黒ムツとノドグロは別の魚|分類・味・値段の違いを7項目で徹底比較

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スーパーの鮮魚コーナーで「むつ」と名前のついた魚を見かけて、「黒ムツとノドグロって同じ魚?」と迷ったことはありませんか。どちらも名前に「ムツ」が入っていて、口の中が黒く、脂がたっぷり。似ている点が多いので混同されやすいのですが、実はこの2匹、分類学的にはまったく別の魚です。

この記事では、黒ムツ(クロムツ)とノドグロ(アカムツ)の違いを分類・見た目・旬・産地・味・栄養・値段の7項目で比較し、「結局どっちがどっち?」というモヤモヤをスッキリ解消します。読み終えるころには、魚屋さんで迷わず選べるようになりますよ。

📌 この記事でわかること

・黒ムツとノドグロが別の魚である理由(科レベルで異なる分類)
・体色・牙・サイズなど見た目の決定的な違い
・旬の時期・産地・味わい・栄養成分の比較
・スーパーや通販で失敗しない選び方と調理のコツ

目次

黒ムツとノドグロは「ムツ違い」の別種|名前が似ている理由

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「ムツ」は「脂っこい」を意味する古い言葉

「ムツ」という名前は、東北地方の方言で「脂っこい」を意味する「むつっこい」「むつこい」が語源とされています。つまり「ムツ」は特定の魚を指す名前ではなく、脂がたっぷり乗った魚につけられる”形容詞的な名前”だったわけです。

だから黒い体で脂が多い魚は「クロムツ」、赤い体で脂が多い魚は「アカムツ」と呼ばれるようになりました。名前の成り立ちを知ると、この2匹が科レベルで別物であることにも納得がいきます。

ちなみに「ムツ」と名のつく魚は本ムツ(ムツ)、クロムツ、アカムツ以外にもシロムツなどがいて、いずれも脂の多さが共通しています。名前だけで仲間と思い込むと混乱するので、「脂っこい魚=ムツ」と覚えておくと整理しやすいです。

クロムツはムツ科、ノドグロはホタルジャコ科

分類上の違いは明確です。クロムツはスズキ目ムツ科ムツ属、一方のアカムツ(ノドグロ)はスズキ目ホタルジャコ科アカムツ属。スズキ目という大きなグループでは同じですが、科のレベルで枝分かれしています。

イメージとしては、犬と猫がどちらも哺乳類であるのと似ています。上の分類は一緒でも、身体の構造や生態は別物です。クロムツには鋭い犬歯が両顎に1列並びますが、アカムツには犬歯がありません。歯の構造ひとつ取っても、まったく違う進化をたどった魚だとわかります。

魚屋さんで「ムツ」と表示されていたら、それがムツ科の魚なのかホタルジャコ科の魚なのかを体色や歯で確認するクセをつけると、買い間違いを防げます。

口の中が黒いのはどちらも同じ|「のどぐろ」は本来アカムツだけの呼び名

ノドグロという名前は「喉が黒い」ことに由来しますが、実はクロムツも口腔内が黒いです。じゃあどちらもノドグロなのかというと、一般的に「ノドグロ」はアカムツだけを指します。

なぜアカムツだけがノドグロと呼ばれるようになったのか。これは主に日本海側の漁師が、赤い体で口の中が黒い魚を「ノドグロ」と呼んで区別したのが始まりとされています。テニス選手の錦織圭さんが「ノドグロが食べたい」と発言して全国的に知名度が上がったのも、アカムツ=ノドグロの定着を後押ししました。

ただし地域によってはクロムツを「ノドグロ」と呼ぶケースもゼロではありません。通販サイトで購入するときは、標準和名(クロムツ or アカムツ)を確認すると確実です。

Q. 黒ムツとノドグロは同じ「ムツ」の仲間?
A. 名前に「ムツ」がつくのは「脂っこい魚」という共通点があるだけで、分類上は別の科に属する別種です。クロムツはムツ科、アカムツ(ノドグロ)はホタルジャコ科に分類されます。

見た目で一発|黒ムツとノドグロの外見の違い3つ

体の色が決定的に違う|黒紫色 vs 赤色

もっともわかりやすい違いは体色です。クロムツは全体が黒紫色〜黒色で、深海魚らしい暗い色合いをしています。一方アカムツは名前のとおり赤色で、鮮魚売り場では明るい赤が目を引きます。

この色の違いは生息環境とも関係しています。クロムツは水深200〜500mの深海に棲むため、光が届かない環境に適応した暗い体色になっています。アカムツも深場の魚ですが、赤い色素を持つことで深海では目立ちにくくなっています(深海では赤色の光が吸収されるため、赤い体は実質「見えない」状態になる)。

スーパーで丸のまま並んでいれば、体色だけで判断できます。切り身の状態だと見分けにくくなるので、ラベルの標準和名を確認しましょう。

牙があるかないかで一瞬で見分けられる

クロムツの口を開けると、両顎の側面に鋭い犬歯がずらりと1列に並んでいます。これは小魚やイカなどの獲物を逃がさないための構造で、見た目のインパクトも大きいです。釣り人の間では「クロムツの歯に注意」と言われるほどで、素手で口に触れると怪我をすることもあります。

一方、アカムツには犬歯がありません。口の構造がまったく違うので、丸魚の状態で口を開ければ一瞬で見分けがつきます。

ただしスーパーでいきなり魚の口をこじ開けるわけにはいかないので、実際の買い物では体色→サイズ→ラベルの順で確認するのが現実的です。釣りで上がった場合は歯の有無が最も確実な判別ポイントになります。

比較項目 クロムツ(黒ムツ) アカムツ(ノドグロ)
分類 ムツ科ムツ属 ホタルジャコ科アカムツ属
体色 黒紫色〜黒色 赤色
最大体長 約120cm 約40cm
犬歯 あり(鋭い) なし
秋〜冬 9月〜12月(地域差あり)
主な産地 東京都(伊豆諸島)・静岡県 長崎県・島根県・山口県
味の特徴 脂にキレがあり後味すっきり 「白身のトロ」と呼ばれる濃厚な脂

サイズ差は3倍|最大120cm vs 最大40cm

体のサイズも大きく異なります。クロムツは一般的な流通サイズが全長30〜80cmで、大型の個体は120cmに達することもあります。対するアカムツは最大でも40cm前後と、クロムツより一回り以上小さい魚です。

この体格差は料理にも影響します。クロムツは大型の個体から厚みのある切り身が取れるので、煮付けや刺身に向いています。アカムツは小ぶりなぶん、丸ごと1匹で塩焼きにするのが定番です。

鮮魚売り場で40cmを超える黒い魚が「ムツ」と表示されていたら、まずクロムツかムツ(本ムツ)のどちらかです。赤い体色で30cm前後ならアカムツ(ノドグロ)と判断してほぼ間違いありません。

旬の時期と産地が対照的|太平洋 vs 日本海

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クロムツの旬は秋〜冬、太平洋側で多く水揚げされる

クロムツの旬は秋から冬にかけてです。この時期は産卵前に体に脂を蓄えるため、身の脂乗りが最高潮になります。春になると産卵期(4〜5月)を迎えて脂がやや落ちるので、味のピークは10月〜2月ごろと考えてよいでしょう。

主な産地は東京都(伊豆諸島周辺)や静岡県で、太平洋側の深海域で漁獲されます。北海道南部から本州中部にかけて分布しており、水深200〜500mの深い場所に棲んでいます。

スーパーでは秋〜冬に切り身や丸魚を見かけることが増えます。ただしクロムツは漁獲量がそれほど多くないため、入荷が不安定な場合もあります。見つけたら「今が旬だな」と判断して手に取ってみてください。

ノドグロの旬は地域で変わる|新潟は夏、山陰・九州は秋冬

アカムツ(ノドグロ)の旬は産地によって異なります。新潟では7月〜9月の夏場が旬とされ、石川・島根・長崎など日本海の中〜南部では9月〜12月が旬です。

興味深いのは、アカムツの脂質量は季節よりも個体のサイズに左右されるという研究結果があることです。つまり、大きい個体ほど脂が乗りやすい。旬の時期を外していても、大きめのアカムツを選べば十分に脂を楽しめる可能性があります。

主産地は長崎県・島根県・山口県で、日本海沿岸域が中心です。クロムツが太平洋側、アカムツが日本海側と、産地が見事に分かれているのも覚えやすいポイントです。

🗓 旬カレンダー(さかなのさ調べ)
魚種 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
クロムツ
アカムツ

◎=最旬(もっとも美味しい時期) ○=美味しい △=出回るが旬ではない ※アカムツは新潟産の場合7〜9月が旬

スーパーや通販で出会いやすいのはどっち?

流通量でいうと、アカムツ(ノドグロ)のほうがスーパーや通販で見かける機会は多めです。特に日本海側の地域では鮮魚売り場に並ぶことが珍しくありません。通販サイトでも「のどぐろ」で検索すると多くの商品がヒットします。

クロムツは漁獲量がアカムツほど多くなく、鮮魚店や百貨店の魚売り場で見かけることはあっても、一般的なスーパーでは入荷が限られます。伊豆諸島周辺の産地直送便や、深海魚に強い通販サイトをチェックするのが確実です。

どちらも高級魚なので、お買い得品を見つけたらラッキーと思ってよいでしょう。ただし「ムツ」とだけ表示された切り身がある場合は、本ムツの可能性もあるので注意が必要です(この点は後のセクションで詳しく触れます)。

脂の質がまるで違う|味わいと値段を正直に比較する

クロムツはキレのある脂で後味すっきり

クロムツの脂は、口に含んだ瞬間はしっかりとした旨味を感じますが、飲み込んだ後に口の中がすっきりするのが特徴です。「脂が乗っているのにくどくない」という表現がぴったりで、刺身で食べると白身魚の上品さと脂の甘みが両立した味わいを楽しめます。

この後味のキレの良さは、大型の個体ほど顕著になります。クロムツは大きいほうが美味とされ、市場でも大型個体は高値で取引されます。逆に小さい個体は脂の乗りがやや控えめで、焼き物や煮付けにしたほうが持ち味を活かせます。

刺身で食べるなら、できれば40cm以上の個体を選びたいところです。柵の状態で断面に白い脂の筋が見えるものは、脂乗りが良いサインです。

ノドグロが「白身のトロ」と呼ばれる理由

アカムツ(ノドグロ)は「白身のトロ」という別名を持つほど、脂の濃厚さが際立つ魚です。クロムツが「キレ型」なら、アカムツは「コク型」。口の中でとろけるような脂の甘みが広がり、余韻が長く続きます。

しかも、アカムツは季節による脂質量の変動が比較的小さく、年間を通じて安定した脂乗りを楽しめるとされています。脂の量に影響するのは季節よりも個体のサイズで、大きいアカムツほど脂質の割合が高くなります。

初めてノドグロを食べる人は、まず塩焼きで試すのがおすすめです。皮目をパリッと焼くと皮下脂肪がじゅわっと溶け出し、ノドグロならではの脂の甘みをダイレクトに味わえます。

刺身・焼き・煮付け|調理法で実力が変わる

同じ「脂の多い高級魚」でも、得意な調理法が微妙に異なります。クロムツは刺身と煮付けが双璧です。刺身ではキレのある脂と白身の甘みが活き、煮付けでは脂が煮汁と一体になってコクのある味わいになります。

アカムツは塩焼きが王道。小ぶりな魚体を丸ごと焼くスタイルが産地では定番です。もちろん刺身も絶品ですが、脂が濃厚なので薄造りにして少量ずつ味わうのがコツです。厚く切ると脂のインパクトが強すぎて、繊細な白身の味わいが隠れてしまうことがあります。

煮付けにする場合は、クロムツのほうが身が大きく崩れにくいため扱いやすいです。アカムツは身が柔らかいので、煮すぎると形が崩れやすい点に注意しましょう。

⚠️ ノドグロの刺身で起こりがちな失敗

ノドグロの刺身を厚めに切ると、脂の味だけが前面に出て「くどい」と感じることがあります。これはノドグロの脂質量がほかの白身魚より多いためです。刺身にするなら3mm程度の薄造りにすると、脂と身のバランスがちょうど良くなります。また、常温に長く置くと脂が酸化しやすいので、食べる直前まで冷蔵庫に入れておきましょう。

値段の差はどれくらい?|どちらもキロ1万円超の高級魚

アカムツ(ノドグロ)の通販価格は、冷凍で1kgあたり10,000円程度が相場です。有名産地の大型個体になると1kgあたり20,000円を超えることもあり、文句なしの高級魚です。

クロムツも市場では高値がつく魚で、大型個体はキロあたり数千円〜1万円以上で取引されます。ただしアカムツほどブランド化が進んでいないため、サイズや産地によって価格帯のばらつきが大きいのが現状です。

「高級魚を試してみたいけれど予算は抑えたい」という場合は、クロムツの中〜小型サイズが狙い目です。アカムツに比べると知名度が低いぶん、同じ価格帯でもサイズの大きいものが手に入ることがあります。味のクオリティはどちらも申し分ないので、好みと予算で選んでみてください。

栄養面でも個性が違う|DHA・EPA・タウリンを比べてみた

どちらも脂質が多く不飽和脂肪酸が豊富

クロムツもアカムツも脂質の多い魚なので、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった不飽和脂肪酸を豊富に含んでいます。DHAは脳の機能維持、EPAは血液の流れに関わるとされ、どちらも日常的に摂りたい栄養素です。

脂が多い=体に悪いというイメージを持つ方もいますが、魚の脂に含まれるのは主に不飽和脂肪酸です。牛肉や豚肉の脂(飽和脂肪酸が多い)とは性質が異なります。

脂の多い魚を食べることに抵抗がある方は、焼き物にして余分な脂を落とすのも手です。ただし、せっかくの不飽和脂肪酸を捨ててしまうことにもなるので、刺身や蒸し料理で脂ごといただくのが栄養的にはおすすめです。

クロムツはタウリン・カリウムも含む

クロムツにはDHA・EPAに加えて、タウリンやカリウムも含まれています。タウリンは魚介類に多いアミノ酸の一種で、肝臓の働きをサポートするとされています。カリウムは体内の余分なナトリウムを排出する役割があり、塩分の摂りすぎが気になる方には嬉しい成分です。

脂質の多い魚はビタミンDも豊富な傾向があります。ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける役割があるので、骨ごと食べられる小魚と組み合わせると効率的です。

ただし、栄養成分の具体的な含有量は個体のサイズや季節、漁獲海域によって変動します。「クロムツを食べれば○○が治る」といった効果を保証するものではないので、あくまでバランスの良い食事の一部として取り入れてください。

意外と知られていない|大きいノドグロほど脂質が増えるメカニズム

アカムツ(ノドグロ)の脂質量に関する研究で興味深い結果があります。ノドグロの脂質含有量は季節による変動がそれほど大きくなく、それよりも個体のサイズが脂質量に大きく影響するというものです。つまり、大きなノドグロほど脂質の割合が高くなります。

これはノドグロの成長過程で、体が大きくなるにつれて筋肉内に脂質を蓄えやすくなるためと考えられています。だからこそ市場では大型のノドグロに高値がつくわけです。

このメカニズムを知っておくと、買い物のときに役立ちます。「旬を外した時期のノドグロだから脂が乗っていないかも」と心配するよりも、できるだけ大きめの個体を選ぶほうが脂の満足度は高くなる可能性があります。通販で購入するときはグラム数をしっかり確認しましょう。

📌 栄養面のポイントまとめ

・クロムツ、アカムツともにDHA・EPAが豊富な脂ののった白身魚
・クロムツはタウリン・カリウムも含有
・アカムツは個体が大きいほど脂質含有率が高い
・脂ごと食べられる刺身や蒸し料理が栄養を逃さない調理法

買い物で失敗しないための見極めポイント

鮮度チェックは「目」と「腹」を見る

クロムツもアカムツも、鮮度の見分け方は基本的にほかの魚と同じです。まず目を確認してください。鮮度が良い個体は目が透き通っていて、黒目がくっきりしています。鮮度が落ちると目が白く濁ってきます。

次に腹を触ってみましょう。鮮度の良い魚は腹に弾力があり、指で押してもすぐに戻ります。腹がぶよぶよと柔らかい場合は内臓が傷み始めているサインなので、避けたほうが無難です。

切り身の場合は、断面のツヤと色を見ます。白身部分にツヤがあり、ドリップ(赤い汁)がトレイに溜まっていないものが新鮮です。脂の多い魚はドリップが出やすいので、パック詰めの日付もあわせて確認しましょう。

クロムツとムツ(本ムツ)を間違えやすい|側線鱗数がカギ

意外と見落としがちな落とし穴が、クロムツとムツ(本ムツ)の混同です。どちらもムツ科ムツ属で体色も似ており、市場では「ムツ」とだけ表示されていることがあります。

正確に見分けるには側線鱗数(体側面の側線に沿った鱗の数)を数える必要があります。クロムツは側線鱗数が60枚以上、本ムツは53〜57枚程度です。ただし、これを店頭で数えるのは現実的ではありません。

実用的な見分け方としては、体色がやや手がかりになります。クロムツのほうが本ムツよりも黒っぽい傾向がありますが、個体差があるため確実ではありません。気になる場合は店員さんに「クロムツですか、本ムツですか?」と聞くのが一番確実です。味の傾向はどちらも脂が乗っておいしいので、料理の仕上がりに大きな差は出にくいです。

冷凍品を買うときに確認したい3つのこと

通販でクロムツやアカムツの冷凍品を購入する場合、以下の3点をチェックしてください。

1つ目は冷凍方法です。「急速冷凍」と記載されたものは、ゆっくり凍らせたものより細胞の破壊が少なく、解凍後のドリップが抑えられます。

2つ目はグラム数です。特にアカムツは個体が大きいほど脂が乗るため、1尾あたりのグラム数を確認して、できるだけ大きめの個体を選ぶのが満足度を上げるコツです。

3つ目は解凍方法の案内です。脂の多い魚は電子レンジ解凍だとムラが出やすく、脂が溶け出してしまうことがあります。冷蔵庫で半日〜1日かけてゆっくり解凍するのがベストです。商品に解凍方法の記載がない場合は、この「冷蔵庫解凍」を基本にしてください。

⚠️ 冷凍魚の解凍で起こりがちな失敗

急いでいるからと電子レンジで解凍すると、表面だけ加熱されて中は凍ったままという「解凍ムラ」が起こりやすいです。特にクロムツやアカムツのように脂が多い魚は、脂の部分だけ先に溶けてドリップとして流出し、旨味ごと失われてしまいます。前日の夜に冷蔵庫へ移しておけば、翌日の夕食にちょうど良い状態で使えます。

おすすめの食べ方と調理のコツ

クロムツは煮付けと刺身が双璧|大型ほど刺身が映える

クロムツのおすすめ調理法は煮付けと刺身です。煮付けは醤油・みりん・砂糖・酒のシンプルな味付けで十分。クロムツの脂が煮汁に溶け出して、こっくりとした深い味わいになります。落し蓋をして中火で10〜15分ほど煮ると、身がふっくら仕上がります。

刺身は40cm以上の大型個体で特に力を発揮します。3〜5mm程度の厚さに切り、わさび醤油でいただくとキレのある脂の甘みを存分に味わえます。薄すぎると脂の旨味が感じにくくなるので、アカムツの薄造りとは逆に、やや厚めに切るのがポイントです。

そのほか、西京漬けや粕漬けにしても脂と味噌・酒粕の相性が良く、ご飯のお供に最適です。焼くときは中火〜弱火でじっくり火を通すと、脂が適度に落ちて皮目がパリッと仕上がります。

ノドグロの王道は塩焼き|皮目パリッ、身はとろっ

アカムツ(ノドグロ)の一番人気は、なんといっても塩焼きです。丸ごと1匹に塩をふり、グリルやオーブンで焼くだけのシンプルな調理法ですが、皮目がパリッと焼けた瞬間に皮下脂肪がじゅわっと溶け出し、身のとろけるような食感と相まって格別の味わいになります。

焼くときのコツは、焼く30分前に塩をふって余分な水分を抜いておくことです。水分が抜けると皮がパリッと焼けやすくなり、身の味も凝縮されます。塩の量は魚の重さの2〜3%が目安です。200gの魚なら4〜6g(小さじ1杯弱)です。

干物も産地では人気の食べ方です。一夜干しにすると水分が飛んで旨味が凝縮され、焼いたときの香ばしさがさらに際立ちます。お土産用の干物は島根県や新潟県のものが有名です。

下処理で気をつけたい3つのポイント

クロムツ・アカムツの下処理で押さえておきたいポイントが3つあります。

1つ目はウロコの処理です。どちらの魚もウロコが細かいので、包丁の背や専用のウロコ取りで丁寧にこそげ取ってください。ウロコが残ると食感が悪くなるだけでなく、味の染み込みにも影響します。

2つ目は内臓の処理です。脂の多い魚は内臓の周りにも脂肪がつきやすく、傷みも早いです。購入後はできるだけ早く内臓を取り除き、腹腔内を流水でしっかり洗いましょう。血合いが残ると臭みの原因になります。

3つ目はクロムツ特有の注意点で、歯に気をつけることです。クロムツの鋭い犬歯は下処理中に手を切る原因になります。頭を落とすときや内臓を取り出すときは、口元に手が触れないように注意してください。軍手をはめて作業すると安全です。

🐟 クロムツ 魚スペックカード
分類スズキ目ムツ科ムツ属
10月〜2月(秋〜冬)
大きさ全長30〜80cm(最大120cm)
生息域北海道南部〜本州中部、水深200〜500m
味の特徴脂にキレがあり後味すっきり、大型ほど美味
おすすめ調理法煮付け・刺身・西京漬け・塩焼き

保存するなら冷蔵?冷凍?|脂の多い魚ならではの注意点

クロムツ・アカムツとも脂質が多いため、保存時の脂の酸化に注意が必要です。冷蔵保存の場合は内臓を取り除き、キッチンペーパーで水気を拭き取ったうえでラップに包み、チルド室(0〜2℃)に入れてください。冷蔵での保存目安は1〜2日です。

すぐに食べない場合は冷凍保存がおすすめです。切り身にして1切れずつラップで包み、さらにフリーザーバッグに入れて空気を抜いてから冷凍します。家庭用冷凍庫(-18℃前後)での保存目安は2〜3週間程度です。長く置くと冷凍焼けを起こし、脂が酸化して風味が落ちます。

解凍は前述のとおり冷蔵庫でゆっくり行うのがベストです。急ぎの場合はフリーザーバッグごと流水に当てて解凍する方法もありますが、ドリップが出やすいので注意してください。

まとめ|黒ムツとノドグロは名前が似ているだけの「別キャラ」

黒ムツ(クロムツ)とノドグロ(アカムツ)は、どちらも名前に「ムツ」がつき、口の中が黒く、脂がたっぷり乗った高級魚です。しかし分類上はまったく別の魚で、見た目・旬・産地・味わい・サイズのすべてに明確な違いがあります。

この記事のポイントを振り返ります。

  • クロムツはムツ科、アカムツ(ノドグロ)はホタルジャコ科。「ムツ」は脂っこい魚の総称で、分類上の仲間ではない
  • 体色はクロムツが黒紫色、アカムツが赤色。牙があるのはクロムツだけ
  • サイズはクロムツが最大120cm、アカムツが最大40cmと3倍の差がある
  • クロムツの旬は秋〜冬で太平洋側が主産地、アカムツの旬は9〜12月(地域差あり)で日本海側が主産地
  • クロムツの脂はキレ型で後味すっきり、アカムツの脂はコク型で「白身のトロ」と呼ばれる
  • アカムツは個体が大きいほど脂質の割合が高い。旬の時期より個体サイズを重視して選ぶと満足度が上がる
  • クロムツのおすすめは煮付け・刺身、アカムツのおすすめは塩焼き・干物

どちらが「上」ということはなく、脂の質や味わいの方向性が異なるので、好みや料理に合わせて使い分けるのが一番です。まずはスーパーの鮮魚コーナーで体色と名前をチェックして、「これはクロムツだな」「こっちはノドグロだな」と見分ける練習をしてみてください。一度違いがわかると、魚売り場を歩くのがぐっと楽しくなりますよ。

※魚の栄養成分や脂質量は個体差・漁獲時期・海域によって変動します。最新の詳細情報は公的機関のデータベースでご確認ください。

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この記事を書いた人

魚の食べ方・さばき方・種類の違いから雑学まで、魚にまつわるすべての疑問に答える図鑑メディアです。スーパーの鮮魚コーナーで「この魚どうやって食べるの?」と迷ったとき、釣った魚を持ち帰って「さばき方がわからない」と困ったとき、お役に立てれば幸いです。運営は株式会社てまひま(名古屋市)。

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