スーパーのイカコーナーで「エンペラ」「みみ」と書かれた三角形の部分を見て、これは食べられるのか、どこの部位なのかと迷ったことはありませんか。刺身パックの隅に入っているコリコリした切れ端の正体が気になっている人も多いはずです。
結論から言うと、エンペラとはイカの胴体の左右についているヒレのことで、形が人の耳に似ているため「耳(みみ)」とも呼ばれます。泳ぐときに方向を変える舵の役割を持ち、身(胴体)よりも肉厚でコリコリとした食感が楽しめる、知る人ぞ知る部位です。
この記事では、エンペラがイカのどこにあって何のためにあるのか、胴体やゲソとどう食感が違うのか、タウリンを中心とした栄養、皮むきから切り分けまでの下処理、刺身・焼き・炒めの使い分け、そして鮮度やアニサキスの注意点まで、台所ですぐ役立つ形でまとめました。
・エンペラがイカのどこにある何の部位なのか
・胴体・ゲソとの食感と味の違い
・タウリンや低カロリーといった栄養の実力
・皮むき・切り分け・おいしい食べ方と鮮度の注意点
エンペラとはイカのヒレ|「耳」と呼ばれる三角部分の正体

エンペラは、イカの胴体(外套膜)の先端、とがった側の左右についている三角形のヒレ状の部分です。アオリイカのように胴体のほぼ全周を囲む大きなエンペラを持つ種類もあれば、スルメイカのように先端だけに小さくついている種類もあります。まずはこの部位がイカの体のどこにあるのかを整理しておきましょう。
| 分類 | ツツイカ目アカイカ科スルメイカ属 |
| 旬 | 6月〜9月(夏が中心、種類により異なる) |
| 大きさ | 胴長20〜30cm前後 |
| エンペラの位置 | 胴体先端の左右(三角形のヒレ) |
| 食感 | 肉厚でコリコリ、加熱で縮みにくい |
| おすすめ調理法 | 刺身・焼き・炒め・煮物 |
エンペラは胴体の先端についた三角形のヒレ
エンペラの正体は、イカの胴体の先端についた三角形のヒレです。イカの体は大きく分けて、筒状の胴体(外套膜)、頭、10本の足(ゲソ)、そして内臓に分けられますが、エンペラはその胴体の一部が左右に張り出してヒレ状になったものです。
魚のヒレが背骨から伸びる骨と膜でできているのに対し、イカのエンペラには骨がありません。胴体と同じ筋肉でできているため、身と地続きの「肉のヒレ」だとイメージすると分かりやすいでしょう。だからこそ、ヒレでありながらしっかり食べごたえのある部位になっています。
スーパーでは、アオリイカやヤリイカの場合は胴体に三角形の大きなヒレがついた状態で売られていることが多く、これがエンペラです。切り離して「みみ」「えんぺら」として単品で並ぶこともあるので、三角形でコリコリした部分を探せばすぐ見分けられます。
イカの種類でエンペラの大きさは大きく変わる
同じエンペラでも、イカの種類によって大きさと形は大きく変わります。アオリイカは胴体のほぼ全長にわたって幅広いエンペラが広がり、丸みを帯びた菱形に見えます。一方スルメイカは胴体の先端3分の1ほどに、矢じりのような三角形のエンペラがつく程度です。
これは、それぞれのイカの泳ぎ方の違いを反映しています。岩礁帯でホバリングするように細かく泳ぐアオリイカは大きなヒレで繊細に体勢を制御し、外洋を高速で群れて泳ぐスルメイカはジェット噴射が主役でヒレは補助という役割分担になっています。
食べる側にとっては、エンペラが大きい種類ほど一杯から取れる量が多く、食べごたえも増します。アオリイカやコウイカのエンペラは肉厚で食べ応えがあり、「身より耳が好き」というファンがつくほどです。
「えんぺら」という名前は当て字から広まった
「えんぺら」という言葉自体は、もともと笠の縁の部分を指す古い言葉が由来とされ、イカのヒレの形がそれに似ていたことから当てられたと言われています。漢字では「鰭」と書くこともありますが、これは魚のヒレと共通の字で、読み方として「えんぺら」を当てた形です。
地方によって呼び名は実にさまざまで、「みみ」「かく」「とんび(地域による)」など、同じ部位がまったく違う名前で売られていることもあります。スーパーや鮮魚店で「みみ」と書かれていたら、それはこのエンペラのことだと覚えておくと買い物で迷いません。
呼び名は地域差が大きいので、見慣れない名前のパックを見つけたら、形をよく見て三角形のヒレならエンペラと判断するのが確実です。名前にとらわれず、部位の形で見分けるのがコツです。
なぜエンペラは「耳」と呼ばれる?役割と名前の由来
エンペラが「耳」と呼ばれるのには、見た目だけでなく機能の面でも理由があります。ここではエンペラがイカの暮らしの中で果たす役割と、人が耳に見立ててきた背景を見ていきましょう。イカの体の仕組みを知ると、コリコリした食感の理由まで腑に落ちてきます。
エンペラは泳ぐときの舵とブレーキの役割を持つ
エンペラの最大の役割は、泳ぐときの方向転換と姿勢制御です。イカは胴体に吸い込んだ海水を漏斗(ろうと)から噴き出すジェット噴射で進みますが、これだけでは細かい舵取りができません。そこで左右のエンペラを波打たせることで、方向を変えたり、その場で静止(ホバリング)したりしています。
とくにゆっくり泳ぐときや獲物にそっと近づくときは、ジェット噴射よりエンペラの波打ちが主役になります。前進だけでなく後退もできるのがイカの特徴で、この器用な動きを支えているのがエンペラの筋肉です。常に動かしている部位だからこそ、筋肉が発達してコリコリした食感になります。
イカそのものの体の仕組みや寿命の短さを知ると、エンペラがなぜこれほど発達した筋肉なのかがいっそう面白く見えてきます。

形が人の耳に似ているから「みみ」と呼ばれる
「耳」「みみ」という呼び名の直接の由来は、その形が人の耳たぶに似ているからです。胴体の左右に三角形やひだ状に張り出した姿が、ちょうど顔の左右につく耳を連想させるため、昔から漁師や料理人の間で「みみ」と呼ばれてきました。
もちろん、イカに聴覚器官としての耳があるわけではありません。イカは平衡胞(へいこうほう)という器官で体の傾きを感じ取っていますが、これは頭の内部にあり、エンペラとは別物です。あくまで見た目から付いた愛称が「耳」だと理解しておきましょう。
このように、エンペラには「えんぺら」「みみ」「耳」と複数の呼び名がありますが、すべて同じ三角形のヒレを指しています。料理本やレシピサイトで表記が違っても、戸惑う必要はありません。
骨がないのにしっかり動かせる筋肉の仕組み
エンペラが骨なしでしなやかに動く秘密は、筋肉の繊維が縦・横・斜めに緻密に組み合わさった構造にあります。骨格を持たないイカは、この筋肉の張力そのものを骨代わりにして体を支え、ヒレを自在に波打たせています。
この筋繊維がぎっしり詰まっているため、エンペラは加熱しても水分が抜けにくく、縮みにくいという調理上のメリットが生まれます。胴体の身がくるっと丸まりやすいのに対し、エンペラは形が保たれやすいのもこの構造ゆえです。
つまり「コリコリ」という食感は、泳ぐために発達した筋肉の密度がそのまま口の中で感じられている、ということになります。部位の役割と食感がきれいにつながっているのがイカの面白いところです。
エンペラは胴体やゲソとどう違う?食感と味を部位で比較

イカは胴体・エンペラ・ゲソ(足)・ワタ(内臓)と、部位ごとに食感も味も大きく違う食材です。同じ一杯でも部位を分けて使うと料理の幅がぐっと広がります。ここでは主要部位を食感・味・向く料理の3点で比べてみましょう。
| 部位 | 食感 | 味の特徴 | 向く料理 |
|---|---|---|---|
| 胴体(身) | やわらかく上品 | 甘みと淡白さ | 刺身・天ぷら |
| エンペラ(耳) | 肉厚でコリコリ | 濃い旨味 | 刺身・炒め・焼き |
| ゲソ(足) | 弾力と歯切れ | 香ばしい旨味 | 焼き・唐揚げ |
| ワタ(内臓) | とろり濃厚 | 強い旨味と塩気 | 塩辛・ホイル焼き |
※部位の特徴を整理した目安です(さかなのさ調べ)
胴体はやわらかく、エンペラは肉厚でコリコリ
胴体の身とエンペラを食べ比べると、食感の違いがはっきり分かります。胴体は繊維が比較的ゆるく、刺身にすると舌の上でほどけるような柔らかさと甘みがあります。一方エンペラは筋肉の密度が高く、噛むとコリッ、コリッと弾力が返ってくる肉厚な歯ごたえです。
この差は、前のセクションで触れた筋肉の使い方の違いから生まれます。常に波打たせて泳ぐエンペラは鍛えられた筋肉で、ほとんど動かさない胴体の身は柔らかい、というわけです。鶏でいえば、よく動く「もも」と動かない「むね」の差に近い構図です。
料理に使うときは、柔らかさを楽しみたいなら胴体、噛みごたえと旨味を楽しみたいならエンペラ、と使い分けると満足度が上がります。一杯のイカを部位ごとに分けるだけで、食卓に違う表情が並びます。
実はエンペラの方が「身より美味しい」と言う人もいる
意外と知られていないのですが、イカ好きの間では「身(胴体)よりエンペラの方が美味しい」と評価する声が少なくありません。とくにアオリイカやコウイカのように肉厚なエンペラを持つ種類では、コリコリの食感と凝縮した旨味が際立ち、ファンの多い部位になっています。
その理由は、よく動かす筋肉ほど旨味成分が乗りやすく、噛むほどに味が出てくるからだと考えられます。柔らかさを良しとする胴体とは別の方向で、「噛んで味わう」楽しさがエンペラにはあります。回らない寿司店で耳だけを使った握りを出す店があるのも、この価値を知っているからです。
スーパーで「みみ」だけが安く売られていたら、それはむしろ狙い目です。安価で手に入るのに食べごたえ十分という、コストパフォーマンスの高い部位だと覚えておくと得をします。
ゲソやワタなど他の部位もまるごと味わう
イカはエンペラだけでなく、ゲソ(足)やワタ(内臓)、さらには口にあたるカラストンビまで、捨てるところが少ない食材です。ゲソは焼くと香ばしく、唐揚げにすれば弾力が楽しめます。ワタは塩辛やホイル焼きで濃厚な旨味を活かせます。
一杯のイカを丸ごと買ってきて、胴体は刺身、エンペラは炒め物、ゲソは焼き、ワタは塩辛、と部位ごとに使い切れば、一杯で何品もの料理が作れます。これは魚にはないイカならではの楽しみ方です。
普段は捨ててしまいがちなイカの口「カラストンビ」も、実は珍味として味わえる部位です。気になる人は次の記事もあわせてどうぞ。

エンペラの栄養はタウリン350mg|低カロリー高タンパクの実力
エンペラはおいしいだけでなく、栄養面でも見どころのある部位です。イカ全体に共通する「低カロリー・高タンパク・タウリン豊富」という特徴は、ダイエット中や健康を気にする人にとってうれしいポイントです。具体的な数値で見ていきましょう。
・エネルギー:約76kcal
・タンパク質:約17.9g
・タウリン:約350mg
低脂質で高タンパク、タウリンも豊富なヘルシー食材です。
100gあたり約76kcalの低カロリー食材
スルメイカの可食部は100gあたり約76kcalと、肉類と比べてもかなり低カロリーです。脂質が少なく、エネルギーの多くをタンパク質が占めているため、量を食べても太りにくいのが特徴です。エンペラも胴体と同じ筋肉でできているので、栄養傾向はほぼ共通しています。
同じタンパク源でも、脂の多い肉や青魚に比べてカロリーを抑えられるのがイカの強みです。ゆでる・焼くといった油を使わない調理にすれば、さらにカロリーを低く保てます。逆に天ぷらや唐揚げにすると衣と油でカロリーが上がるので、ヘルシーに食べたい日は調理法で調整しましょう。
数値は文部科学省の食品成分データベースでも公開されており、誰でも確認できます。正確なカロリー計算をしたい人は一次情報をあたるのが確実です。
タウリンは水に溶けやすいので汁ごと食べる
イカに豊富なタウリンは、可食部100gあたり約350mg含まれるとされる成分で、アミノ酸に似た物質です。ただしタウリンは水に溶けやすい性質があるため、ゆで汁に流れ出てしまいます。栄養を余さず摂りたいなら、スープや煮物にして汁ごといただくのが効率的です。
エンペラを炒め物や汁物に入れれば、コリコリ食感を楽しみながら溶け出した旨味成分も逃さず味わえます。刺身で生のまま食べるのも、タウリンを流出させない食べ方のひとつです。調理法を選ぶだけで栄養の摂り方が変わるのは覚えておくと役立ちます。
なお、健康効果については個人差があり、体調や持病によって適した食べ方は異なります。気になる症状がある場合や食事制限が必要な人は、自己判断せず医療機関や管理栄養士に相談してください。
高タンパクで噛みごたえがあり満腹感を得やすい
エンペラは100gあたり約17.9gのタンパク質を含み、しかもコリコリと噛みごたえがあるため、少量でも満腹感を得やすい部位です。よく噛んで食べることで満腹中枢が刺激され、食べ過ぎ防止にもつながります。
これは、柔らかくてするりと食べられる食材にはない利点です。噛む回数が自然に増えるエンペラは、ゆっくり食事をしたい人や、間食を減らしたい人の味方になります。低カロリー・高タンパクという数値以上に、満足感の高い食材だといえます。
ただし、イカはコレステロールを比較的多く含むという指摘もあります。健康のために食べる場合でも、一度に大量に食べるのではなく、いろいろな食材とバランスよく組み合わせることが大切です。
コリコリを引き出すエンペラの皮むきと切り分け手順

エンペラのコリコリ感を最大限に活かすには、皮むきと切り分けの下処理が肝心です。イカの皮は二重になっていて、きれいに取り除くかどうかで口当たりが変わります。ここでは家庭の台所でできる手順を具体的に見ていきましょう。
エンペラは胴体から指で引きはがすと取れる
エンペラを胴体から外すのに包丁は要りません。胴体の先端とエンペラの境目に指を入れ、ゆっくり引きはがすときれいに取れます。境目は意外としっかりくっついているので、片手で胴体を押さえ、もう片方の手でエンペラを下方向にめくるように引くのがコツです。
このとき、エンペラを引きはがすと胴体側の皮も少しめくれてきます。これは胴体の皮むきの「きっかけ」になるので、続けて胴体の皮もむくと作業がスムーズです。エンペラ外しが、イカ全体の下処理のスタート地点になるわけです。
無理に引っ張ると身が裂けてしまうので、はがれにくい場合は境目に沿って指の腹で少しずつ押し進めます。力任せではなく、はがれる方向を探りながら進めるのが失敗しないポイントです。
皮は二重なのでキッチンペーパーで2回むく
イカの皮は、しっかりした表皮と透明に近い薄皮の二重構造になっています。表皮だけむいて満足してしまいがちですが、薄皮が残ると口当たりがゴワつき、加熱したときに縮みの原因にもなります。両方むくのが仕上がりを左右します。
素手だとイカの表面がすべって皮をつかめないので、キッチンペーパーで皮の端をつまんで引くと面白いほどスルッとむけます。表皮をむいたら、残った薄皮も同じようにペーパーでこすり取りましょう。乾いたペーパーの方が摩擦が効いてつかみやすくなります。
皮をむいたエンペラは、白くつるんとした見た目になります。刺身にするなら皮は丁寧に取り、炒め物や煮物なら薄皮は多少残っても問題ありません。用途に合わせて手間を調整すると効率的です。
【失敗パターン①】皮を雑にむいて加熱で激しく縮む
よくある失敗が、薄皮を残したまま加熱してエンペラが激しく縮み、硬く丸まってしまうケースです。原因は、二重の皮のうち内側の薄皮が取りきれていないこと。薄皮は加熱で縮む力が強く、身を引っ張って反り返らせてしまいます。
対策は、下処理の段階で薄皮までしっかりむくこと、そして炒め物などでは表面に細かく格子状の切り込み(鹿の子)を入れることです。切り込みが縮む力を分散させ、火を通しても反りにくく、味も染みやすくなります。ひと手間で仕上がりが大きく変わります。
もし皮むきが難しいと感じたら、刺身ではなく加熱料理に回し、最初から細切りにしてしまうのも手です。細かく切ってあれば縮みも気にならず、食感もコリコリのまま楽しめます。状況に応じて切り方で逃げるのも賢い選択です。
エンペラのおいしい食べ方|刺身・焼き・炒めの使い分け
下処理ができたら、いよいよ調理です。エンペラはコリコリ食感を活かせる料理なら何でも合いますが、刺身・焼き・炒めでそれぞれ違った魅力が引き出せます。状況や好みに合わせた使い分けを紹介します。
刺身は細切りにしてコリコリ食感を最大化
鮮度のよいエンペラは、刺身にするとコリコリ食感がいちばん引き立ちます。皮をていねいにむいたら、繊維を断つように細切り(イカそうめん風)にするのがおすすめです。細く切ることで歯切れがよくなり、噛むほどに旨味と甘みが広がります。
厚めのそぎ切りにすれば、しっかりした弾力を味わう食べ方になります。生姜醤油やわさび醤油はもちろん、塩とすだちでさっぱり食べるのも、エンペラの濃い旨味を引き立てます。胴体の刺身と一緒に盛れば、同じイカで二つの食感が楽しめる一皿になります。
ただし生食は鮮度が命です。少しでも鮮度に不安がある場合は刺身を避け、加熱調理に回しましょう。安全に楽しむための判断は次のセクションで詳しく解説します。
焼き・炒めなら縮みにくさが活きる
エンペラは加熱しても縮みにくいので、焼き物や炒め物との相性が抜群です。バター焼きにすれば香ばしさとコリコリ感が同時に楽しめ、おつまみにぴったりです。塩こしょうでシンプルに焼くだけでも、エンペラの旨味がしっかり出ます。
炒め物では、エンペラに鹿の子の切り込みを入れてから強火でさっと炒めるのがコツです。火を通しすぎると硬くなるので、色が変わったらすぐ仕上げます。野菜炒めやガーリック炒め、エスニックな味付けにもよく合い、食感のアクセントとして主役を張れます。
下処理で触れたように、薄皮をしっかりむき、切り込みを入れておくと反り返りを防げます。加熱の最後にさっと火を入れるイメージを持つと、コリコリのまま仕上がります。火加減だけ意識すれば失敗しにくい部位です。
季節と用途で使い分ける(春夏は刺身、秋冬は煮物)
イカは種類ごとに旬が異なり、出回る時期で向く食べ方も変わります。スルメイカは夏が旬で、この時期の新鮮なものは刺身で。アオリイカは春から初夏と秋に味がのり、肉厚なエンペラを刺身や炙りで楽しむのに向きます。コウイカは冬に身が締まり、煮物やおでんでほっこり味わえます。
気温の高い春夏は鮮度が落ちやすいので、買ったその日に刺身にするか、加熱で安全に。気温の下がる秋冬は煮物やおでん、炒め物で温かく食べると体も満たされます。季節に合わせて生・焼き・煮を切り替えると、一年を通してエンペラを飽きずに楽しめます。
用途別に言えば、食感を主役にしたいときは刺身か炒め、ごはんのおかずにしたいときは焼きや煮物が向きます。同じエンペラでも切り方と火の入れ方で表情が変わるので、その日の献立に合わせて選んでみてください。
エンペラを選ぶ・扱うときの注意点|鮮度とアニサキス
最後に、エンペラを安全においしく食べるための注意点をまとめます。鮮度の見極めとアニサキス対策は、生食する機会のあるイカでは特に大切なポイントです。買うときと扱うときの両面から押さえておきましょう。
イカにはアニサキスという寄生虫がいることがあります。生で食べる前には身の表面をよく確認し、白い糸状のものがないかチェックしましょう。冷凍(−20℃で24時間以上)や加熱(中心70℃以上)で対策できます。万一、食後に激しい腹痛などの症状が出た場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
新鮮なエンペラは透明感とハリで見分ける
新鮮なイカを選ぶポイントは、エンペラに透明感があること、身にハリがあること、そして目が澄んで黒く濁っていないことです。鮮度が落ちるとエンペラや身が白っぽく濁り、表面のツヤも失われていきます。買うときはこの3点を見比べましょう。
また、新鮮なイカは皮の色素胞(茶色い斑点)がはっきりしていて、触れると色が変化するものもあります。胴体が透き通るような飴色で、押すと弾力が返ってくるものほど鮮度がよい目安です。ドリップ(赤茶色の汁)が溜まっているパックは時間が経っているサインなので避けると安心です。
剣先イカやヤリイカなど、生食で人気の種類はとくに鮮度が肝心です。種類ごとのアニサキス対策をあわせて知っておくと、刺身をより安心して楽しめます。

【失敗パターン②】常温放置で鮮度と安全性を落とす
もうひとつの代表的な失敗が、買ってきたイカを常温で長時間放置してしまうケースです。イカは鮮度が落ちやすい食材で、室温に置くほど旨味も食感も損なわれ、細菌の繁殖リスクも上がります。とくに気温の高い季節は短時間でも危険です。
対策はシンプルで、買ったらすぐ冷蔵庫へ入れ、その日のうちに食べきること。すぐ使わない場合は、下処理をしてから小分けにして冷凍するのが安全です。冷凍は鮮度の保持だけでなく、アニサキス対策にもつながる一石二鳥の方法です。
解凍するときも常温放置は避け、冷蔵庫でゆっくり戻すか氷水解凍を使いましょう。「ちょっとだけだから」と台所に出しっぱなしにする油断が、せっかくのエンペラを台無しにします。温度管理を徹底するだけで、おいしさも安全性も守れます。
アニサキスは目視と冷凍・加熱で予防する
イカにはアニサキスという寄生虫がいることがあり、生きたまま体内に入ると食中毒を起こす可能性があります。予防の基本は、生食前に身の表面を目視で確認し、白い糸状や線状のものを見つけたら取り除くことです。下処理のときに明るい場所でチェックしましょう。
目視で完全に防ぎきれない場合に備え、−20℃で24時間以上の冷凍、または中心温度70℃以上の加熱が有効とされています。厚生労働省も、これらの方法をアニサキス食中毒の予防策として案内しています。詳しい予防のポイントは公的機関の情報を確認するのが確実です。
万が一、生のイカを食べた後に激しい腹痛や吐き気などの症状が出た場合は、自己判断で対処せず、早めに医療機関を受診してください。安全に楽しむための備えとして、予防と受診の知識はセットで持っておきましょう。
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まとめ|エンペラはイカの「耳」、コリコリ食感の名脇役
エンペラとは、イカの胴体の先端についた三角形のヒレのことで、形が人の耳に似ていることから「耳(みみ)」とも呼ばれます。泳ぐときの舵取りや姿勢制御を担う、よく動かす筋肉の部位だからこそ、肉厚でコリコリとした独特の食感が生まれます。胴体のやわらかさとは別方向の魅力を持ち、「身より美味しい」と評する人もいる名脇役です。
栄養面でも低カロリー・高タンパクでタウリンが豊富と優秀で、下処理は皮を二重にむくのがコツ。刺身・焼き・炒めと使い分ければ、一年を通して楽しめます。生食する際は鮮度の見極めとアニサキス対策を忘れずに、安全においしくいただきましょう。
・エンペラ=イカの胴体先端にある三角形のヒレ(耳・みみ)
・役割は泳ぎの舵取りで、よく動く筋肉だからコリコリ食感
・種類でサイズが違い、アオリイカやコウイカは肉厚で食べごたえ大
・栄養はスルメイカ100gで約76kcal・タンパク質約17.9g・タウリン約350mg
・皮は表皮+薄皮の二重、キッチンペーパーで2回むくのがコツ
・刺身・焼き・炒めで使い分け、加熱でも縮みにくいのが強み
・生食は鮮度の見極めとアニサキス対策(冷凍・加熱・目視)が必須
まずは次にイカを買うとき、エンペラに透明感とハリがあるかを見比べてみてください。鮮度のよい一杯が手に入ったら、胴体は刺身、エンペラは細切りにしてコリコリ食感を試す。それだけで、これまで脇役だった「耳」が食卓の主役級のおいしさに変わるはずです。
※魚種ごとの旬や栄養成分には個体差・地域差があります。最新の情報は各公的機関の公式サイトでご確認ください。

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