ビンチョウマグロがまずいと言われる本当の理由|淡白な赤身とビントロの差を栄養データで解説

「ビンチョウマグロってまずいよね」——スーパーの安いマグロ刺身を口にして、そう感じたことはありませんか。クロマグロやメバチのような濃い旨味を期待すると、たしかにビンチョウマグロの赤身は淡白で物足りなく感じられます。価格も安く、身の色も白っぽいので「安物のマグロ」という印象を持たれがちです。

でも、ビンチョウマグロが「まずい」と言われるのには、はっきりした理由があります。脂質の量、ミオグロビンという色素、回遊魚としての生態——どれも科学的に説明できることばかりです。そして同じ魚なのに「ビントロ」として出されると一転して人気になる、その理由も知ると見方が変わります。

この記事では、ビンチョウマグロがまずいと言われる理由を栄養データと生態から解き明かし、5種類のマグロとの違い、白い身の正体、そして家庭で美味しく食べるコツまで丸ごと解説します。読み終わるころには、安いビンチョウマグロを賢く選んで楽しめるようになっているはずです。

📌 この記事でわかること

・ビンチョウマグロが「まずい」と言われる科学的な3つの理由
・クロマグロ・メバチ・キハダなど5種のマグロとの味・脂・栄養の違い
・白っぽい身は鮮度が悪いからではない理由(ミオグロビンの正体)
・「ビントロ」が人気な理由と、家庭で美味しく食べる選び方・調理のコツ

目次

ビンチョウマグロが「まずい」と言われる3つの理由

結論から言うと、ビンチョウマグロがまずいと感じられるのは「味が悪い」のではなく「他のマグロと味の方向性が違う」からです。淡白さの理由は脂質・色素・生態の3点で説明できます。ここを押さえると、安く買って活かす道筋が見えてきます。

📌 「まずい」と言われる3つの理由

① 脂質が100gあたり0.7gと少なく赤身が淡白/② ミオグロビンが少なく身が白っぽい/③ 流通量が多く安いため期待値が低い。どれも「味が悪い」のではなく「方向性の違い」が原因です。

理由1:脂質が圧倒的に少なく赤身が淡白だから

最大の理由は脂質の少なさです。びんなが(ビンチョウマグロ)の生100gあたりの脂質はわずか0.7g、エネルギーは111kcal(文部科学省 食品成分データベース)。これに対しクロマグロやミナミマグロのトロは脂質が桁違いに多く、口の中でとろける濃厚さがあります。マグロの「旨い」というイメージの多くは脂の甘みに支えられているので、脂がほとんどないビンチョウマグロの赤身は「あっさりしすぎて物足りない」と感じられるわけです。一方でたんぱく質は100gあたり26.0gと高く、低脂質高たんぱくの食材としては優秀。脂を求めると裏切られますが、さっぱり食べたい人にはむしろ向いています。期待値の方向を間違えると「まずい」になるのです。

理由2:身が白っぽく「安っぽく」見えるから

ビンチョウマグロの身は淡いピンク〜白色で、クロマグロの濃い赤とは見た目が大きく違います。これは「ミオグロビン」という筋肉色素の量が少ないためです。マグロの赤色はこのミオグロビンの濃さで決まり、運動量が多く高速で泳ぐ種ほど色が濃くなります。ビンチョウマグロは比較的おとなしい遊泳の回遊魚で色素が薄く、結果として白っぽい身になります。日本では「マグロ=濃い赤」というイメージが強いため、白い身は無意識に「鮮度が悪い」「安物」と判断されやすいのです。実際には鮮度や味の良し悪しとは別問題で、色の薄さは種の特性。見た目の先入観が「まずい」という評価に直結している面は見逃せません。

理由3:流通量が多く安いから期待されないから

ビンチョウマグロは竿釣りや延縄で大量に漁獲され、ツナ缶の原料にもなるほど流通量が多い魚です。スーパーでは最も安いマグロ刺身として並ぶことが多く、価格が安いぶん「どうせ安物」という心理的なバイアスがかかります。同じ味でも高級品として出されれば評価は変わるもので、安さゆえに最初から期待値が低く設定され、それが「まずい」という印象を補強しています。とはいえ、これは裏を返せば「安く手に入る高たんぱく食材」ということ。値段で身構えず、淡白な持ち味に合う食べ方をすれば、コスパの良い優秀な魚になります。安さは欠点ではなく、活かし方次第の長所です。

そもそもビンチョウマグロはどんな魚?生態と旬を知る

「まずい」を語る前に、ビンチョウマグロがどんな魚かを知っておきましょう。正式な和名は「ビンナガ」。マグロ類の中では小型で、旬や産地を押さえると味の見え方が変わってきます。

🐟 魚スペックカード(ビンナガ)

分類 スズキ目サバ科マグロ属(学名 Thunnus alalunga)
冬〜春先(産地により差)
大きさ 全長1.2m前後(最大記録1.4m・60kg)
生息域 世界中の熱帯〜温帯海域を回遊(日本海は稀)
味の特徴 淡白でさっぱり。脂がのると濃厚(ビントロ)
おすすめ調理法 漬け・カルパッチョ・ステーキ・ツナ自家製

胸ビレが長い「トンボ」|名前の由来と見た目

ビンナガという和名は、頭の横(鬢=びん)から伸びるように胸ビレが長いことに由来し、漢字では「鬢長」と書きます。この胸ビレは体長の半分近くにもなるほど長く、左右に広げた姿が昆虫のトンボに似ているため、市場では「トンボ」「トンボシビ」とも呼ばれます。全長は1.2mほどで、マグロ属の中ではクロマグロ(最大3m級)やメバチに比べてかなり小型。体は紡錘形で背は濃い青、腹は銀白色です。スーパーで「トンボマグロ」と表示されていたら、それはビンチョウマグロのこと。長い胸ビレは見分けの決め手なので、丸ごとの個体を見る機会があれば確認してみてください。名前を知ると、ぐっと身近に感じられます。

世界中の海を回遊する|分布と漁法

ビンチョウマグロは世界中の熱帯から温帯海域に広く分布する回遊魚です。北太平洋では西から東へ大規模に回遊しますが、日本海に入り込むことは稀とされています。漁法は竿釣り(一本釣り)と延縄(はえなわ)が中心で、群れで回遊する習性を利用してまとまった量が水揚げされます。日本では宮崎県・高知県・沖縄県・静岡県・三重県が主な産地で、上位3県だけで全国の水揚げの約半分を占めます(旬の魚貝百科)。広い海を泳ぎ回る回遊魚らしく身は締まっていますが、運動の質が色素の薄さや脂のつき方にも関係しています。漁獲量が安定して多いことが、手頃な価格を支える背景になっています。

旬は冬から春先|時期で脂のりが変わる

ビンチョウマグロの旬は冬から春先です。和歌山県では12月〜翌4月上旬が漁期で、2〜3月が最盛期。一方、静岡県では水揚げの多い春から夏を旬とするなど、産地によって時期の捉え方に幅があります。重要なのは、寒い時期に獲れて脂がのった個体ほど身がしっとりして美味しいという点。同じビンチョウマグロでも、夏場のさっぱりした赤身と、冬の脂がのった身ではまるで別物の味わいです。「まずい」と感じた経験が脂の少ない時期のものだった可能性は十分あります。旬の月別の目安は次のカレンダーを参考にしてください。

🗓 旬カレンダー(ビンチョウマグロ/さかなのさ調べ)

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◎=最旬(脂がのる時期) ○=美味しい △=出回るが脂は少なめ ※産地により前後します

5種のマグロを徹底比較|味・脂・栄養はどう違う

ビンチョウマグロの淡白さは、他のマグロと並べると一目瞭然です。スーパーで見かける主要5種を、味・脂・赤身の栄養・価格帯で比較してみましょう。自分の好みに合うマグロ選びの軸になります。

比較項目 ビンチョウ キハダ メバチ クロマグロ ミナミ
身の色 淡ピンク 薄い赤 濃い赤 深い赤 濃い赤
味わい 淡白 あっさり バランス 濃厚 濃厚
赤身EPA/DHA 43/9mg 32/9mg 80/23mg 27/11mg 10/3mg
価格帯 安い 手頃 中程度 高級 高級

※EPA/DHAは赤身100gあたりの目安(さかなのさ調べ/公開栄養データより)。脂身(トロ)は数値が大きく変わります。

クロマグロ・ミナミマグロ|脂の濃厚さで別格

マグロの最高峰がクロマグロ(本マグロ)とミナミマグロ(インドマグロ)です。どちらも身は深い赤で、トロの部分は脂がたっぷりのり、口の中でとろける濃厚さが特徴。赤身の段階でも旨味が強く、ビンチョウマグロの淡白さとは対照的です。クロマグロは寿司ネタの王様として高値で取引され、ミナミマグロもそれに次ぐ高級魚。脂の甘みを最大限に楽しみたいなら、この2種が筆頭です。ビンチョウマグロを「物足りない」と感じる人は、無意識にこの濃厚な味を基準にしている場合が多いもの。価格も大きく違うので、同じ土俵で比べると分が悪く見えてしまいます。本マグロの幼魚「ヨコワ」については別記事で詳しく解説しています。

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メバチ・キハダ|スーパー刺身の主力

スーパーのマグロ刺身で最もよく見かけるのがメバチとキハダです。メバチは赤身100gあたりEPA80mg・DHA23mgと今回比較した中では赤身のEPA・DHAが多く、適度な旨味とバランスの良さで刺身の定番。キハダは身が薄い赤色であっさりとした味わいで、関西で特に好まれます。どちらもビンチョウマグロよりは赤色が濃く旨味も強めですが、クロマグロほどの脂はありません。つまりマグロは「濃厚(クロ・ミナミ)→中間(メバチ・キハダ)→淡白(ビンチョウ)」というグラデーションで並びます。ビンチョウマグロはこの一番あっさりした端にいるため、濃い味に慣れた舌には薄く感じられる、という位置づけです。

ビンチョウマグロ|低脂質・高たんぱくの実力

比較表で見ると、ビンチョウマグロは脂質0.7g・たんぱく質26.0gと、低脂質高たんぱくの優等生です。赤身のEPAは43mgと、クロマグロの赤身(27mg)より多いという意外な一面もあります。脂の濃厚さでは負けますが、さっぱりした口当たりやヘルシーさでは強みがあります。カロリーを抑えたい人、脂っこいものが苦手な人、たんぱく質を手軽に摂りたい人にとっては、むしろ選ぶ理由のある魚です。「まずい」のではなく「役割が違う」——濃厚さを競う土俵から降りて、淡白さを活かす土俵で評価すれば見方が変わります。マグロを含む赤身魚全体の特徴は、こちらの記事もあわせてどうぞ。

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白っぽい身は鮮度が悪いから?色の正体を知る

「ビンチョウマグロは身が白いから古いんじゃないの?」とよく聞かれます。実はこれは大きな誤解です。色の薄さは鮮度ではなく種の特性であり、ここを理解すると「まずそう」という先入観が消えます。

実は色の濃さと美味しさは無関係|逆張りの真実

意外と知られていませんが、マグロの身の赤さと味の良し悪しには直接の関係はありません。赤色のもとであるミオグロビンは、筋肉に酸素を蓄えるための色素タンパク質で、味そのものを決める成分ではないのです。ビンチョウマグロが白っぽいのはミオグロビンが少ない種だからで、鮮度が落ちて変色したわけではありません。むしろ「赤いほど美味しそう」という感覚は、人間が見た目で作り上げた思い込みに近いもの。世界に目を向ければ、淡白で白い身のマグロを好む食文化もあります。色が薄い=低品質という図式は、日本のマグロ文化が生んだ先入観。色ではなく、脂のり・ツヤ・身の締まりで判断するのが本当の目利きです。

ミオグロビンとは何か|赤身魚と白身魚の境界

ミオグロビンは筋肉中に酸素を貯める赤い色素タンパク質で、長時間泳ぎ続ける回遊魚ほど多く含みます。水産学では筋肉100gあたりのミオグロビン量が一定以上の魚を「赤身魚」と分類し、マグロやカツオが代表格です。ビンチョウマグロも分類上は赤身魚ですが、マグロ属の中ではミオグロビンが少なめで、色が薄くなります。つまり「赤身魚なのに白っぽい」という中間的な位置にいるのです。この色素の量は遊泳スタイルと深く結びついていて、瞬発力より持久力で泳ぐ魚は色が穏やかになる傾向があります。色の濃淡は、その魚がどう泳いで生きているかを映す鏡。ビンチョウマグロの淡い色は、その生き方の表れなのです。

鮮度はここで見分ける|色以外のチェックポイント

色で鮮度を判断できないなら、何を見ればいいのでしょうか。ポイントは3つです。まず「ツヤ」——表面がしっとり光り、乾いてくすんでいないもの。次に「ドリップ」——パックの底に赤い汁(ドリップ)が溜まっていないもの。汁が多いと身の水分と旨味が抜けています。最後に「身の締まり」——角がピンと立ち、へこんだり崩れたりしていないもの。柵で買うなら断面の繊維がくっきり見えるものが新鮮です。ビンチョウマグロは白っぽいぶん、変色や乾きが分かりにくいので、このツヤとドリップを特に丁寧に見ましょう。色ではなくこの3点で選べば、白い身でも鮮度の良いものを引き当てられます。

Q. 白いビンチョウマグロと赤いマグロ、栄養はどちらが上ですか?
A. 色では決まりません。ビンチョウマグロは赤身でもEPAが100gあたり約43mgと、クロマグロ赤身の約27mgより多いという結果もあります。一方で脂質はビンチョウが0.7gと少なく、トロのある種は脂溶性の栄養が豊富。どちらが上ではなく「さっぱり高たんぱくのビンチョウ」「脂の栄養が多い本マグロ」と役割が違うと考えるのが正解です。

ビントロは別物|「まずい」を覆す脂の部位

同じビンチョウマグロでも「ビントロ」と聞くと印象が変わる人は多いはず。回転寿司の人気ネタにもなったビントロは、淡白という弱点を脂で覆した存在です。ここを知ると評価が一変します。

📌 ビントロは「もう一つの顔」

同じビンチョウマグロでも、脂がのった部位が「ビントロ」。淡いピンク色でとろける食感は本マグロのトロに迫り、回転寿司の人気ネタに。「まずい赤身」と「人気のビントロ」は同じ魚の別の顔です。

ビントロの正体|脂がのった時期の身

ビントロとは「ビンチョウマグロのトロ」の略で、脂がのった時期に獲れた個体の、特に脂の多い部位を指します。これを冷凍して生食用に売り出したところ、本マグロのトロに近い濃厚さが評価され、回転寿司を中心に人気ネタになりました。淡いピンク色でとろけるような舌触りが特徴で、同じ魚とは思えないほど赤身とは別物です。つまりビンチョウマグロは「淡白な赤身」と「濃厚なビントロ」という二つの顔を持つ魚。「まずい」と言われるのは前者で、後者はむしろ高く評価されています。脂ののる冬場の個体を選べば、家庭でもこの濃厚さに近づけます。安いのに当たりを引いたときの満足感は格別です。

本マグロのトロとの違い|価格と脂の質

ビントロは本マグロのトロに近いと言われますが、まったく同じではありません。本マグロの大トロは脂の甘みとコクが圧倒的で、価格も別格。対してビントロは脂のとろける食感を手頃な価格で楽しめるのが魅力です。脂の質はあっさりめで、しつこくないぶん何貫でも食べやすいという声もあります。本マグロのトロが「特別な日のごちそう」なら、ビントロは「気軽に楽しめる脂のネタ」。どちらが上という話ではなく、シーンと予算で選ぶものです。値段を考えればビントロのコストパフォーマンスは際立っており、「安い=まずい」という思い込みを最も鮮やかに裏切ってくれる存在と言えます。

ビントロの選び方|パックでの見分け方

スーパーでビントロを選ぶときは、まず色とサシ(脂)を見ます。淡いピンク〜クリーム色で、全体に脂が回ってしっとりしているものが良品。赤身寄りで白っぽさが強いものは脂が少なめで、淡白な味になりがちです。次にドリップが少なく、表面にツヤがあるものを選びます。冷凍・解凍品が多いので、解凍ムラや一部が乾いた「焼け」がないかも確認しましょう。表示に「ビントロ」「トロビンチョウ」とあれば脂を狙った部位、「ビンチョウマグロ(赤身)」なら淡白な部位です。脂を楽しみたいなら表示と色をしっかり見比べて、冬場の脂ののった時期に買うのが失敗しないコツです。

家庭でビンチョウマグロを美味しく食べる方法

淡白さは工夫でいくらでも補えます。脂が少ないなら、味や香り、食感を足してあげればいい。ここでは家庭で実践しやすい食べ方と、やりがちな失敗を紹介します。

Q. ビンチョウマグロの赤身が淡白で物足りません。どうすれば?
A. 「足し算」が正解です。醤油・みりん・ごま油の漬けでコクを足す、オリーブオイルとレモンのカルパッチョで脂を補う、表面を炙ってステーキにして香ばしさを足す——いずれも淡白さを長所に変える定番。生で物足りなければ加熱して自家製ツナにする手もあります。

淡白さを活かす|漬け・カルパッチョ・ステーキ

ビンチョウマグロは味が淡白なぶん、調味料や油との相性が抜群です。おすすめは3つ。まず「漬け」——醤油・みりん・少量のごま油に20〜30分漬けると、淡白な身にコクと旨味が入ります。次に「カルパッチョ」——薄切りにオリーブオイルと塩、レモンを合わせれば、足りない脂を油で補えて洋風の一皿に。そして「ステーキ」——表面を強火でさっと焼き、中はレアに仕上げると、香ばしさととろける食感が生まれます。淡白さは「足し算しやすい白いキャンバス」と考えると料理の幅が広がります。そのまま赤身で食べて物足りなかった人ほど、ひと手間で印象がガラリと変わるはずです。

失敗パターン1:解凍を急いで水っぽくなる

よくある失敗が、冷凍ビンチョウマグロを常温やぬるま湯で急いで解凍してしまうことです。急激に解凍すると細胞が壊れてドリップ(赤い汁)が大量に出て、旨味が流れ出し身が水っぽくパサつきます。原因は温度変化の急さ。対策は、冷蔵庫でゆっくり半解凍にすること。食べる数時間前に冷蔵室へ移し、中心が少し凍っている状態で切ると、ドリップが出にくく食感も保てます。急ぐ場合は塩水(海水程度の濃度)に短時間つける「立て塩解凍」が有効で、身の締まりが戻ります。淡白な魚ほど水っぽさが味の悪さに直結するので、解凍は焦らずていねいに。この一手間が「まずい」と「美味しい」の分かれ道になります。

自家製ツナにする|火を入れる選択肢

生で物足りないなら、いっそ火を入れて自家製ツナにするのも賢い手です。ビンチョウマグロはツナ缶の主原料でもあり、加熱調理との相性は折り紙付き。作り方は簡単で、塩をして少し置いた身を、オリーブオイルとローリエ・にんにくと一緒に弱火(70〜80℃を目安)でじっくり火を通すだけ。低温でゆっくり加熱すると、しっとりした自家製ツナになります。淡白で脂が少ないぶん、油を含ませることで物足りなさが解消され、サラダやサンドイッチに大活躍。安く大きな柵が手に入ったら、半分を刺身、半分をツナにと使い分けるのもおすすめです。生食にこだわらず加熱という選択肢を持てば、ビンチョウマグロの活躍の場は一気に広がります。

ビンチョウマグロを選ぶ・保存するときの注意点

最後に、買うときと保存のときの注意点をまとめます。淡白な魚は鮮度や扱いの差が味に出やすいので、ここを押さえると満足度がぐっと上がります。

失敗パターン2:常温放置でヒスタミンのリスク

マグロやカツオなどの赤身魚で気をつけたいのが、常温放置によるヒスタミンの生成です。これらの魚はヒスチジンというアミノ酸を多く含み、常温に長く置くと細菌の働きでヒスタミンが増え、食べると顔の紅潮やじんましんなどアレルギー様の症状を起こすことがあります。ヒスタミンは加熱しても分解されないため、一度生成されると取り除けません。対策はシンプルで、買ったら寄り道せず保冷して持ち帰り、すぐ冷蔵庫へ。刺身を常温で長時間置かないことです。淡白なビンチョウマグロも例外ではありません。鮮度管理は味だけでなく安全のためにも大切で、体調に不安が出た場合は自己判断せず医療機関を受診してください。

⚠️ 注意:マグロの常温放置に気をつけて

赤身魚は常温に置くとヒスタミンが生成され、加熱しても分解されません。購入後は速やかに冷蔵・冷凍し、刺身は食べる直前まで冷やしておきましょう。体調に異変を感じた場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。

買うなら冬場・柵を狙う|鮮度を保つ選び方

ビンチョウマグロを美味しく食べたいなら、買う時期と形態を選びましょう。狙い目は脂がのる冬場(おおむね12〜3月)と、切り身よりも「柵(さく)」での購入です。柵は断面が少なく空気に触れにくいため、切り身より鮮度が保ちやすく、自分の好みの厚さに切れます。選ぶときは前述のとおり、色ではなくツヤ・ドリップの少なさ・身の締まりを見るのが鉄則。脂を楽しみたいなら「ビントロ」表示の脂の回った淡ピンク色を、さっぱり食べたいなら赤身の柵を選びます。安いからと大量に買うより、食べきれる量を新鮮なうちに楽しむのが、淡白な魚を美味しく食べる近道です。

保存のコツ|冷蔵・冷凍の使い分け

保存は鮮度と用途で使い分けます。1〜2日で食べきるなら冷蔵。柵をキッチンペーパーで包んでからラップし、チルド室で保存すると余分な水分を吸って臭みが出にくくなります。それ以上持たせるなら冷凍が確実です。1食分ずつラップで包み、空気を抜いて密閉袋に入れて冷凍庫へ。食べるときは冷蔵庫でゆっくり半解凍にすれば、ドリップを抑えられます。ただし家庭用冷凍庫は業務用ほど急速冷凍できないため、解凍後の生食は風味が落ちやすい点は正直なところ。生で楽しむなら早めに、加熱するなら冷凍ストックを活用、と割り切るのが現実的です。刺身を翌日に持ち越すコツは、こちらの記事も参考になります。

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まとめ|ビンチョウマグロは「まずい」ではなく「淡白」

ビンチョウマグロが「まずい」と言われるのは、味が悪いからではなく、クロマグロのような濃厚な脂を基準にすると淡白に感じられるからです。脂質は100gあたり0.7gと少なく、身が白いのもミオグロビンという色素が少ない種の特性で、鮮度や品質の問題ではありません。むしろ低脂質・高たんぱくで赤身のEPAも多く、さっぱり食べたい人には魅力的な魚です。そして脂がのった「ビントロ」になれば、本マグロのトロに迫る濃厚さで人気を集めます。淡白さは欠点ではなく、活かし方次第の個性なのです。

  • 淡白な理由は「脂質の少なさ」「ミオグロビンが少なく白い身」「安くて期待されない」の3つ
  • 旬は冬〜春先。脂ののる時期の個体を選べば味は大きく変わる
  • マグロは濃厚(クロ・ミナミ)→中間(メバチ・キハダ)→淡白(ビンチョウ)の並び
  • 身の色の濃さと味の良し悪しは無関係。鮮度はツヤ・ドリップ・締まりで見る
  • 「ビントロ」は脂がのった別物で、コスパの良い人気ネタ
  • 漬け・カルパッチョ・ステーキ・自家製ツナで淡白さを補える
  • 常温放置はヒスタミンのリスク。買ったらすぐ冷やし、不安な症状は医療機関へ

まずは次にスーパーへ行ったとき、安く並んだビンチョウマグロやビントロの色とツヤを見比べてみてください。冬場の脂ののった柵を選んで漬けにひと晩——それだけで「まずい」という印象は、きっと「これはこれで美味しい」に変わるはずです。淡白さを楽しむ視点を手に入れれば、毎日の食卓で頼れるコスパ食材がひとつ増えます。

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この記事を書いた人

魚の種類・生態・食べ方を日々研究している魚好き。スーパーで見かける身近な魚から、釣り人にしか馴染みのない魚まで幅広くカバー。「この魚ってどう食べるの?」という疑問に答える、魚の図鑑のようなメディアを目指しています。

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