スーパーの鮮魚コーナーでブリの刺身を見て、「これって青魚なの?それとも赤身魚?」と迷ったことはありませんか。背中は青光りしているのに、刺身にすると身は白っぽいピンク色。アジやサバのような分かりやすい青魚とは、どうも様子が違います。
結論から言うと、ブリは「背が青い」という見た目だけなら青魚に当てはまりますが、身の成分で分類すると赤身魚です。そして実際の流通や食卓の感覚では、ブリを青魚と呼ぶ場面はあまりありません。同じ魚が立場によって青魚にも赤身魚にもなる、ちょっとややこしい存在なのです。
この記事では、ブリが青魚なのか赤身魚なのかという問いに、青魚と赤身魚それぞれの定義から答えていきます。あわせて文部科学省の食品成分データベースで確認した栄養成分、寒ブリの旬や産地、おいしく食べるコツまで、ブリの正体をまるごと整理します。読み終わるころには、魚売り場でブリを見る目が少し変わっているはずです。
・ブリが青魚と赤身魚のどちらに分類されるのかの結論
・「青魚」「赤身魚」それぞれの定義と、定義があいまいな理由
・ブリの栄養成分とDHA・EPA量を青魚の代表種と数字で比較
・寒ブリの旬・産地・回遊と、栄養を活かす食べ方のコツ
ブリは青魚なのか|結論は「背は青いが青魚とは呼ばれにくい」

まずは多くの人が一番知りたい結論からお伝えします。ブリを「青魚かどうか」という一点だけで判定すると、答えは一つに定まりません。見方によって変わる、というのが正確なところです。
背中の色だけ見れば青魚の条件を満たしている
青魚とは「背の青い魚」の総称です。ブリの背は青緑色から濃い藍色で、身をくねらせて泳ぐ姿は確かに青光りして見えます。この外見の条件だけで判断するなら、ブリは青魚の仲間に入れてもおかしくありません。実際、魚食普及を担う一般社団法人大日本水産会の解説でも、ブリは「背中が青いので青魚と呼ばれる」と紹介されています。背側が青く腹側が銀白色という配色は、上から見ると海の色に、下から見ると空の光に紛れるカウンターシェーディングという保護色で、回遊魚に共通する特徴です。スーパーで一尾まるごとのブリや、皮付きの柵を見かけたら、背の色を確かめてみてください。青魚らしい青みがはっきり残っています。
身の成分で分けると「赤身魚」になる
一方で、魚を「赤身魚か白身魚か」で分ける科学的な基準で見ると、ブリは赤身魚に分類されます。判定の決め手は筋肉に含まれる色素タンパク質の量で、日本水産学会の1976年の定義では100gあたり10mg以上が赤身魚、それ未満が白身魚とされています。ブリは血合いを中心に色素タンパク質が多く、この基準を上回るため赤身魚です。刺身が白っぽく見えても、それは身全体が真っ赤になるマグロほど色素が多くないだけで、分類上はあくまで赤身魚の側。「青魚かどうか」と「赤身魚かどうか」は別々のものさしなので、ブリは「背が青い赤身魚」という両方の顔を持つことになります。
食卓や流通では「青魚」とは呼ばれにくい
定義のうえでは青魚にも当てはまるブリですが、実際の会話や売り場で「青魚といえばブリ」と言う人はあまりいません。青魚という言葉は、アジ・サバ・イワシ・サンマといった、手頃な値段で大衆的な魚を指す場面で使われることが多いからです。ブリは成魚で全長1mに達する大型魚で、寒ブリは一尾数千円から時に万単位の値が付く高級魚。そのため「大型魚・高級魚はあまり青魚とは呼ばれない傾向がある」と整理されることもあります。つまりブリは、定義上は青魚の条件を満たしつつ、言葉の使われ方としては青魚の枠から外れて扱われる、境界線上の魚なのです。
「青魚か赤身魚か」は対立しない
ここで混乱しやすいのが、「青魚」と「赤身魚」を二者択一だと思い込んでしまうことです。実はこの二つは比べる軸がまったく違います。青魚は背の色という見た目の分類、赤身魚は身の成分という中身の分類。だからブリのように「背は青く、身は赤身」という組み合わせが普通に成立します。アジやサバも同じで、背が青い青魚であると同時に、色素タンパク質が多い赤身魚でもあります。「青魚だから赤身魚ではない」という考え方は成り立たないと覚えておくと、魚の分類でつまずきにくくなります。
そもそも「青魚」とは何か|定義があいまいな理由
ブリの立ち位置がはっきりしないのは、そもそも「青魚」という言葉の輪郭がぼやけているからです。ここでは青魚という分類の正体を掘り下げます。
青魚には学術的な定義がない
意外に思われるかもしれませんが、「青魚」には魚類学上のきちんとした定義がありません。青魚は食用魚のうちイワシ類・アジ類・サバ類などの「背の青い魚」をまとめて呼ぶ、日本の食文化の中で生まれた便宜的な呼び名です。分類学のように科や属でくくられた集団ではなく、外見と肉質から見た事実上の概念にすぎません。だからこそ「ブリは青魚に入るのか」という問いに、図鑑をめくっても明快な答えは載っていないのです。境界があいまいなのは知識不足のせいではなく、言葉そのものに正式な線引きが存在しないため、と理解しておくとすっきりします。
青魚そのものの種類や範囲をもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。

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代表的な青魚はイワシ・アジ・サバ・サンマ
定義はあいまいでも、誰もが青魚だと認める「ど真ん中」の魚はいます。ニシン目のマイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシ、アジ科のマアジ、サバ科のマサバ・ゴマサバ、ダツ目のサンマあたりが代表格です。これらは背が青く、群れで回遊し、手頃な値段で出回るという青魚のイメージにぴったり当てはまります。逆に言えば、このイメージから外れるほど「青魚と呼ぶべきか」が揺らぎます。ブリは背の青さこそ共通するものの、大型で単価が高く、群れで安く売られる魚という印象から距離があるため、代表的な青魚のリストには入れられないことが多いのです。
「光りもの」との違いも知っておくと便利
青魚と近い言葉に、寿司屋でよく聞く「光りもの」があります。光りものは皮目が銀色に光る魚を酢で締めて握るネタを指す言葉で、コハダ・アジ・サバ・サンマ・イワシなどが代表です。青魚と重なる部分は多いものの、光りものは「皮を残して締める寿司ネタ」という調理・提供の文脈で使われる点が違います。ブリは寿司でも皮を引いて握ることが多く、銀色の皮目を生かす光りものとしては扱われません。同じ魚でも、どの文脈で語るかによって呼び名が変わるのが、日本の魚の面白いところです。
「実は」青魚の線引きは時代や地域でも動く
意外と知られていないのですが、何を青魚と呼ぶかは、時代や地域、語る人の立場によっても少しずつ揺れています。栄養の話題ではDHA・EPAが豊富な背の青い魚を広く青魚とまとめる一方、魚屋の現場では値段や売り方を基準に線を引くこともあります。マグロを青魚に含めるかどうかでも意見が分かれるほどで、ブリの扱いが人によって違うのはむしろ自然なこと。「正解が一つではない」と知っておけば、ネットや本で食い違う説明に出会っても戸惑わずにすみます。大切なのは、どの基準で語っているのかを見分ける視点です。
ブリが赤身魚に分類される理由|身が白っぽいのになぜ

「赤身魚なのに、刺身は白っぽいのはなぜ?」という疑問は当然です。ここでは赤身魚の定義とブリの身の関係を、構造から説明します。
| 分類 | スズキ目アジ科ブリ属(赤身魚/背は青い) |
| 旬 | 11月〜2月(天然の寒ブリ) |
| 大きさ | 成魚で全長1m前後、10kg超も |
| 生息域 | 日本周辺を回遊(海水温16〜21℃を好む) |
| 味の特徴 | 冬は脂がのって濃厚、夏はあっさり |
| おすすめ調理法 | 刺身・ぶりしゃぶ・照り焼き・ぶり大根 |
決め手は色素タンパク質の量
赤身魚と白身魚を分ける基準は、見た目の赤さではなく筋肉中の色素タンパク質の量です。ミオグロビンやヘモグロビンといった色素タンパク質が100gあたり10mg以上なら赤身魚、それ未満なら白身魚というのが日本水産学会の定義です。これらの色素は筋肉に酸素を取り込み蓄える役割を持ち、長く泳ぎ続ける回遊魚ほど多く必要になります。ブリは日本列島の沿岸を季節ごとに移動する回遊魚なので、酸素をためる色素タンパク質を多く備えており、基準を上回って赤身魚に分類されるというわけです。色の濃淡ではなく、中身の成分で決まると押さえておきましょう。
マグロほど赤くないのは回遊距離の違い
同じ赤身魚でも、マグロの刺身は鮮やかな赤、ブリは淡いピンクと色がかなり違います。この差は泳ぐ距離に由来します。マグロは外洋を時速数十kmで延々と泳ぎ続けるため、身全体に色素タンパク質がびっしり行き渡って真っ赤になります。対してブリは海水温16〜21℃を好み、日本海側と太平洋側に分かれて沿岸を回遊する魚で、移動範囲はマグロほど広大ではありません。そのため色素は血合いの部分に集中し、身の大半は白っぽく見えます。淡い色でも基準値は超えているので、見た目に反して赤身魚。色の濃さは「どれだけ激しく長く泳ぐ魚か」のバロメーターでもあるのです。
サケが「白身魚」なのと真逆の関係
ブリとちょうど逆の例がサケです。サケの身はオレンジがかった赤色ですが、分類上は白身魚。あの色はエサにするオキアミなどに含まれるアスタキサンチンという色素が身に移ったもので、ミオグロビンとは別物だからです。色素タンパク質の量は基準に届かないため、見た目が赤くても白身魚に区分されます。つまりブリは「白っぽいのに赤身魚」、サケは「赤いのに白身魚」と、見た目と分類が裏返った関係。魚の身の色は、必ずしも赤身・白身の分類と一致しないことを示す、わかりやすいペアです。
赤身魚の代表種や白身魚との見分け方を体系的に知りたい方は、こちらの記事が参考になります。

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【失敗しがち】血合いを全部そぎ落として栄養を捨てる
ブリをさばくとき、赤黒い血合いを「生臭そうだから」とすべて切り落としてしまう人がいます。実はこれはもったいない失敗です。血合いには鉄やビタミン、DHA・EPAといった栄養が集中しており、ブリの赤身魚らしさを支える部分でもあります。原因は血合いを傷んだ箇所と勘違いすることにあります。対策はシンプルで、新鮮なうちに調理し、血合いは塩を振って少し置き、出てきた水気を拭き取ってから加熱調理に回すこと。煮付けや照り焼きなら血合いの風味も生きます。気になる臭みは下処理で抑えられるので、栄養ごと捨ててしまう必要はありません。
数字で見るブリの実力|栄養成分とDHA・EPA
ブリが青魚らしく評価されるのは、何より栄養価の高さゆえです。ここでは文部科学省の食品成分データベースで確認した数値をもとに、ブリの中身を見ていきます。
ブリ100gの基本成分
文部科学省の食品成分データベースによると、ぶり(成魚・生)100gあたりの栄養成分はエネルギー222kcal、たんぱく質21.4g、脂質17.6g、炭水化物0.3gです。脂質が多めなのは寒い季節に脂をたっぷり蓄えるブリらしさで、この脂のうまみが冬の刺身や照り焼きのおいしさを生みます。ビタミン類も豊富で、ビタミンD8.0μg、ビタミンB1 0.23mg、ビタミンB2 0.36mg、ビタミンB6 0.42mg、ビタミンB12 3.8μg、ナイアシン9.5mgを含みます。ミネラルは鉄1.3mg、カリウム380mg、リン130mgなど。赤身魚らしく鉄を含む一方、たんぱく質もしっかり摂れる、栄養バランスのよい魚といえます。
DHA・EPAは青魚の代表種より多い
青魚といえばDHA・EPAという脳や血管の健康にかかわる脂肪酸が注目されますが、ブリはこの点で青魚の代表格にも引けを取りません。ブリのDHA・EPA合計はおよそ2640mg(100gあたり)。これはサンマの約2450mg、サバの約1660mgを上回る数値です。「青魚と呼ばれにくい」のに、青魚の看板成分はむしろ多いという、ブリらしいねじれが数字に表れています。脂がのる寒い時期ほど脂肪酸も増える傾向があるので、栄養面でもブリは冬が狙い目。青魚かどうかの呼び名にこだわらず、栄養価で選ぶならブリは有力な候補です。
さかなのさ調べ|青魚・赤身魚の比較早見表
ブリの立ち位置を整理するために、「背の青さ」「身の分類」「DHA・EPAの目安」を主な魚で並べてみました。同じ魚でも軸を変えると顔つきが変わるのがわかります。
| 魚種 | 背の青さ | 身の分類 | DHA・EPA目安(100g) |
|---|---|---|---|
| ブリ | 青い | 赤身魚 | 約2640mg |
| サンマ | 青い | 赤身魚 | 約2450mg |
| サバ | 青い | 赤身魚 | 約1660mg |
| サケ | 青くない | 白身魚 | 中程度 |
※さかなのさ調べ。DHA・EPA量は文部科学省食品成分データベース等の公開値をもとにした目安で、産地・季節・個体により変動します。
脂質が多い=太るとは限らない
ブリは脂質17.6gと魚の中では多めですが、「脂が多いから太る」と決めつけるのは早計です。ブリの脂はDHA・EPAという不飽和脂肪酸が中心で、これらは体の調子を整える働きが期待される必須脂肪酸。同じ脂でも質が異なります。とはいえエネルギーは222kcalと相応にあるため、食べ過ぎれば当然カロリーオーバーにつながります。ポイントは量と調理法で、照り焼きで砂糖や油を重ねるより、刺身やしゃぶしゃぶで素材の脂を生かすほうが摂取カロリーを抑えられます。栄養価を味方につけるには、ブリの脂の質を理解したうえで食べ方を選ぶのが賢いやり方です。
ブリが青魚と呼ばれにくいもう一つの理由|大型魚という立場
ブリが青魚の枠から外れがちなのは、成分だけでなく「魚としての格」も関係しています。ここではブリの体や出世魚としての側面に注目します。
ブリが青魚と呼ばれにくいのは成分だけが理由ではありません。全長1m級の大型魚であること、成長で名前が変わる縁起のよい出世魚であること——この「格の高さ」が、大衆魚を指す青魚のイメージと一線を画しています。
成魚は全長1m級の大型魚
ブリは成長すると全長1m前後、大きいものは10kgを超える堂々たる大型魚です。手のひらに乗るアジやサンマと並べると、サイズ感はまるで違います。青魚という言葉が持つ「小ぶりで群れる大衆魚」というイメージから、体格の面でもブリは外れているのです。大きく育つ魚は身質や脂のりも変わり、刺身・しゃぶしゃぶ・ぶり大根と料理の幅も広がります。同じ背の青い回遊魚でも、サイズが一段も二段も上であることが、ブリを「青魚」より「ごちそうの魚」として扱わせる一因になっています。
成長で名前が変わる出世魚
ブリのもう一つの大きな特徴が、成長とともに名前が変わる出世魚であることです。関東ではワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ、関西ではツバス→ハマチ→メジロ→ブリと、サイズの段階ごとに呼び名が移り変わります。出世魚は縁起がよいとされ、お祝いの席にも使われる格の高い魚。手頃さが身上の青魚とは、文化的な位置づけも対照的です。スーパーで「ハマチ」と「ブリ」が別物のように並んでいても、実は同じ魚の成長段階。名前の違いに惑わされず、サイズと脂のりで選ぶと失敗しません。
ブリとハマチが同じ魚であることや、出世魚としての呼び名の詳しい違いは、こちらの記事で深掘りしています。

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養殖が盛んで一年中手に入る
青魚の代表種が旬に大量に出回る一方、ブリは養殖が盛んで一年を通して安定供給される点も特徴です。日本の養殖魚の中でもブリ類は生産量が多く、ハマチサイズで出荷されるものが多く流通しています。養殖ブリは脂のりが安定し、季節を問わずおいしく食べられるのが利点。一方で、脂のうまみと身の締まりを最大限に味わうなら、冬に獲れる天然の寒ブリが格別です。「いつでも買える養殖」と「冬が旬の天然」を使い分けられるのも、大型で価値が高いブリならではの楽しみ方といえます。
寒ブリはなぜ冬に旨い|旬・産地・回遊の関係
ブリといえば冬の寒ブリ。その旨さには、回遊魚としての生態がしっかり関係しています。旬と産地の背景を知ると、選び方も上手になります。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | ○ | ◎ |
◎=最旬(もっとも美味しい時期) ○=美味しい △=出回るが旬ではない(天然・寒ブリの目安)
寒ブリの旬は11月〜2月
天然ブリがもっともおいしくなる旬は、おおむね11月から2月です。この時期に水揚げされるものは「寒ブリ」と呼ばれ、身に脂がたっぷりのっています。理由はブリの産卵期にあります。ブリは3月から5月にかけて産卵を控えており、その前に体力をつけようとエサを大量に食べて脂を蓄えるのです。冬の冷たい海で丸々と太ったブリは、刺身にすればとろけるような口当たり、しゃぶしゃぶにすれば脂の甘みが際立ちます。スーパーで寒ブリを選ぶなら、11月から2月を狙うのが間違いありません。逆に夏のブリはあっさりめなので、料理に合わせて時期を選ぶとよいでしょう。
三大漁場は氷見・伊根・五島列島
寒ブリの名産地として知られるのが、富山県氷見市、京都府伊根町、長崎県五島列島の三大ブリ漁場です。これらは海流に乗って南下するブリの回遊ルート上にあり、ほどよく脂がのった良型が立ち寄る恵まれた漁場として知られています。とりわけ氷見漁港に揚がるブリはブランド魚として有名です。産地表示を見て選ぶときの参考になりますが、同じ天然でも個体差は大きいので、産地だけでなく身の張りや血合いの色も合わせて確認するのがおすすめです。地域のブランドブリは流通量が限られるため、見かけたら旬の味として試してみる価値があります。
回遊魚だから季節で脂のりが変わる
ブリの味が季節で大きく変わるのは、海水温に合わせて移動する回遊魚だからです。ブリは海水温16〜21℃を好み、春には餌を追って北上し、冬になると水温の下がる海域を避けて南下します。この南下の途中、脂をたっぷり蓄えた状態で漁場を通過するのが寒ブリです。回遊魚は移動と産卵のサイクルに合わせて体の状態が変わるため、同じ魚でも獲れる時期で脂のりがまるで違います。「いつ、どこで獲れたか」が味を左右するのが天然ブリの面白さ。旬と産地をセットで意識すると、買うときの満足度がぐっと上がります。
養殖ブリは旬の影響を受けにくい
天然ブリが季節で味を変えるのに対し、養殖ブリは年間を通して脂のりが安定しています。計画的にエサを与えて育てるため、旬を待たなくても一定のおいしさが楽しめるのが利点です。価格も比較的手頃で安定しており、日常の食卓に取り入れやすいのも魅力。一方で、冬の天然寒ブリが持つ身の締まりや、季節ならではの濃厚な脂のうまみは、養殖とはまた違う味わいです。普段使いは養殖、特別な日や旬を味わいたいときは天然の寒ブリ、と用途で使い分けると、ブリをより賢く楽しめます。
ブリの栄養を活かす食べ方|青魚としての脂を逃さないコツ
せっかくのブリの栄養と脂、食べ方しだいで生かしも殺しもします。ここでは用途別の食べ方と、やりがちな失敗を紹介します。
刺身は脂と鉄分をまるごと摂れる
ブリの栄養をもっとも効率よく摂れるのが刺身です。加熱で流れ出やすいDHA・EPAや、水溶性のビタミンB群を損なわずにそのまま食べられるからです。脂がのった寒ブリの刺身は、口に入れた瞬間に広がる甘みが格別。柵を選ぶときは、血合いの色が鮮やかで、身に透明感とハリのあるものが新鮮です。切るときは繊維に対して直角に、包丁を手前に引くようにして一気に引き切ると、断面がなめらかに仕上がります。脂が多いぶん、薄めに切ると食べやすく、わさび醤油はもちろん、おろし生姜とも好相性。赤身魚らしい鉄分も生で摂れるのが刺身の利点です。
しゃぶしゃぶ・照り焼き・ぶり大根を使い分ける
加熱して食べるなら、脂の量に合わせて調理法を選ぶのがコツです。脂が強い寒ブリはぶりしゃぶにすると余分な脂が湯に落ち、さっぱりと大量に食べられます。照り焼きは甘辛いタレが脂とよく絡み、ごはんが進く定番。ぶり大根は、煮汁にブリのうまみと脂が溶け出し、大根にしみ込んで一尾を無駄なく味わえます。あらや血合いも煮物に回せば、栄養を逃さず使い切れます。季節でいえば、脂の濃い冬はしゃぶしゃぶや刺身、あっさりした時期は照り焼きや煮付け、と使い分けると年間を通してブリを楽しめます。
ブリにもアニサキスなどの寄生虫がいる可能性があります。生食する場合は目視で確認し、心配な場合は加熱(中心まで十分に火を通す)や冷凍(家庭用冷凍庫での長時間冷凍)といった一般的な予防策をとってください。体調に不安がある場合や、食後に強い腹痛などの症状が出た場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
【失敗しがち】切り身を常温で長く放置する
ブリの切り身や刺身を、室温に長時間置きっぱなしにするのは避けたい失敗です。魚は温度が上がると傷みが進みやすく、青魚や赤身魚ではヒスタミンという物質が増えるリスクも指摘されています。原因は「すぐ食べるから」と買い物後や調理中に常温へ出しっぱなしにすること。対策は、買ったらできるだけ早く冷蔵庫に入れ、使う直前まで低温を保つことです。解凍は冷蔵庫内でゆっくり行い、一度解凍したものは再冷凍しないのが基本。鮮度のよいうちに食べきる習慣をつければ、ブリのおいしさと栄養を安全に楽しめます。
状況別|白身魚・赤身魚・青魚の使い分け
献立を考えるとき、魚を「白身・赤身・青魚」のタイプで使い分けると幅が広がります。淡白な白身魚はムニエルや蒸し物で上品に、マグロやカツオのような赤身魚は刺身でガツンと。背の青い青魚はDHA・EPAを狙って焼きや煮付けで、というのが基本の発想です。ブリは「背が青い赤身魚」という両方の顔を持つので、刺身でも煮ても焼いてもおいしく、献立に組み込みやすい万能選手。脂がのる冬は主役級のごちそうに、あっさりした時期は普段のおかずにと、季節と気分で役割を変えられるのがブリの強みです。
まとめ|ブリは青魚であり赤身魚という二つの顔を持つ魚
ブリが青魚かどうかという問いには、一つの言葉では答えきれません。背中が青いという見た目では青魚の条件を満たし、身の成分では赤身魚に分類され、流通や食卓の感覚では青魚と呼ばれにくい。これらは矛盾ではなく、それぞれ違うものさしで見た結果です。青魚は背の色という見た目の分類、赤身魚は色素タンパク質という中身の分類だからこそ、ブリは「背が青い赤身魚」として両方に当てはまります。呼び名のあいまいさに振り回されず、ブリという魚そのものの実力に目を向けることが、いちばん確かな理解につながります。
・青魚に学術的な定義はなく「背の青い魚」の慣習的な総称
・ブリは背が青いので青魚の条件は満たすが、大型・高級魚のため慣習的には青魚と呼ばれにくい
・身の分類では色素タンパク質が100gあたり10mg以上のため赤身魚
・「青魚か」と「赤身魚か」は別の軸で、両立する
・DHA・EPA合計は約2640mgでサンマ・サバより多い
・旬は11〜2月の寒ブリ、三大漁場は氷見・伊根・五島列島
・刺身やしゃぶしゃぶで脂と栄養を生かし、常温放置は避ける
まずは次にスーパーへ行ったとき、ブリの一尾売りや皮付きの柵で背の色を確かめてみてください。青光りする背と、淡く赤みを帯びた身——その両方を自分の目で確認すれば、「青魚であり赤身魚」というブリの二つの顔が腑に落ちるはずです。旬の寒ブリの時期なら、刺身とぶり大根を食べ比べて、脂のうまみと栄養を丸ごと味わってみてください。
※魚の分類や栄養成分は、参照する資料や調査時期によって表記が異なる場合があります。最新かつ詳細な情報は、文部科学省の食品成分データベースなど公的機関のサイトでご確認ください。

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