感を整えるための下処理であり、衛生面とは別の話です。ひと手間かけるだけでゲソ料理の口当たりが格段に良くなるので、刺身に使うときはぜひやってみてください。

「ゲソ=下足」は足じゃない?呼び名と数え方の雑学

イカの足を料理の世界では「ゲソ」と呼びます。漢字で書くと「下足」。なぜ足を「下足」と書くのか、その由来をたどると江戸時代の市場の習慣が見えてきます。ここでは呼び名にまつわる雑学を深掘りします。

ゲソ(下足)の語源は江戸の市場にあり

「ゲソ」の語源として有力なのが、江戸時代の市場の習慣に由来する説です。当時、イカは胴体と足を分けて売られることがあり、その下の方の部分(足)を「下足(げそ)」と呼んだのが始まりとされます。もともと「下足」は、玄関や寄席などで脱いだ履物を指す言葉でした。たくさんの履物をまとめて扱う様子と、たくさんの足が束になったイカのゲソが重なり、転用されたと考えられています。別の説として、イカの足が下駄の鼻緒に似ているからという見方もあります。豆知識として、寿司や居酒屋で「ゲソ」と言えばイカの足を指すのが定着していますが、これはあくまで業界・料理用語。生物の解説では「腕」「触腕」と呼ぶので、場面で使い分けると通っぽく聞こえます。

タコの足は「ゲソ」と呼ばないのはなぜ

Q. なぜタコの足は「ゲソ」と呼ばないの?
A. ゲソ(下足)はイカの胴と足を分けて売買・加工する文化の中で生まれた呼び名だからです。タコは足を分けて扱う習慣が薄く、専用語が定着しませんでした。同じ8本足でも、食文化での扱われ方の違いが呼び名に表れています。

面白いことに、同じ8本足でもタコの足は「ゲソ」とは呼びません。これは、ゲソという言葉がイカの流通・調理の現場で生まれた呼び名だからです。イカは胴(身)とゲソを分けて売買・加工する文化が根づいており、足の部分を指す専用の呼び名が必要でした。一方タコは、足を1本ずつ、あるいは丸ごと扱うことが多く、イカのように「身とゲソ」を分ける習慣が薄かったため、専用語が定着しなかったと考えられます。結果として、タコの足は素直に「タコの足」と呼ばれます。豆知識として、こうした呼び名の違いは、その食材が日本でどう扱われてきたかの歴史を映す鏡でもあります。同じ頭足類でも、食文化の中での立ち位置が呼び名に表れているわけです。

ちなみに、タコやイカは「1匹」ではなく「1杯(ぱい)」と数えるのが基本です。状態によって助数詞が変わるのも日本語の面白いところで、数え方には独自のルールがあります。

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イカは「1杯」と数える|足の数とは別の数え方ルール

イカそのものを数えるときは、「1匹」ではなく「1杯(ぱい)」と数えるのが正式です。これは胴体が筒状で、中が空洞の器(杯)に見立てられたことに由来すると言われます。生きて泳いでいる状態では「匹」を使うこともありますが、商品として売られているイカや料理になったイカは「杯」で数えるのが一般的です。足が10本でも8本でも、1個体は「1杯」です。注意点として、数え方は地域や場面でゆれがあり、絶対的なルールがあるわけではありません。とはいえ魚屋やスーパーで「イカを2杯ください」と言えると、ぐっと魚通の雰囲気が出ます。足の本数と数え方は別々の知識ですが、セットで覚えておくとイカ売り場での会話が広がります。

10本の中に隠れた特別な腕「交接腕」の不思議

イカの10本の足の中には、実は繁殖のためだけに特殊化した1本が隠れています。それが「交接腕(こうせつわん)」です。足の数を数えるだけでは気づけない、イカの体の奥深さを覗いてみましょう。

交接腕とはオスが繁殖に使う特別な腕

交接腕とは、オスのイカが繁殖のときにメスへ精子を渡すために特殊化した腕のことです。イカのオスは、精子が詰まった「精莢(せいきょう)」というカプセルを体内に持っていて、繁殖の際にこの繊細なカプセルを腕でつまんでメスの体に付着させます。この受け渡し作業を担うために、10本のうち1本(種類によって決まっている)の腕が、ほかの腕と少し違う形に変化しているのです。東京大学大気海洋研究所などの研究でも、イカの繁殖は交接腕を介した精莢の受け渡しによって行われると説明されています。つまりイカの足は、ただ獲物を捕るだけの器官ではなく、命をつなぐ役割まで担っているわけです。同じ10本の中に、こんな専門職の腕が隠れていると知ると、イカを見る目が変わってきます。

スルメイカでは「右第四腕」が交接腕になる

どの腕が交接腕になるかは種類によって決まっています。私たちになじみ深いスルメイカの場合、一番腹側にある右の第四腕が交接腕です。この腕は先端の吸盤がなくなり、肉の畝(うね)のような独特の構造に変化しています。精莢という壊れやすいカプセルを傷つけずにつかみ、正確にメスへ渡すための、専用のピンセットのような形と言えます。スーパーでスルメイカのオスが手に入ったら、足の中で先端の様子がほかと違う1本を探してみると、運が良ければ観察できます。豆知識として、こうした交接腕の有無や形は、専門家がオスとメスを見分ける手がかりにもなります。10本の足にそれぞれ役割があり、しかも左右で形が違う腕まであるというのは、イカの体の精巧さを物語っています。

足の本数を超えたイカの繁殖戦略

📌 押さえておきたいポイント

イカの10本の足は、8本で抱え、2本で捕らえ、さらにオスはそのうち1本(交接腕)で繁殖まで担います。同じ足でも役割は分業されていて、左右で形の違う腕まで存在します。

交接腕の話から見えてくるのは、イカが足を「道具」として徹底的に使いこなしている生き物だということです。8本で抱え、2本で捕らえ、そのうちの1本は繁殖まで担う。限られた本数の足に、これだけ多彩な役割を割り振っているのです。さらにイカの多くは寿命が約1年と短く、一度の繁殖に全力を注いで子孫を残し、メスは産卵後に世話をすることなく命を終えます。短い一生の中で確実に次世代へバトンを渡すために、交接腕という専用装置まで発達させたと考えられます。注意点として、繁殖の細かい仕組みは種類ごとに違いがあり、研究が進んでいる最中の分野でもあります。足の数という素朴な疑問の先に、こんな奥深い生態が広がっているのは、イカという生き物の面白さそのものです。

種類で変わるイカの足|スルメイカからダイオウイカまで

ひとくちにイカと言っても種類はさまざまで、足の長さや触腕の使い方も少しずつ違います。ここでは身近なスルメイカやコウイカから、深海の巨大なダイオウイカまで、足に注目して見ていきましょう。

スルメイカ・アオリイカ|泳ぎ回って触腕で狩る

日本で最もよく食べられるスルメイカや、高級イカとして人気のアオリイカは、海中を活発に泳ぎ回りながら触腕で獲物を捕らえるタイプです。基本通り8本の腕+2本の触腕の計10本を持ち、触腕をサッと伸ばして小魚やエビを捕まえます。スルメイカは胴(外套)が20〜30cmほど、アオリイカは胴が40cmを超える大型個体もいて、足もそれに応じて立派です。釣りでエギにアオリイカが抱きつくのは、まさにこの触腕と腕で獲物を抱え込む習性を利用したものです。豆知識として、新鮮なスルメイカやアオリイカのゲソは吸盤がしっかり吸い付くほど元気で、鮮度の目安にもなります。足が透き通って張りがあるものほど鮮度が良い、と覚えておくと買い物で役立ちます。

🐟 イカの足くらべ(さかなのさ調べ)
スルメイカ腕8+触腕2の計10本。泳ぎ回って触腕で狩る回遊型
アオリイカ計10本。胴40cm超の大型も。エギに抱きつく習性
コウイカ計10本だが触腕を収納ポケットに隠す待ち伏せ型
ダイオウイカ計10本。触腕を含む全長は10m超、記録は約13m

コウイカ・モンゴウイカ|触腕を隠して待ち伏せ

コウイカやモンゴウイカの仲間は、前述のとおり触腕を収納するポケットを持ち、ふだんは8本足のように見えるタイプです。海底近くでじっと身を潜め、獲物が近づいた瞬間にポケットから触腕を一気に伸ばして捕らえます。スルメイカのような回遊型とは対照的な、待ち伏せ型の狩りです。コウイカは体内に「甲」と呼ばれる硬い殻を持つのが名前の由来で、ずんぐりした体形をしています。買い物のときは、丸みのある胴に短めの足がついていればコウイカ系、細長い胴ならスルメイカ系、と当たりをつけられます。豆知識として、コウイカは身が厚く甘みが強いため刺身で人気が高く、足(ゲソ)も食べごたえがあります。同じ「10本足」でも、足の使い方は種類の暮らしぶりをそのまま映しているのです。

同じ「コウイカの仲間」でも、モンゴウイカとコウイカは背中の模様やサイズで見分けられます。見た目がよく似ているので、買うときの参考にしてみてください。

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ダイオウイカ|触腕の長さが桁違いの深海の巨人

足の長さという点で群を抜くのが、深海にすむダイオウイカです。国立科学博物館の解説によると、2本の触腕を含めた全長は10mを超え、信頼できる記録では最大約13mに達します。ところが触腕を除いた体長は7m程度、胴(外套長)だけならわずか2m強しかありません。つまり、あの巨大さの大部分が長く伸びた触腕によるものなのです。深海でまばらにしか出会えない獲物を、長い触腕でいち早く捕らえるための進化と考えられています。注意点として、ダイオウイカは深海性で、私たちが食べる回遊性・沿岸性のイカとは生活圏もサイズもまったく異なります。同じ「腕8本+触腕2本」という基本設計でありながら、触腕をここまで伸ばした極端な例がいる――足の数という共通点を入り口に、イカの多様さの広がりが見えてきます。

まとめ|イカの足は「8本+2本=10本」が正解

イカの足の数をめぐる「10本か8本か」という疑問は、どちらも正しいというのが結論です。見た目は10本、でもきちんと腕と呼べるのは8本で、残りの2本は獲物を捕らえる「触腕」という別の器官。だから「8本+2本=10本」と覚えておけば、どんな場面でも矛盾なく説明できます。触腕の役割やタコとの違い、ゲソという呼び名の由来、さらには交接腕や種類ごとの個性まで知ると、たった10本の足にイカの暮らしが詰まっているのがわかります。

この記事の要点を振り返っておきましょう。

  • イカの足は8本の腕+2本の触腕で計10本。腕だけ数えれば8本で、どちらの答えも正しい
  • 触腕は伸びる槍のような捕食専用の器官で、先端だけに吸盤があり、切れても致命的ではない
  • タコは腕8本で触腕なし。吸盤はイカがワイングラス型、タコが切り株型で見分けられる
  • 料理で言う「ゲソ(下足)」は江戸の市場由来の呼び名で、10本すべてを指す
  • 10本の中にはオスが繁殖に使う「交接腕」という特別な腕が隠れている
  • スルメイカは回遊型、コウイカは待ち伏せ型、ダイオウイカは触腕が桁違いと、種類で足の使い方が違う

まずは次にスーパーでイカを買ったら、足の中から「2本だけ長くて先にだけ吸盤がある触腕」を探してみてください。それが見つかれば、もうあなたは「イカの足は8本+2本で10本」と胸を張って説明できます。さばくときは吸盤の硬いリングを軽く落としてあげると、ゲソ料理の口当たりもぐっと良くなります。足の数という素朴な入り口から、イカという生き物の面白さをぜひ味わってみてください。

※本記事は全国いか加工業協同組合、豊海おさかなミュージアム、国立科学博物館、東京大学大気海洋研究所などの公開情報を参考に作成しています。最新の研究内容は各機関の公式サイトでご確認ください。

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この記事を書いた人

魚の種類・生態・食べ方を日々研究している魚好き。スーパーで見かける身近な魚から、釣り人にしか馴染みのない魚まで幅広くカバー。「この魚ってどう食べるの?」という疑問に答える、魚の図鑑のようなメディアを目指しています。

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